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高橋一生が明かす、役者としての信念 『インビジブル』柴咲コウとのバディ感に手応えも

2022年04月15日 09:11  リアルサウンド

リアルサウンド

高橋一生『インビジブル』(c)TBS

 高橋一生がTBS連続ドラマ初主演を務める金曜ドラマ『インビジブル』が、4月15日22時よりスタートする。


 本作は、警察すら存在を知らない凶悪犯、通称“クリミナルズ”を捕らえるため、刑事と犯罪コーディネーターの2人が異色のバディを組む犯罪エンターテインメント。主人公となる刑事・志村貴文を高橋が演じ、志村とバディを組む犯罪コーディネーターのキリコを柴咲コウが演じる。


 今回、リアルサウンド映画部では本作で主演を務める高橋にインタビュー。2017年に放送された『おんな城主 直虎』(NHK総合)で大河ドラマ史に残る印象的なシーンを残した柴咲との共演や、自身が掲げている役者としての信念について、話を聞いた。(編集部)


■「真に迫っているんじゃないか」と思えるような流れにしたい


――今作について、初めてお話を聞いたときのお気持ちは?


高橋一生(以下、高橋):自分が今まで映像でやらせていただいたことがないテイストではあったので、そこは新鮮な感覚がありました。


――どのあたりが見どころになりそうですか?


高橋:どうしても今の世の中は「善、悪」と二極化されているように感じられますが、一見そう見えても、実はそうではないというか。「犯罪者が必ずしも悪ですか?」という問いかけにもなっていると思います。志村は警察で正義を執行する人間ですが、「それってギリギリ悪なんじゃないですか?」という部分をはらんでしまっている人格なんです。実はキリコの方がとても真っ当で、むしろ志村がやっていることが悪になったりもするのかもしれない。そういった意味で、2人の会話のやり取りは見どころになるんじゃないかなと思います。それに伴う動きや、アクションにも注目してほしいです。


――一方で、志村には強い正義感もありますよね。


高橋:警察という仕事に関しては、向いている向いていない以前に“できてしまった人間である”というところは意識しています。初めから正義に燃えるタイプではなかったんだろう、と監督やプロデューサーの方とは話をしているんです。志村は意外と体は動いてしまうし、捜査をすれば事件解決に向かってしまう人間だった。けれど、ある事件をきっかけに大きな喪失があって、そこに対して向かっていくときに「正義を使っていかないとやりきれない」という部分で正義を使っている男なんだと思います。


――犯罪コーディネーターという架空のキャラクター設定への印象は?


高橋:僕は、もしかしたら結構真に迫っていることなのかなと思っています。たとえば、表立っている人たちが世界を回しているように見えるけど、実はそうではないんじゃないか、という感覚が僕にはどこかあって。だから、あまり違和感はなかったですし、昨今、多くの人たちが「表向きになっているものとは違うものが動いているのかもしれない」と、考えやすくなっているとは思います。そういう中でこのお話がスタートするので、「虚構だよ」と思いながら観る人もいらっしゃるかもしれませんけれど、「ある意味、これは真に迫っているんじゃないか」と思えるような流れにしたいなとは思っています。


■トレーニングは「原点」に


――今回の現場で、高橋さんにとって欠かせない相棒について聞かせてください。


高橋:志村の相棒は、護身用のマグライトです。すぐに取り出せるよう、腰のベルトに付けています。


――衣装がほぼスーツ1着というのも、志村の人物像を表しているのではないかと感じました。


高橋:最初に衣装合わせをしたときに、「基本的に一番(1着)で」とお願いはしました。“スーツひとつ”というのが、志村の性格をとても表していると思います。


――激しいアクションシーンに備えて、集中的に体力作りも?


高橋:集中しすぎて、最初の衣装合わせからひと月経ったら首周りが2~3センチくらい太くなってしまったので、今は反対に減らしています。


――普段から意識されているトレーニングはありますか?


高橋:しっかりとしたフォームで腕立てやスクワットをするという、原点に戻りました。今は回数ではなく、時間で区切るようにしています。というのも、体格はそんなに変えられないことに気づき始めまして。「ちょっと変わったな」と思えるくらいを常に目指している感じです。


――現場の雰囲気はいかがでしょうか?


高橋:とても楽しい現場です。スタッフの方々がとにかく素晴らしい方たちで、オリジナル脚本だということもあるとは思いますが、“『インビジブル』という作品の撮り方”みたいなものを模索している感じもあります。もちろん、僕らも模索していますし。ただ、それに対してピリピリするようなムードはなく、皆さん粛々と現場に臨んでいらっしゃるので、非常に心強い現場ではあります。


■柴咲コウとのバディ感に手応え


――NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』をはじめ、過去に共演経験のある柴咲さんに対してイメージが変わった点はありますか?


高橋:金髪だ! ということでしょうか。僕のイメージの中でのコウさんは常に黒髪だったので、突然、「コウさんの顔をした違う方が来た!」という感じにはなりました。対して僕は、そんなに代わり映えしない髪型で行ってしまって……、申し訳ないなと思いました。


――(笑)。柴咲さんとのバディ感に手応えは?


高橋:台本が目指している方向性はもちろんあるんですけれど、そこに向かっていくときに、「より観ている人たちにとって明確な見え方をするためにはどうすればいいのか」と、コウさんと現場で話していて、それを、監督やプロデューサーの方に提案させていただいています。自分たちの腑に落ちる形で作品を作っているので、面白くなっているんじゃないかなと思います。


――柴咲さんとだからこそ、それができている?


高橋:コウさんとでないと無理だと思います。長くお仕事させていただいているので、コウさんの言語体系と僕の言語体系の擦り合わせがしやすくなっていると思います。


――柴咲さんから刺激を受けることもありますか?


高橋:目線の動き一つとっても、間一つとっても、そこに生きているというか、そこにちゃんといらっしゃることができる女優さんだと思っています。セリフを吐くときに、何か真に迫ったものが生まれやすい人なのかなとは思います。コウさんとは、会話のキャッチボールのリズムが作りやすいです。


――阿吽の呼吸ですね。


高橋:阿吽の呼吸なのでしょうか……僕が「阿吽の呼吸」と言って、コウさんに「そうでもない」と言われてしまったら結構ショックなので、今は言わないでおきます。


■「本能で動いている」


――志村は動物的な本能で動くタイプだそうですが、高橋さんご自身はどちらかというと本能と理性、どちらで動くタイプだと思われますか?


高橋:理性的にしていますけれど、本能です。あまり理性で動くことはないかもしれません。理性的に見せるのがうまいんです。小狡いので。


――理性的だと思われているというご自覚が?


高橋:なんとなくわかります、皆さんが私をどう思っていらっしゃるか。


――ちなみに、お芝居に関してはいかがですか?


高橋:台本を読むときは理性的だと思います。けれど、現場に入ると全部かなぐり捨ててしまいますね。でないと、あまり感覚的に動けなくなったり、相手の方を見られなくなってしまったりするんです。そうならないようには気をつけていたくて。なので、本能で動いているんだと思います。


――演じる志村は強い信念を持っていますが、高橋さんご自身が役者として抱き続けている信念を教えてください。


高橋:俳優部として、作品の中で膨らませていくことを想像しながらできる限りギリギリのラインでやっていきたいとは思っています。観ている人たちに、「いやぁ、これは今までになかったな」とか「それ気にしなくていいんだ、面白いですね」ということがあればいいなと。「これは必要なんだ」ということを観ている人たちと一緒に構築していかなくてはいけないんだと思うんです。そういうエネルギーをこちらが迷わずに打ち出していくことはとても大事だと思っていて、それが僕の信念なのかもしれないです。


(取材・文=nakamura omame)