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桂正和40周年展が明日開幕!「タイバニ」の“丸投げ”っぷりを赤裸々に、次回作の構想も

2022年04月26日 21:34  コミックナタリー

コミックナタリー

「40th Anniversary 桂正和 ~キャラクターデザインの世界展~」のトークイベントより。左からよきゅーん、桂正和、伊織もえ。
桂正和の画業40周年を記念した大規模展覧会「40th Anniversary 桂正和 ~キャラクターデザインの世界展~」が、明日4月27日から5月8日まで東京・池袋のサンシャインシティ文化会館ビル3階・展示ホールCで開催される。これに先がけ、本日4月26日に内覧会とトークショーが行われた。

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同展は桂のキャラクターデザインに焦点を当てた初の大規模展覧会。会場は「水色の世界」「黒色の世界」「緑色の世界」「白色の世界」「黄緑とピンク色の世界」で構成されており、色ごとにテーマ分けされている。まず会場の入り口には桂の連載デビュー作品「ウイングマン」より、ウイングマンとアオイの描き下ろしイラストが大きく登場。中に入ると、1962年に福井県に生まれてから、19歳でマンガ家デビュー、60歳を迎えた2022年現在までの活動を振り返る年表が壁面に展示されている。

「水色の世界」では桂が描く“ヒロイン”にフィーチャー。「I”s」や「電影少女」をはじめ、「ウィングマン」「ZETMAN」なども取り上げられ、ヒロインたちの美しさやかわいらしさ、華やかさ、明るさ、儚さ、そして艶やかさを堪能できる。「黒色の世界」では桂の描く“ヒーロー”に着目。数々のイラストとともに、桂の私物だというウィングマンの頭部フィギュアや、「D・N・A2~何処かで失くしたあいつのアイツ~」の葵かりんが持つ銃のレプリカなども登場した。

「緑色の世界」では桂の衣装デザイナーとしての活動を、衣装設定やデザイン画、実際の衣装で紹介。「白色の世界」では桂のキャラクターデザイナーおよびイラストレーターの一面に迫るべく、アニメ・ゲームのキャラクターデザイン、各プロジェクトや著名人とのコラボのために描かれたイラストなどが一堂に会する。

ラストの「黄緑とピンク色の世界」は、同展の中でもっとも広いエリアを使って展開。アニメ「TIGER & BUNNY」シリーズで描かれた多数のイラストや、BANDAI SPIRITSが手がける同シリーズのフィギュアがずらりと並ぶ。なお全エリアの至るところには、桂が同展のために用意したコメントを掲示。「黄緑とピンク色の世界」内のコメントでは、ほぼ“丸投げ”だったというキャラクターデザインの裏側が長文で赤裸々に明かされた。

トークイベントには桂と、桂のファンだという伊織もえとよきゅーんが出席。桂は大勢の観客を前に「40周年と言われてもピンとこない」と率直な思いを述べ、40年間で印象に残っている思い出として「『ウィングマン』の連載が決まったとき、実感がないまま仕事が始まってしまった。だからアシスタントが1人もいなくて、編集も原稿が遅れないように〆切を前倒しで伝えてきたから、最初の第1、2話ぐらいは地獄で。3日間ぐらい徹夜して『ズームイン!!朝!』の音を聞きながら、『もう2度とやりたくない!』と思ってベタを塗っていた記憶があります」と振り返る。

またキャラクターデザインの大変さについて、桂は「クライアントによってやり方が全然違うところ。しっかりイメージを持って依頼される場合は比較的楽なんですが、僕のキャラデザの仕事でおそらく一番有名な……具体的な作品名は言わないですけど、かなり丸投げしてくるわけですよ!(笑) 年齢とか大まかな性格とかをヒントに一から想像していかなきゃいけない」とコメント。伊織から「1体のキャラクターができるのに、どれくらい時間がかかるんですか?」と質問されると、桂は「いいや、言っちゃおう!(笑)」とヤケになり、「『TIGER & BUNNY』の場合は、最初にワイルドタイガーというキャラクターを基軸にしようと考えて半年かかりました。恐ろしいことにリテイクなんかないから、僕がこれだって出したらオッケーになっちゃう。そこが怖いとこなの、あそこの!(笑)」と先ほどまで伏せていた作品名を出して会場の笑いを誘う。キャラクターデザインの段階では良し悪しがわからなかったという桂だが、アニメーションで動いている姿を見てその出来にようやく納得できたと続けた。

さらに「マンガに出会っていなかったら何をしていたか?」という質問に、桂は「なんだろうなあ……僕、マンガも読まないし、そもそもマンガが好きじゃないんです。手塚賞に応募したのは副賞のオーディオが欲しかっただけだから(笑)」とあけすけに回答。さらに「僕は中途半端なマンガ家。1本ドーンとビッグヒットがあるわけじゃない。週刊少年ジャンプ(集英社)というカテゴリの中では満塁ホームランを打ったわけじゃなく、点は入るけど三塁って感じのマンガ家なんです。でも中学の頃から油絵を描いてたから、何かしらの絵描きにはなってたかもしれないですね」と答える。

またトークイベントでは、桂が最近怪談にハマっているという話も。桂は担当編集に怪談マンガを描きたいと提案したが、「呪われたくない」という理由で反対されたことを明かす。これに対し伊織とよきゅーんが怪談マンガを読みたいと強くリクエスト。すると桂が「僕が怪談マンガを描くとしたら連載じゃなく読み切りで、実話をもとにしたい。楳図(かずお)先生みたいな迫力のある絵じゃなく、現実的な画風で激しい演出をせずにマンガにすると思います」と構想を話し、観客からは期待の拍手が送られた。

トークイベント後の囲み取材では、記者陣が今後の活動についてさらに深掘り。怪談マンガ以外にやりたいことを聞かれると、桂は「中途半端になっている『ZETMAN』の続きをやりたいのと、もう一度『ウィングマン』か「電影少女』を描いてみたい」とコメント。「ウィングマン」についてはすでにアイデアがあるそうで、「連載の続きを現代ものにアレンジして描こうかと。リブートというよりは続編になるかと思います」と述べる。

さらに「今後ホームラン(を打つ意欲)は?」と記者から聞かれると、「僕にホームランは打てない」とキッパリ。「『ドラゴンボール』の鳥山(明)さんとか、『ONE PIECE』とか『鬼滅の刃』が場外ホームラン。僕からはもう出てこないと思ってます。でも逆に、僕はなんとなくいろんなことをやってきたおかげで40年続けてこれたのかなと。これからもマイペースにやっていきます」と桂なりの意欲を見せる。最後に桂は展示会について「イラストにしてもデザインにしても全力で満足しているものがないので、自分ではこれを見てほしい!というオススメができない。でもコメントを読んで、僕がどう思ってどう形にしてるのかって読み解く作業は面白いかと思います」とアピールした。

■ 「40th Anniversary 桂正和 ~キャラクターデザインの世界展~」
会期:2022年4月27日(水)~5月8日(日)
時間:10:00~18:30(※最終入場は閉館1時間前まで)
会場:東京都 サンシャインシティ 文化会館ビル3階 展示ホールC
主催:「桂正和の世界展」実行委員会
協力:集英社