2022年04月21日 10:01 弁護士ドットコム
アパートやマンションで悩ましいのが騒音トラブル。ある男性は、彼女が隣人からの「壁ドン」に悩まされていると弁護士ドットコムに相談を寄せました。
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半年ほど前から、マンションに住む彼女が自宅で掃除機をかけると、隣から「壁ドン」をされます。それも一度だけではなく、掃除機をかけている間ずっとドンドンとしてくるのです。壁が衝撃で揺れて、壁際の家具が振動するほどです。
彼女はかなり恐怖を感じていて、必ず録音をしながらかけています。精神的な負担にもなっており、病院で診断書をもらうことをも考えています。警察にも相談しましたが、「それだけでは被害届を受け付けない」と言われてしまいました。
相手が何か刑事罰に問われる可能性は難しいのでしょうか。
「壁ドン」によって、一時的な精神的な負担を超えて、PTSDの発症が認められれば、傷害罪が成立する可能性があります。
過去の裁判例で、PTSD(外傷後ストレス障害)も傷害にあたるとして、傷害罪の成立を認めたものがあります。また、最高裁でも、一時的な精神的な苦痛やストレスを感じたという程度に止まらず、医学的な診療基準において求められている特徴的な精神状態が継続して発現したことなどからPTSDの発症が認められたという事案で、傷害にあたると判断しています。
ただ、傷害罪は故意犯(法律に触れると知りながらわざと行われる犯罪)です。隣人が「壁ドン」によってPTSDになると思っていなかった場合は、傷害罪が成立しないとされる可能性もあります。
ですので、相談者の彼女が「『壁ドン』によって精神的な負担があり、PTSDを発症する可能性があるので辞めてほしい」と事前に隣人に申し入れていたのに、隣人が聞き入れずに継続して「壁ドン」を行った結果PTSDになった、といえれば、より傷害罪の成立の可能性が高まると思います。
また、傷害罪が成立する場合は、当然、慰謝料請求も可能です。傷害罪が成立しない場合でも、常軌を逸した「壁ドン」によって、何らかの精神的損害を被ったといえれば、故意または過失により人に損害を与えたとして、慰謝料請求が可能な場合もあると思います。
【取材協力弁護士】
吉田 要介(よしだ・ようすけ)弁護士
千葉県弁護士会所属。日弁連子どもの権利委員会事務局次長、千葉県弁護士会刑事弁護センター委員。法律を「知らないこと」で不利益を被る人を少しでも減らすべく、刑事事件、少年事件、家事事件、一般民事事件等幅広く手がけ、活動している。
事務所名:ときわ綜合法律事務所
事務所URL:http://www.tokiwa-lawoffice.com