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ウクライナ侵攻、追い込まれたロシア・プーチン大統領がトランプ前アメリカ大統領にすがる日

2022年04月07日 11:30  週刊女性PRIME

週刊女性PRIME

アメリカ、トランプ前大統領(2019年5月の来日時)

 六本木駅からほど近いロシア大使館は、警察の大型輸送車が物々しく車列を成していました。そこから坂を下ったウクライナ大使館は、都会の喧騒が嘘のように佇んでいます。一方、ウクライナの首都キーウと姉妹都市提携を結ぶ、京都市役所の前の献花台には、花を手向ける人が途絶えることはありません。

「まさか全面戦争などありえない」多くの人が半信半疑だったロシアのウクライナ侵攻。しかしそのまさかは2月24日に現実のものとなり、1か月以上が経とうとしています。ロシア軍が撤退した首都キーウ近郊では、一般市民への虐殺が明らかになるなど、まさに悪夢の様相を呈しています。

5月9日のロシア「勝利宣言」で一旦小休止か

 この悪夢はどんな結末を迎えるのでしょうか。旧ソ連が第二次世界大戦でドイツに勝利したことを祝う5月9日のロシアの「戦勝記念日」というものがあります。小野寺五典元防衛大臣は、この日までに、プーチン大統領は目に見える成果を挙げたと国内向けに喧伝できる状況にし、勝利宣言をするだろうと示唆しています。

 戦争が始まった当初は、数日のうちにキーウは陥落すると思われていました。ところがウクライナ軍はヴォロディーミル・ゼレンスキー大統領を中心に予想外の善戦を見せ、プーチン氏は、ウクライナ政府の降伏あるいはゼレンスキー政権の交代という当初目標の、下方修正を余儀なくされました。

 4月6日現在、ロシア軍は首都キーウ周辺を含む北部からほぼ撤退し、東部と南部の制圧に集中すると予想されています。2014年に併合したクリミア半島から親ロシア派武装勢力が根城とする東部ドンバス地方、さらにはロシア国境までを支配下に置き、それを持って「勝利」の根拠とする見方が出ています。

 ロシアは地上兵力の半数以上を投入したものの、一説には死者は早くもソ連のアフガニスタン侵攻の10年間と同規模の、約1万5000人に達したといわれています。また、将軍クラスの指揮官で戦死者が7人出たと報じられました。兵器などの製造も西側諸国からの部品が途絶えることで困難になるはずです。

 制裁による経済危機も深刻化しており、国債のデフォルト(債務不履行)はいずれ避けられないとの見方です。各国の輸出規制、輸入規制も今後じわじわとロシアの国内産業を瀕死の状態に追いやるでしょう。

 つまりロシア自体も追い込まれており、「勝利宣言」をしながらも停戦することで、これらの損害に歯止めをかけるつもりなのかもしれません。しかし一般市民の殺戮など“蛮行”があったと報道され、真偽に関わらず経済制裁が止まることはないでしょう。

 一時的な停戦はあっても、経済的に追い込まれたプーチンロシアが再度牙をむくことはありえますし、東部と南部を“もぎ取られた”ウクライナがこのまま黙っているとも思えません。

火中の栗を拾えるのはトランプ前大統領しかいない?

 もしかしたら、この戦争は停戦と停戦破りを繰り返しながら数年にも及んで行く可能性は多いにあると、私は見ています。どこかで経済制裁で追い込まれたプーチン氏が、一部地域からの兵力撤退などを提示して、トランプ前アメリカ大統領に仲裁を依頼する可能性があります。ロシアとウクライナ、あるいはロシアと西側諸国の仲裁かは状況によります。

 そもそもプーチン氏には、トランプ氏を有利にすべくアメリカ大統領選に介入した疑惑があり、2者は親密という見方があります。また、トランプ氏は世間の目を物ともせず、ウクライナでのプーチン氏の戦略を「天才的な一手」と述べています。そもそもトランプ氏は2019年に緊張の続く北朝鮮を電撃訪問し、金正恩朝鮮労働党委員長と会談するなど、「独裁者とウマが合う」大統領でした。

 ここで述べていることは、あくまで予想されるシナリオであり、決してプーチン氏を「許すべき」という意図ではありません。

 プーチン氏にもメンツがある以上、追い込まれて屈するよりは追い込まれて暴発する恐れがあります。考えたくもありませんが、核兵器のボタンを握っているのです。そんな時に彼の顔を立てて“逃げ道”を作るのに最も適任なのはトランプ氏なのかもしれません。プーチン氏を「権力の座に残しておいてはいけない」と罵倒したバイデン大統領にはもう難しいでしょう。

 1994年、核開発疑惑により北朝鮮とアメリカとの間で「開戦間近」というほどの緊張関係になった際、ジミー・カーター元アメリカ大統領が政府特使として北朝鮮を訪問し、金日成主席と会談し危機が回避された事があります。アメリカ元大統領の肩書は仲裁にこそ生きてくるといえましょう。

 プーチン氏にとっては、アメリカ国内で根強い人気を誇り、自らを賞賛するトランプ氏となら手を結べますし、バイデン氏にとってはロシアに(一時的にでも)逃げ道を作るという“汚れ役”をトランプ氏に押し付けることができ、トランプ氏は次回の大統領選に向け存在感を示すという三方良しが成立します。

 ロシア仲裁でトランプ劇場再びーーとなるのでしょうか。

ウクライナ危機、物価上昇、コロナ第7波、さあ岸田政権はーー

 3月7日、ロシアが公表した非友好国リストで、日本が指定されました。対岸の火事と思いきや、経済制裁に参加する日本は事実上の“交戦状態”に突入したのです。また、3月21日、北方領土問題を含む日露平和条約交渉の中断をロシアに通告されました。

 国民生活では、物価高騰が心配されています。株式会社辻運輸(川越市)代表取締役の辻晃伸氏は「このままだとガソリン高で運輸業界の倒産が多発するでしょう」と、切迫感を訴えます。不動産投資のリシェスホールディングス株式会社代表取締役の井出博之氏は「建材は無論、内装のあらゆる用品も値上がりしています。これらは物件価格に転嫁せずにはいられず、不動産業界も無傷ではいられません」と警鐘を鳴らしています。

 日本のLNG(液化天然ガス)の輸入量の8%近くは、大手商社が出資する極東ロシアの天然ガス開発プロジェクト『サハリン2』産です。政策研究所の主任研究員の上郷ほたる氏は「この供給を停止されると、クーラーの使用がピークになる真夏に電力が逼迫し、被害が甚大です」と危機感を募らせています。

 そこで、岸田総理はどう動くのでしょうか。外務大臣時代から関係の深いアメリカ民主党は国内のインフレやウクライナ問題をめぐり、窮地に立たされています。コロナ第6波がピークアウトした、と胸を撫で下ろす間もなく、一難去ってまた一難です。参院選の投票日が3か月後に迫り、第7波の兆候とあいまって、綱渡りの日々を送ることになりそうです。