メルセデスF1のチーム代表であるトト・ウォルフは、他者からの批判を肯定的な観点で受け入れようとしなかった前FIAレースディレクターのマイケル・マシについて、F1にとってマイナスな存在になったと考えている。
昨年12月にアブダビで行われたF1の2021年シーズン最終戦、マシは決勝レース終盤の運営をしくじり、その後レースディレクターの座を追われた。マシが標準的なセーフティカー規則の適用回避を決断したため、トップを走っていたルイス・ハミルトン(メルセデス)に残り1周でマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が挑むという一騎打ちを許すこととなり、混沌となった戦いを制したフェルスタッペンの手に世界王座が転がり込んだ。
レース終了後、またアブダビの出来事に関してマシの追放やF1のレースコントロール及び手順の改革につながるFIA報告書が公表された後にも、ウォルフはもう二度とマシに関わるつもりも話すつもりもないと明言し続けた。
しかし、『Press Association』のインタビューを受けたウォルフは、アブダビのF1タイトル決定戦前日にマシとランチを共にしたときのことを回想しながら、彼の気質をこっぴどくこき下ろした。
「とても興味深いことがあった。私はレース前日の水曜日に彼とランチを共にしていたのだ」とウォルフは当時を思い起こして語った。
「そのとき私は彼にこう話したのだ。『えらそうに言うつもりはないが、心から伝えたいことがある。あなたは、他者の批判を受け入れて、そこから成長する必要がある。ルイスも毎日そうしているが、あなたはもっとよくそのことを分かっているはずだ』とね」
「私は彼に影響を与えたいなどとは思っていなかったが、外部の意見を単に間違いと決めつけて遮断するべきではない、という正直な気持ちを伝えたかったのだ」
容赦なく酷評を続けるウォルフは、これまでマシの性格や無遠慮なやり方が、F1のパドックにおいて、ドライバーやレースプロモーターといった人たちとの関係をしばしば悪化させてきたと明かした。
「(マシの)F1ドライバーズブリーフィングの進め方について、ドライバーたちの話を聞くと、そのうち何人かへの接し方はほとんど無礼と言うべきものだったとのことだった」
「中東のとあるレースの主催者など、マシがいなくなったと聞き、もうこれでひどいことを言われずにすむのでほっとしたと語っていた」
「彼はどんなフィードバックにも耳を貸そうとしなかった。今日に至っても、なにかを間違えてしまったかもしれないと考えて自分に向き合うことをしていない」
「彼はF1にとってマイナスな存在だった。誰もがアブダビの出来事やレースディレクターに関する話をしていたが、レースディレクターとは人々の会話の対象ではなく、レギュレーションに沿ってレースを確実に運営するために仕事をすべき存在だからだ」
マシへの批判を抑えようとしない一方、ウォルフは就任から1カ月が過ぎた新レースディレクターのニールス・ヴィティヒについては肯定的に評価している。ただし、彼が先週末に行ったあまり重要とは言えない取り組み、たとえばコース上におけるドライバーのアクセサリー着用禁止といった競技規則の確認には疑問を呈している。
「最初の数レースは丁寧かつ堅実な運営がされていた。彼はひとつもミスを犯さなかった」
「しかし、あれ(アクセサリー禁止)はこの段階で持ちだす必要のある論点だろうか? とはいうものの、もしもこれがレースディレクターによる最大のつまらない過ちだとするならば、私はこれを何度でも受け入れよう」