人生経験を積んでいくうちに、自分なりの答えを見つけることがある。東京都の30代後半の男性(企画・マーケティング・経営・管理職/年収650万円)が、興味深い意見を寄せてくれた。男性は
「『自分は何者にもなれなかった』なんていうボヤキがネット上ではよく言われますが、30代になって実感したのは『別に何者にもならなくて良いし、世の中のほとんどの人は何者かにならなくてもそれなりに生きていける』ということでしょうか」
と語りだした。(文:okei)
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「30代になると良い意味での『諦め』が出てきます」
男性は、20代の頃は「年を取れば何かすごいことができるようになる、というか、人が驚くような専門性や特技がないと生きていけない」と思っていたという。
「若くて様々な職種に未経験としてチャレンジできるゆえに、今の仕事や生活、生き方が本当に自分に合っているのか、ということに関して常に迷いがあった」
とも振り返る。ただ、「30代になると良い意味での『諦め』が出てきます」として、次のように語る。
「特に30代中盤にもなると、今の仕事が向いているか向いていないかについて悩むというより、『今更イチから新しい仕事を覚えるよりも今まで来た道を進んだ方が良い』という気持ちになる。字面にすると無気力に見えますが、これは一方で『20代の頃のような迷いからは解放された』とも言えて、精神的にはずっと楽になったかなと思います」
また男性は、この年代になって周囲を見回したとき、こんな気づきがあったという。
「私自身を含めて周囲を見ていても同年代の友人はみんな仕事に追われ、家庭に追われ、お金もいくらあったって満足できない。かと言って心底苦しんだり自分の人生を悲観していたりもしない。むしろそんな生活の中でも楽しみを見つけて幸せに暮らしている人がほとんどで、特段『何者』でもない普通の人たちであっても、普通に生活して暮らしている」
そのことが、「この歳になってようやく肌感覚として理解できたかなと思います」と男性は綴る。
「好きなことを仕事にしよう」という風潮はちょっと危ない
さらに男性は「あとは、私が学生の頃に特に叫ばれていた『好きなことを仕事にしよう』という世の中の風潮はちょっと危ないな、ということ」と指摘する。
「好きなことを仕事にして、それでお金を稼ごうとすると、だいたいは狭き門を通過しないといけません。なんとか憧れの仕事に就いたあとでも、上には上がいます。『好きだと思っていた分野のことで誰かに負ける』という経験は辛いものがあります」
「それよりも、『得意なことを仕事にする』方がずっと人生が楽になるということも、30代になってわかったことでした。得意なことを仕事にすると、『毎日がすごく楽しい!』という感覚よりも、『特段仕事に苦痛を感じない』という感覚になります」
と実感を語る男性。これまで築いてきたスキルで、現在の仕事がうまく回っているのだろう。この先も見据えて、最後にこうまとめていた。
「若い頃は前者の方が良いと思うかもしれませんが、この年令になって、実はまだまだ社会人人生の先は長いということを現実的に理解してくると、後者の感覚で長く歩き続けていけることが大切だと感じます」