2022年04月08日 17:01 弁護士ドットコム
俳優や歌手として活動するファーストサマーウイカさんが、女性ファンから名誉毀損などで訴えられていた裁判で、東京地裁(髙木勝己裁判官)は4月8日、女性ファンの請求を「いずれも理由がない」として棄却した。判決文から、裁判所の判断を読み解く。
【関連記事:「娘を励ますために性交」小5から続いた性暴力 懲役6年判決の父、法廷での言い分】
判決文によると、この訴訟は、ウイカさんが所属していた音楽グループ「BILLIE IDLE」(2019年12月28日解散)のファンだった女性が、ウイカさんを相手取ったものだ。
グループの事務局には2019年、原告女性が複数の公演で客の荷物を物色したり、足を踏みつけたり、「死ね」などの暴言を吐いたりしていたなどの報告が寄せられていた。
これらを受けて、事務局は同年10月以降、女性をライブなどへの「出入り禁止」とした。
その後、ウイカさんは同年10月24日、自らのインスタグラムに「殺すとか手を出すとか他の方に暴力をふるうなどと脅迫めいた内容を送ってこられる方へ。現場では正式に出禁対応します」などと投稿した(投稿内容は後述)。
裁判の争点は2つだ。
(争点1)この出禁措置にウイカさんが関与していたかどうか。 (争点2)投稿には氏名などの記載はないが、女性への名誉毀損にあたるかどうか。
判決は、(争点1)の出禁について、ウイカさんではなく、運営事務局がおこなったものであるため、ウイカさんを相手取った請求には「理由がない」とした。ただ、この出禁そのものが不法行為にあたるかどうかの判断は示されていない。
(なお、記者が確認した裁判記録によれば、女性側は当初、事務局を構成しているのはある会社の社員であるとして、ウイカさんとは関係のない会社にも損害賠償を求めていた。のちに取下げている)
(争点2)の投稿について、女性側は、ファンの間で誹謗中傷の犯人を女性であるとする噂があることから「出禁対応」「身元も把握しております」「何度も警告しております」などの投稿内容を見たファンは、女性が嫌がらせをした犯人であるとの事実摘示を容易に理解できたと主張していた。
しかし、東京地裁は、ウイカさんにSNSのダイレクトメッセージなどを通じて多くの誹謗中傷が届くようになったことから、それらの発信者に向けて中傷をやめるように警告したものであると認定して、「明示的にも黙示的にも女性が誹謗中傷を行っているとの事実を摘示したものではない」とし、女性の名誉を傷つけるものではないと判断した。
この訴訟は一部メディアで報じられていた。弁護士ドットコムニュースは、ウイカさんの所属事務所に判決を受けてのコメントを求めている。回答があれば追記する。
〈殺すとか手を出すとか他の方に暴力をふるうなどと脅迫めいた内容を送ってこられる方へ。現場では正式に出禁対応します。これ以上悪質な場合はそれなりの対処をさせて頂きます。身元も把握しておりますので何度も警告しておりますが、本当にそろそろおやめになられた方がいいです。おやめください。本当に。よろしくお願いします。〉
〈ご心配をおかけしてすみません! 私のメンタルなどはまったくもって大丈夫です。ご心配頂きありがとうございます。すべてはお客様、そしてメンバーの安全面を危惧している一心でございます。お顔も身元も証拠すべておさえまして、それなりの対応させて頂いております。ただ、現場でこの女性が平気な顔して他の方を騙したり脅したりしていらっしゃるご様子であとわずかな現場がこれ以上荒らされないようにどうか他の方がこれ以上惑わされないように私から苦肉の最終警告をさせて頂きました。失礼いたしました〉