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「彫刻家を父に持つとこうなる」色鉛筆にあらわれた笑顔のお地蔵様

2022年04月06日 09:01  おたくま経済新聞

おたくま経済新聞

「彫刻家を父に持つとこうなる」色鉛筆にあらわれた笑顔のお地蔵様

 子どもが幼稚園や保育園に入園する際、親がする作業と言えば思い浮かぶのは「持ち物への名前入れ」。用具ひとつひとつにペンで記入をしたり、シールを貼ったり……大変な作業ではありますが、子どものことを思えば苦にはならないものです。


 妻に「娘の色鉛筆に名前を入れるところ、削っておいて」と言われたのは、仏像制作・修復等を行う京仏師の宮本我休さん(@Gakyu_Miyamoto)。「削る」という行為に際して、彫刻家としていてもたってもいられず……色鉛筆に”あるユニークな仕掛け”を施しました。


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 宮本さんが「彫刻家を父に持つとこうなるんだよ」というつぶやきと共に、ツイッターに投稿した動画に映っていたのは、色鉛筆の端に佇むお地蔵様。そう、宮本さんは色鉛筆に、お地蔵様を彫刻したのです。こんなわずかなスペースに彫れてしまうとはびっくり!


 「私の親は役人で、日頃どういった仕事をしているかということを感じることなく育ってきて、大人になって知っておきたかった、という後悔が今もあります。この色鉛筆を通して、子供たちには父親の仕事を身近に感じてもらいたいですね」


 色鉛筆に彫刻した理由を、このように語った宮本さん。家庭環境によっては「親が何の仕事をしているのか」を子どもが理解していない場合もあるでしょう。たしかにこのお地蔵様を見れば「お父さんは木を彫る仕事をしている」という事が一目でわかります。


 実は宮本さんが色鉛筆に彫像したのは今回が2回目。4年前、長男さんが保育園に入園した際には、色鉛筆に「大黒様」を彫っています。長男さんはとても喜んだそうですが、間もなく誤って削ってしまったのだそう。


 長男さんから「もう一度彫って欲しい」とせがまれましたが、当時は忙しくて叶えてあげられなかった、という経緯もあり、今回娘さんの色鉛筆で再挑戦。長男さんの時とは違う種類の仏様をと考え、子どもの守り仏であるお地蔵様をモチーフにしたとのことです。


 特にこだわったのは「お地蔵様の表情」。にっこり笑顔で彫るよう心掛けたというお地蔵様の顔は、子どもの健やかな成長を見守るかのような優しい笑顔です。微笑む小さなお地蔵様を見ていると、とても穏やかな気持ちになりますね。色鉛筆の赤色を利用した、かわいい前掛けもポイントです。


 お地蔵様が宿る色鉛筆を見た娘さんは、「これかみたま?(神様)」と聞いた後、満面の笑顔で大喜び。すぐに「使っていい?」と言って、赤の色鉛筆を手にしたそう。喜ぶ娘さんの姿に、宮本さんもきっと胸を熱くしたことでしょう。


 ちなみに、長男さんには「彫ってあげる」ことよりも「自分で彫ること」を教えている模様。その様子は宮本さんも長男さんも真剣そのもの。球体を彫る工程をとても楽しんでいたそうです。


 なお、宮本さんの仏師としての活動は、ツイッターの他、YouTubeやInstagram、ホームページでも発信中です。学生時代に服飾技術を学んだ経験を活かし、独自の衣紋表現を追求する宮本さんの仏像、仏具もぜひご覧ください。



<記事化協力>
京仏師 宮本我休さん(Twitter:@Gakyu_Miyamoto / Instagram:gakyu01)


(山口弘剛)