2022年04月12日 10:01 弁護士ドットコム
北海道旭川市内のすき焼き店で、会計時にお金の持ち合わせが足りなかった男性が3月8日、詐欺の現行犯で逮捕された。
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北海道ニュースUHBなどの報道によれば、男性は知人2名と来店し「俺がおごる」と宣言したものの、支払い時に「お金がない」と話したという。店から請求されたのは3万円超だったが、男性の所持金は千数百円だった。
この事件が報じられると、ネットでは「窃盗ではないの?」「たまたま現金を忘れただけでも詐欺なの?」など疑問の声も上がっていた。今回の事件の詳細は不明だが、たまたま持ち合わせがないことは誰にでも起こり得ることだ。今回、なぜ詐欺罪での逮捕に至ったのか。西口竜司弁護士に聞いた。
——なぜ詐欺罪だったのでしょうか。
初めからお金を払う気がない場合、詐欺罪(刑法第246条1項)になります。注文する行為がだます行為にあたることになります。
今回の事件では、3人分のすき焼きを支払うと言いながら、実際に財布に入った金額が少なすぎることから、入店当初から支払えないことを知りながら注文したと判断されたのではないかと考えられます。
——ネットでは、「持ち合わせがなかったなどの事情を説明して、後から支払えば逮捕に至らなかったのではないか」という疑問の声も上がりました。
今回、逮捕された男性がそのような交渉をしたのかは不明ですが、店が同意すれば、後から支払うことは可能でしょうし、その場合には逮捕には至らないはずです。
おそらく今回の男性は、支払いの意思が明確ではなかったことなど「初めからお金を払う気がない」と判断される事情があって、詐欺罪の現行犯として逮捕されたのではないでしょうか。
——もしお金がないことに気がついて逃げる、いわゆる「食い逃げ」をしてしまった場合には、同じように詐欺罪に問われるのでしょうか。
食事中にお金がないことに気づき逃げたような場合、ややこしいことになります。店員に気づかれずに黙って逃げたような場合、『利益窃盗』といって処罰する規定がないので犯罪が成立しません。
他方、店員に対して、『ちょっとタバコを吸ってくる』などと言って逃げたような場合、詐欺罪は成立しませんが、『うちにお金を取りに帰る』と言ったような場合、店員側に『債務免除の意思表示』(≒払わずに一度帰って良い)が認められますので詐欺罪になります」
【取材協力弁護士】
西口 竜司(にしぐち・りゅうじ)弁護士
1973年9月生まれ大阪府出身。法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士をめざし多方面で活躍中。予備校での講師活動や執筆を通じての未来の法律家の育成や一般の方にわかりやすい法律セミナー等を行っている。SASUKE2015本戦にも参戦した。弁護士YouTuberとしても活動を開始している。
事務所名:神戸マリン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.kobemarin.com/