浸透してきたテレワーク。通勤からの解放を喜ぶ声もある一方、自宅では仕事がしにくいという声も絶えない。評価がわかれる制度だが今回、キャリコネニュースのアンケートに答えてくれた女性(40代前半)は、テレワークでストレスが激減し、不妊治療からも卒業できたという。ただ、いくつかの面では「やりづらい」と感じていることもあるということで……。この女性に連絡をとって、詳しく話を聞いてみた。(取材・文:昼間たかし)
無駄な残業がなくなって、よく眠れるように…
――「テレワーク」でストレスが激減されたとのことですが、どんな変化がありましたか。
「身支度や通勤にかかる時間がなくなった分、目覚ましを使わず自然に目覚めることができ、満足な睡眠を取れるようになりました。また、職場は終業時間になっても他人の目を気にして帰宅しづらい雰囲気だったんですが、無駄な残業もなくなり家事や自分の時間にも余裕ができました」
――帰りづらい雰囲気とは、どんなものですか?
「広告デザイン業ですので仕事量の波が激しいんです。また、クライアントがブラック寄りな体育会思考のため、入稿日は日付が変わる頃まで残っていることが常でした」
――不妊治療にもいい影響があったとか。
「はい。うちの会社は零細企業で過去に出産、産前産後、育児休暇の前例がないのです。なので周りの反応をとても気にしてしまいました」
「不妊治療は病院へ行く回数が多く、通院日も先生の指示に従わなければなりません。しかし、会社に出社していると、上司の顔色を伺ったり、クライアントからの連絡を気にしたりと、調整しにくいといった問題がありました。しかし、テレワークになって、わりと自分の裁量で仕事を進められるようになりました。それが大きいですね」
――時間の融通がききやすくなったんですね。
「ええ、チャットワークで上司に連絡するだけで仕事を抜けて通院できるようになりました。それに、クライアントから携帯に電話がかかってきても都合の悪い時は留守電にして後でかけ直す……など出勤していた時に比べて自由度が増しました。今思えば、これまで周りに気を遣いすぎていたのかも……とも思っています」
――仕事が少ないとき、「仕事をしているフリ」をしなくていいですね。
「テレワークだと空き時間に家事もできますし、定時前でも”もうやることないから、Netflix観よう”とかもできました」
――増えた分の時間を、どうやって過ごしてますか?
「妊娠するまでは、趣味のランニングをしたりNetflixやアマゾンプライムを観ていました。妊娠してからは出産に向けて、子供の洋服を手作りしたり、出産準備のための買い物などをして過ごしてます」
――逆にテレワークで、ここはよくないという部分もありますか?
「完全テレワークになり、コミュニケーション不足で孤独ですね。週に一回は出勤したいです。それに、コロナ禍で仕事が減っていますので、収入減や最悪仕事を失うことへの不安はあります。住宅ローンもあり主人の収入だけでの生活は厳しいので復職がマストなのですが……」
――広告デザイン業とのことですが、コロナ禍で業績は悪化していているのですか。
「しています。Web媒体の案件は仕事が多いですが、紙媒体はだいぶ落ち込みが激しいです。手渡しするようなツールが必要なくなっているのと、イベント関係が出来ていないためですね。また、DMの制作も減りました」
今回、コロナ禍で強制的に導入されたテレワークだが、「ネットだけで連絡を取り合う」ことに慣れている人はまだまだ少ない。職場で自然発生していたコミュニケーションが減った結果、思うような意思疎通ができなくなっている組織は少なくないだろう。適切なバランスはどこにあるのか……どこの職場でもしばらくは試行錯誤が続きそうだ。