西日本のバス会社に勤務する40代前半の運転士男性から、悲痛な叫びがキャリコネニュース編集部に届いた。男性によると、一日の拘束時間が平均14時間に及ぶのに、基本的に「運転している時間だけ」しか報酬が支払われないため、手取りは平均23日出勤で毎月17万円代しかないという。公共交通機関とは思えないような状況だが、実態はどうなっているのだろうか? この男性に事情を詳しく聞いた。(取材・文:昼間たかし)
「田舎のバス会社ですが典型的なブラック企業です」
――どんな会社にお勤めなのですか?
「田舎のバス会社ですが典型的なブラック企業です。出庫準備(※オイルやエンジンやベルト、タイヤの空気圧、AGSや運賃箱、その他灯火類)を20分ですることになっているのですが、運行不能だと乗り換えになる場合もありますし、点検がそんな短時間で出来る訳も無く、皆サービス早出で1時間ぐらい早く出勤しています。平均14時間拘束ですが、賃金は運転している実ハンドル時間の分しか出ません。朝5時台に目覚めて、帰宅は大体20時過ぎ。風呂と食事を済ませて余暇時間も無く翌日の勤務の為に寝るという生活の繰り返しです」
「土日祝日GW盆正月に出勤しても手当ても無く、休日ダイヤの間引き運行で逆に賃金が減るのが現実です。これでは若い人が来る筈は無いですし、私自身いつまでもここに居てはダメだと思ってます。こんな会社が野放しにされてるのが不思議で堪らない反面、国は動かないって諦めもあります」
――現在の所属規模と、主に担当している業務はどのようなものでしょうか?
「私の所属している営業所はタクシー、高速バス、観光バス、路線バスのドライバーで30人弱です。自分の担当は高速・観光・路線バスです。一般的にはそれぞれ専属で仕事しているイメージを持たれますが、色々な仕事を兼務させている会社はけっこうあるようです」
――勤務時間も長いですがシフトはどのように組まれていますか?
「現在は4勤から5勤で1休か連休です。以前は13連勤で休みは1日だけ。月に3日程度しか休めないこともありました」
――そんな過重労働が状態化していると事故の危険も増えそうです。
「私はありませんが、通勤時間の掛かる運転手が居眠りなどが原因で大事故を起こしたこともあります」
――ご自身で危険を感じたこともあるのでは?
「あります。高熱で高速に乗務させられ咳込んで危険を感じた事もありました」
――毎日出勤できているほうが奇跡のように感じます。
「私は職場近くに住んでいるのですが、それでも1度遅刻したことがあります。ペナルティと罰金が酷いので二度目はありませんが」
――罰金が設定されているのですか?
「遅刻・早発・クレームで出勤停止3日を命じられます。日当1万円として3万円のマイナスですね。加えてボーナスから2万円天引きされるので合計5万円のマイナスです。また有給を使うとボーナス査定の減点対象でボーナスから有給分が引かれます。また、有給を使い過ぎると会議室に呼び出されて、お説教されます。会社は、いかにして運転手の給料を減らすかしか考えていません。そんな生活なので貯金に回せるお金もありません」
――ペナルティは就業規則などで明記されているのでしょうか?
「入社時に雇用契約書などの類いはなかったです」
――会社の経営状況はどうなのでしょうか?
「基本的には自治体からの補助金依存です。これまでは従業員からの搾取でウハウハだったようですが、現在は多少なりコロナの影響を受けて厳しそうです」
――そういう状況で、バスが毎日時刻表通りに来ていることい驚きます。
「バスは他社では考えられないような整備不良だらけです。特に路線バスは酷いです。他社では廃棄しているような車両がほとんどで、シートが粉を吹いてたり虫に食われてたり、床が抜けそうな車両ばかりです。朝エンジンが掛かるかどうか毎日ギャンブルです。冷暖房なんて基本壊れててマトモな車両は数台だけでオイル漏れ、燃料漏れ、ブレーキオイル漏れなども当たり前です。ライトが暗かったり、ガラスが水垢で汚れたままの車両もあり、何度ガラスの交換等を頼んでも動いてくれず、雨の日に事故が起きても不思議じゃないレベルです」
――いま、年齢は40代前半ですがそのような労働環境では健康に不安を感じませんか?
「はい。勤務日は時間を取れるわけでもなく、休日は疲れ果ててゴロゴロしているばかり。健康管理の為にウォーキングやジムにいく時間など取れませんから……。朝の点呼で体調不良を訴えても変更されず、後日病院に行くと即入院手術になったこともありました」
――バス会社であれば労働組合が組織されていると思うのですが?
「まったく機能していない御用組合です。パワハラや職場内の虐めなどにもまったく対応してくれません」
――なぜ、そんな会社に就職されたのでしょうか。
「以前は大型トラックの長距離ドライバーだったのですが帰郷を機に就職しました。会社の名前だけは一人前なので親は安心してます」
男性は「(地元には)他にバス会社が無いので、今は我慢するしかありません」と嘆息していた。地域インフラの基礎となる公共交通機関だけに、そこで働く人たちの労働環境が少しでもよくなるといいのだが……。
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