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櫻坂46、今年初のシングルがチャート首位獲得 ドラマティックに鳴り響く楽曲群から垣間見える現在のモード

2022年04月16日 10:01  リアルサウンド

リアルサウンド

櫻坂46『五月雨よ』

参照:https://www.oricon.co.jp/rank/js/w/2022-04-18/


 シンフォニックにしてドラマティック。2022年4月18日付のオリコン週間シングルランキングで首位を獲得した櫻坂46の『五月雨よ』の表題曲は、そんな楽曲です。


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 初めて表題曲のセンターを務めるのは山﨑天。欅坂46が櫻坂46に改名した後の2020年初冬、私は彼女にインタビューをする機会がありました。当時、山﨑天は15歳。彼女の聡明さに圧倒されたものです。そして、そんな彼女を同シングルまで表題曲のセンターにせずに、これまで活動してきた櫻坂46というグループのポテンシャルの高さを改めて感じます。


 「五月雨よ」は、山﨑天の歌声で始まりますが、澄んでいながらも聴き手の胸に刺さるようなボーカルに、一瞬で引きこまれました。ほんの8秒程度で。


 サウンドは、ストリングスが響くなか、厚いコーラスでハーモニーを加えています。そして、5分以上に及ぶ長さ。シンフォニックなサウンドは、終盤の振り付けの激しさとあわせて、聴く者に強烈にドラマティックな印象を与えます。作曲はセンチミリメンタルの温詞、編曲は温詞とmiletも手がけるTomoLowによるものです。


 フィルムのような質感のMVでは、メンバーたちが空中を浮遊していきます。映像の舞台となるのは、湖、森、野原など。終盤では、笑顔で歩み寄ってくる姿が現在の櫻坂46のモードを印象づけます。


 シングルの全形態にカップリング曲として収録されているのは「僕のジレンマ」。この楽曲でもストリングスが響き渡り、シンフォニックかつドラマティックである点は「五月雨よ」と共通しています。最後など、まるで交響曲のようなのですから。作編曲はTomoLowと中村泰輔。


 MVでは、卒業する渡邉理佐がメインに映り続けます。森でのダンス、木材による建物、そして広がる湖。その映像は、神話のワンシーンのようです。


 今回は、各形態のカップリング曲も重要です。TYPE-Aの「I’m in」は、ダンスビートを押しだしており、メンバーのシンガロングも爽快です。


 驚いたのはTYPE-Bの「断絶」。アコースティックギターのストロークで始まり、ギターとボーカルが呼応するかのようでスリリングです。作編曲はCHOCOLATE MIX。


 そして、今回の最大の目玉はTYPE-Cの「制服の人魚」でしょう。スクラッチで幕を開ける、ソウルナンバーです。メンバーはラップもしていて、演奏ではブラスセクションが鳴り響きます。櫻坂46によるシティポップ、という感じも。こうした楽曲を歌うにあたり、櫻坂46がうまくグルーヴをつかんでいることにも驚きました。この路線は続けてほしいところです。作編曲は三谷秀甫。


 TYPE-Dの「車間距離」は、デジタルなビートとともに、イントロではシンセサイザーが鳴り響きます。森田ひかるがメインのMVは、船上でのダンスシーンや、現代アートのようなコスチュームをかぶっている人々の映像も非常にスタイリッシュ。そして、トンネルや橋の上を走る櫻坂46のメンバーが笑顔なのもポイントです。


 通常盤の「恋が絶滅する日」は、R&B風味にして、隠し味としてラテンが入っているというトラック。


 さて、2020年の映画『僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46』を見たとき、さまざまな思いを私は抱きました。それから約1年半。シングル『五月雨よ』を聴き、現在の櫻坂46が力強い楽曲群を生みだしていることを素直に祝福したくなりました。(宗像明将)