2022年05月05日 06:01 リアルサウンド
二宮和也主演の日曜劇場『マイファミリー』(TBS系)が早くも第2章の幕開けとなる。誘拐された娘・友果(大島美優)を無事救出することに成功した温人(二宮和也)と未知留(多部未華子)だったが、第4話では新たな誘拐事件が発生。友人・三輪(賀来賢人)の娘が誘拐されてしまった。驚きの展開に目が離せない本作について、プロデューサーの飯田和孝氏が取材に応じ、現場でのキャストの様子や、「誘拐」をテーマに選んだ理由を詳細に語ってくれた。
【写真】第5話先行カット7点
■『マイファミリー』のタイトルの意味
――友果さんが帰ってきて一安心したものの、誘拐事件の謎はどんどん深まってきました。
飯田和孝(以下、飯田):友果さん誘拐事件は先週の3話で完結しました。「ホシを野放しにしたことを後悔する」と刑事の葛城(玉木宏)に言われた温人含め、未知留、東堂、三輪に、これからどういうことが起こるのかが見どころかと思います。この誘拐事件がそれぞれの人物に引き起こす波乱や、人間関係のもつれ、犯人は一体誰だったのかというところに注目していただければと思います。当初は「ノンストップファミリーエンターテインメント」と言っていましたが、「ノンストップサスペンスエンターテイメント」に移行する感じですね。なぜ『マイファミリー』というタイトルなのかも明らかになってくるので、そこにも注目していただければと考えています。
――『マイファミリー』というタイトルの意味がはっきり明示されるのですね。
飯田:『マイファミリー』は、家族の再生の物語であると皆さん捉えていらっしゃるかと思います。もちろんそういう要素もあるのですが、これからは三輪の家族、東堂(濱田岳)の奥さん、阿久津(松本幸四郎)の家族、いろいろな家族がこのドラマに関わってきます。いろいろな家族が関わっているという意味もあり、自分の家族は大切だという意味もあります。中盤では「そんなマイファミリーなんだ!?」と驚くような部分も。そこは楽しみにしてもらいたいと思います。
――回を重ねるにつれて、今まで明かされていなかったキャラクターの側面が明らかになっていくと思いますが、意外なアプローチで役に向き合っている役者さんはいらっしゃいましたか?
飯田:基本的に皆さん手練れの方々なので、どう進んでもいいようには演じてくださっていますし、アプローチを大きく変えたりはしていないかと思います。台本ができてくることによって、プロットの時点よりも具体的なシーンが浮かび上がっていますが、それをどう見せていくかはより深く、繊細に計算をするようになっていますね。なので、シーンを撮る上で、我々プロデューサーや監督などのスタッフとキャストが会話する機会は増えています。みんなすごく繊細に、丁寧に演じようとしてくれていて。カメラマンがそこをしっかりと撮影し、ディレクターはしっかりと演出をつける。小道具一つとっても手がかりが隠されていたりするので、スタッフもキャストもみんな繊細さが増している感じはありますね。今はオンエアしたときに世の中の声が届きやすくなっているので、これまで以上に丁寧に、これでもかというぐらい繊細な作業をしているという意識があります。
――飯田さんは嵐のメンバーが出演するドラマに多く携わっているそうですが、今回、ジャニーズから二宮さんに加え、梅木役の那須雄登(美 少年/ジャニーズJr.)さんも出演されています。二宮さんの後輩にあたる那須さんが若手俳優として育っていく現場に立ち会うことで、感じたことがあれば聞かせてください。
飯田:この前の『ドラゴン桜』(TBS系)の高橋海人くんや今回の那須くんと仕事をしてみて思ったのが、みんなが先輩をリスペクトしていて、先輩も模範となるべき背中をしっかり見せている。そこが、本当に素敵なところだと感じました。僕が果たしてそういう先輩になれているかというと、見習わなきゃいけない部分が多いです。那須くんとは芝居の話をしたりもします。その時に、「1話を観たのですが、ここの声のトーンは、もっとこうすればよかったと思いました」というようなことを話してくれるんです。強がることなく、自分がより良くなりたいということを素直に伝えてくるんですよね。自分自身が未熟だと感じたら、そこを隠さない。それがおそらく伸びる理由なんじゃないかと、彼を見ながら思っています。
――二宮さんも現場で先輩としての背中を見せていらっしゃいますか?
飯田:見せているんでしょうね。でも二宮さんが見せるというよりは那須くんがそれを見ようとしています。二宮さんは見せようという感じではないけれど、那須くんはそこから何とか盗もうとしている。実は、那須くんは玉木(宏)さんからも盗もうとしているようです。彼は玉木さんとのシーンが一番多いので、やっぱりそこは「一つでも持って帰ろう」みたいな、そんな姿勢が見てとれましたね。
■なぜ“誘拐”を題材に?
――家族の絆を作品として描くときに、乗り越える題材として多かったのが、病、死別、不貞などでした。あえて誘拐というセンセーショナルな事件を選んだ理由を教えてください。
飯田:病気となると、終わりに向かって進んでいく印象があるじゃないですか。病が進行していく中で家族が結束して、その人の分まで一緒に生きようね……と。終わりが見えている中で、悲しい気持ちに寄り添う感じになると思うんです。今回は、「戻ってくると信じているものを取り戻す」という、ノンストップファミリーエンターテインメントの「エンターテインメント」の部分に注目したいと思いました。取り戻せると信じているからこそ一丸となって前に進める。そのパワーを表現できるのではないかと考えたんです。ハリウッドでもやはり「誘拐」を上手くエンターテインメントにしている作品があるので、描きやすい題材だとは思っています。「誘拐」はフィクションだと感じやすいところもあると思いますし。病気も誘拐も悲しいことに違いはないのですが、本作では「悲しみに共感させよう」というふうにはしたくなかったのです。
――エンターテインメントという点では、スマホゲーム「リビットウォーカー」のカエルがドラマの中のアニメーションで戦ったりしていますね。1~3話ではゲームが事件解決の糸口になりましたが、この先もゲームが絡んでくることはあるのでしょうか?
飯田:終盤にかけて、あると思います。4話で発表された新作も、何らかの形で出てくると思いますよ。やはりエンターテインメントにしたい部分と、分かりやすさの部分でゲームが良かった。主人公の温人をなぜゲーム会社の社長にしたかというと、“温人だからできる解決方法”というのもあるし、誘拐事件とのギャップを作り、そこで視聴者の方がドラマに入りやすくなればいいなという思いも含まれています。
――これまで、親が子を思う気持ちがとても丁寧に描かれてきましたが、製作陣の実体験を盛り込んだ部分があれば聞かせてください。
飯田:作っている人間は、子供や家族がいる人が多いです。実体験でいうと、監督も脚本家も子供が大きいのに未だにベビーカーを持っていて、それで実際に荷物を運んだ経験があったことですね。そのシーンはリアルに反映されています。子供を思ったり、親を思う機会というものは、なかなかなかったりする。日曜劇場を観てくださる方のことを考えたときに、やはり家族に届けたいという思いがあったので、“自分ごと”に捉えていただけるよう繊細でリアルな描写を心がけています。「ファミリーストーリー」は、決して大きな話ではないと思うんです。もちろん誘拐事件は当人にとっては大きなことですが、『DCU』(TBS系)や『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(TBS系)のようなスケール感とは違うと思っています。あくまでも「ファミリー」の話。そこを重点的に描いていきたいなと思いました。
――共感してもらいたい部分は、家族への思い?
飯田:家族への思いや、一つの悲劇を通して心を重ねていく夫婦、家族、友人ですね。こういう事件があると、おのずと心を重ねていくけれど、普段からもっと通じ合おうと思えば、できたはず。それをしない自分たちを省みるきっかけになるかなと思いました。
――日曜劇場を観るお父さんたちが、ハッとするような作品になるかもしれませんね。
飯田:子供が誘拐されるなんてことはフィクションといえ見たくないという部分はあるでしょうから、そこは勝負かなとは思っています。
※高橋海人の「高」は「ハシゴダカ」が正式表記。
(取材・文=Nana Numoto)