2022年04月14日 10:01 弁護士ドットコム
産経新聞千葉総局に勤める男性記者(63)が4月12日、酒に酔って車を運転したとして、道交法違反(酒酔い運転)の疑いで、千葉県警に現行犯逮捕された。
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報道によると、男性記者は、同日午後0時半ごろ、千葉市内の片側2車線ある国道で乗用車を運転中、軽乗用車と接触する事故を起こした。通報で駆け付けた警察官が男性記者から酒の臭いを感じたとして、呼気検査を実施。基準値以上のアルコールが検出されたという。軽乗用車の運転手にけがはなかったようだ。
逮捕当時、男性記者は勤務中だったといい、「体内にアルコールが入っていた」と容疑を認めているという。産経新聞は同日、自社のニュースサイトで、「事実関係を確認し、厳正に対処します」との広報部のコメントを公表している。
検出された「基準値以上のアルコール」がどの程度かは明らかでないが、男性記者には「酒酔い運転」の疑いがかかっているようだ。「酒気帯び運転」とはどう違うのか。
道路交通法は、「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない」と定めたうえで(65条1項)、飲酒運転に対する罰則を2種類に分けている。1つが「酒気帯び運転」(同法117条の2の2第3号)、もう1つが「酒酔い運転」(同法117条の2第1号)だ。
「酒気帯び運転」とは、(1)血中アルコール濃度が血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム以上、(2)呼気中アルコール濃度が呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上、のいずれかに該当する状態で運転することをいう(道交法施行令44条の3)。
アルコール濃度については、基本的に呼気検査(飲酒検知)でおこなう。酒気帯び運転の成否は、基準値以上かどうかのみで判断される。たとえ検査でアルコールが検知されても、アルコール濃度が基準値未満であれば、酒気帯び運転罪にはならない。
逆に、どれほど「自分は酔ってないから大丈夫だ」ということを証明しても、アルコール濃度が基準値以上であれば、酒気帯び運転罪になりうる。法定刑は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金となっており、決して軽くない。
なお、酒気帯び運転罪については「軽車両を除く」とされているため、軽車両に含まれる自転車での酒気帯び運転は処罰の対象外となるが、自転車での飲酒運転自体は道交法65条1項で禁じていることを忘れてはならない。
一方、「酒酔い運転」については、基準値などは特に定められていない。
「アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態(酒に酔った状態)」(道交法117条の2第1号)で運転すれば、酒酔い運転罪が成立する。
酒に酔った状態かどうかは、一般に、「真っ直ぐ歩けるか」、「ろれつに異常はないか」、「視覚や視点による認知機能は正常か」「手が震えていないか」等の状況から総合的に判断される。
したがって、アルコール濃度がたとえ酒気帯び運転の基準値未満であっても、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で車を運転すれば、酒酔い運転罪になりうる。
たとえば、体質的にアルコールに弱い人なら、酒気帯び運転の基準値に満たない状態でも、「酒に酔った状態」になる可能性はあるだろう。「酒気帯びでない=酒酔いでない」とは限らないのだ。
酒酔い運転の法定刑は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金となっている。酒気帯び運転とは異なり、軽車両も例外ではないため、自転車での酒酔い運転罪は処罰の対象だ。