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上海ロックダウンによる影響拡大 アパレル各社、GW商戦に痛手

2022年04月25日 21:42  Fashionsnap.com

Fashionsnap.com

「ニコアンド(niko and ...)」のECサイトより
  コロナ禍での3度目の大型連休が数日後に控える中、上海でのロックダウンが、日本のアパレル各社の生産・物流面に影を落としている。ロックダウンの影響を受けて納期が遅れれば、適切な時期に店頭に商品が並ばない恐れもある。ゴールデンウィーク商戦は春夏商品が動く時期だけに、アパレル各社にとって販売機会の損失は痛手となりそうだ。

アパレル各社に広がる、ロックダウンの影響
 上海でのロックダウンは3月28日から開始。当初の予定より長期化しており、依然解除の目処が立っていない状況だ。「ニコアンド(niko and ...)」を上海で5店舗展開するアダストリアは4月1日以降全店を休業。上海のオフィスもロックダウンにより閉鎖している。再開の目処については「上海市内のルールに則り、営業可能な状態になり次第、順次営業再開の予定」としている。アダストリアの広報担当はロックダウンの影響を「工場面では自社生産、他社分含め稼働が止まっている工場は2~3件程度のため大きな影響はない。物流面では現状では今後、一部の商品が1~2週間遅れると想定している」と話す。こうした状況を受けて、同社では「ロックダウンの解除時期が先になった場合も考慮し、生産地の移管や早めの企画を意識して動いている」(アダストリア広報)。このほか、上海方面への輸送においては、配送トラックの不足や、それに伴う輸送費の急激な値上がりが発生している。同社が上海および近郊都市で生産した商品に関しても、上海市内へ持ち込むトラックの手配が難しい状況が続いているという。
 TSIホールディングスの2022年2月期の決算会見に登壇した下地毅社長は、上海での状況について「ゴールデンウィーク前に荷物が集中するため、分散化させて対応している状況。コンテナで積んでくるような大量の商品に関して言えば、個別に細かくエアーで振り替えて、サイズごとに飛ばしている。また、港を変更するなどの対応を取りながら、順次ショップに入荷している状況。店舗全体としては、物が足りないような見え方にはなっていないと考えている。今現在、大きな混乱状態は起きていない」とコメント。TSIホールディングスのSCM本部と呼ばれる生産部隊が管理している、中国で生産している製品のうち、1~2週間程度の遅れが出ているのものが全体の約7割を占めるという。一部の商品では数ヶ月単位の影響も出ており、他の生産地に振り分けるなどの対応を行っている。
 また、同社では1~2週間の納期遅れを店頭でカバーするオペレーションを推進しているといい、「店頭に入荷しない商材があった際にどういった見せ方をしたら良いのか、MD計画やVMDの見せ方などを検討しながら、現場でうまく工夫をしていく」(TSIホールディングス担当者)。一部の店舗では既に、アウトレットコーナーを設置して販売するなどの対応を取っている店舗もあるという。このほか、一部商品の販売期間を延長するほか、納期が遅れている商品についてはオンラインや店頭での予約販売に切り替えるなど、適宜対応策を講じている。
 また、ロックダウンによる物流・生産の混乱が続く中、ファーストリテイリングは日本国内の店舗への影響について「状況は確認中だが、ロックダウンの地域が限られていることから、それほど大きな影響はないと考えている」とコメントしている。
深刻な状況に陥る繊維商社
 このほか、繊維商社もまたロックダウンにより大きな打撃を受けている。大手繊維商社の関係者によれば、「政府からの通達により稼働が完全に停止している工場が多く、生産ラインスケジュールに大幅な遅延が出ている。製品が上がっても地域の交通が止まっているため港まで持って来れず、輸入できないなどの影響が出ている。また、都市封鎖開始以降にライン投入予定だったものは、すべて縫製できていない状況(4月25日時点)」。生産スケジュールが全体的に後ろ倒しになっているため、遅れを取り戻すには数ヶ月かかる可能性があるという。
 取引企業への影響については「中国生産は全体の6~7割程度。正確な数はわからないが、上海にある取引先だけでも100社程度はあるのではないか」。受託製造を担っているアパレル製品についても納期遅れが発生しており、「正確な数は不明だが所属する部署だけでも約5万着の遅れが生じている」と話す。
 同社が契約している上海の工場の再開の見通しについて「稼働停止している工場がほとんど。政府が稼働停止しているか抜き打ちで確認する場合もあり、政府と交渉しても稼働許可はおりずかなり規制が厳しい状況。いつ再開許可がおりるかも分からず、工員は一度家に戻ると工場に出社できなくなる可能性もあるため、工場に寝泊まりして再開を待つという体制を取る工場もある」とし、依然再開の目処が立っていない状況だという。
 今年も海外渡航が厳しい状況下で、国内の百貨店や商業施設をはじめとした国内消費が活発になる見通しのゴールデンウィーク。かき入れ時のシーズンに十分に商品が店頭に並ばないといった事態も予想される。この深刻な状況をどう乗り切っていくのか。アパレル各社は窮地を打開するための大きな決断を迫られる形になりそうだ。