2022年04月08日 10:01 弁護士ドットコム
ウクライナ侵攻を続けるロシアに対し、日本政府は4月5日、ぜいたく品の輸出を禁止する経済制裁を発動した。ぜいたく品は600万円超の高級車や、60万円超のバイクのほか、ノートパソコン、ダイビング用機器、香水や化粧品など19品目で、酒類も含まれる。最近は海外で日本酒がブームだが、ロシアでは日本産のどんなお酒が好まれているのだろうか。
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4月5日に発動した経済制裁では4万円超の酒類も対象になる。財務省貿易統計によると、2021年の日本産酒類の輸出金額は前年比61.4%増の約1147億円で初めて1000億円を突破した。また10年連続で過去最高を更新した。
品目別の輸出金額では、トップはウイスキーの約461億円で、清酒(日本酒)の約401億円と続く。官民挙げて日本酒のプロモーションを進め、海外では日本酒需要が高まっているが、日本産の「ジャパニーズウイスキー」も人気で、2020年にはウイスキーの輸出額が20年ぶりに清酒(日本酒)を超えた。
2021年の国別の酒類輸出金額を見ると、トップは中国の約320億円、2番目は米国の約238億円でロシアは約4.5億円と18番目だ。
ロシア向けにはどんなお酒の輸出額が多いのか。貿易統計を調べてみると、2021年はビールが最も多く約1.7億円。次いでウイスキーが約1.3億円、清酒(日本酒)は約9000万円。2020年の酒類輸出額は約12億円。このうちウイスキーの輸出額が約9.5億円とトップ。ビール(1.9億円)、清酒(7100万円)と続く。2019年もビールとウイスキーの輸出額が大きい。
中でも注目されているのが、日本産の「ジャパニーズウイスキー」だ。ロシアでのウイスキー需要について国税庁の担当者は「ロシアはウオツカのようなアルコール度数の高いお酒を飲むので、ウイスキーも支持されているのではないでしょうか」と話す。
実際、対ロ外交の舞台でもジャパニーズウイスキーは重用されてきた。2019年には河野太郎外相(当時)がラブロフ外相に日本のウイスキー「響」を贈り、同年、茂木敏充外相(当時)もラブロフ氏に日本産ウイスキーを贈った。
時事通信の2022年2月28日の報道によると、ロシア政府要人の資産凍結に関連して、自民党の茂木幹事長は「ラブロフ外相に高い日本のウイスキーをあげることになっていたが、資産凍結になり、当分ウイスキーはいかない状態」と話したという。
ロシアではジャパニーズウイスキーがどのように広がったのだろう。NHK朝の連続テレビ小説「マッサン」のウイスキー考証として監修を務め、国内外のウイスキーに関する多数の著書がある「ウイスキー文化研究所」の土屋守代表に聞いた。
ーージャパニーズウイスキーはどのような特徴があるのでしょうか。
バランスが良く、繊細な味わいで飲みやすく世界的に高く評価されています。日本製という安心感もあるのだと思います。日本のウイスキーが注目され始めたのは海外のコンペティションに出品するようになった2000年代です。2001年、ニッカウヰスキーの「シングルカスク余市10年」がイギリスでベストウイスキーに選ばれ、大きな注目を集めました。ここ10年ほどは欧州を中心にジャパニーズウイスキーの人気がさらに高まっています。
ーーロシアではいつごろから日本のウイスキーが人気なのですか。
ロシアでジャパニーズウイスキーが広がっていると聞いたのは12、13年前ごろです。もともとロシアではウオツカだけではなく、スコッチウイスキーが飲まれてきた歴史があります。2000年代に日本のメーカーがモスクワやサンクトペテルブルクなどでウイスキーフェアを開き、ブランドを売り込んでいきました。ジャパニーズウイスキー関連の工場が開設された極東経由でも広がりました。
ただ、日本酒とは異なりジャパニーズウイスキーは非常に値段が高く、富裕層にしか浸透していません。ラブロフ外相が好んで飲むことは有名で、高官や新興財閥であるオリガルヒにも飲まれています。
また、ジャパニーズウイスキーはオークションで高値がつき、投資価値が高いことで世界から注目されています。ロシアの富裕層にとっては、ジャパニーズウイスキーを飲むことがステイタスになっているのです。
ーー今回の経済制裁によるロシアへの影響はあるでしょうか。
富裕層が飲んでいるお酒なので影響は限定的だと考えますが、ロシアによるウクライナ侵攻で世界のウイスキー市場には影響が出てくるでしょう。ロシアとウクライナは小麦の一大産地です。グレーンウイスキーの原料の大半は小麦に切り替わっているため物流の問題も含めて、ウイスキー産業全体に影響が出るでしょう。
(ライター・国分瑠衣子)