トップへ

吉野家「お客様相談室」対応めぐり謝罪 「室長は実在します」誹謗中傷を懸念

2022年03月31日 10:31  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

牛丼チェーン「吉野家」の客対応をめぐり、先日からネット上で問題視する声があがっている。同社の「お客様相談室」とのやりとりが晒され、「まとめサイト」まで乱立している状態だ。批判をどう受け止めているのか、吉野家に聞いた。


【関連記事:お通し代「キャベツ1皿」3000円に驚き・・・お店に「説明義務」はないの?】



●コラボキャンペーンで数日前に謝罪

吉野家といえば、漫画『魁!!男塾』とのコラボキャンペーンをめぐり、3月24日に謝罪したばかり。



来店数に応じてもらえる「名前入りオリジナル丼」の「実名に限る」ルールが告知不十分なまま設定されたため、批判があがったことから、吉野家は条件付きで実名入りへの変更を発表、謝罪した。



実名限定のルールを問い合わせた人に対して、お客様相談室の室長が「法務局にご相談されてはいかがでしょうか」などと対応したことが判明し、ネット上で炎上していた。



●割引を受けられなかったとする読者

ある男性読者も、吉野家の対応に疑問があるとして、自らの体験を編集部に語った。



男性は2021年6月、牛丼と味噌汁をテイクアウトした。その際、持っていた「汁物が50円引きになるクーポン」が、別の割引やキャンペーンと併用できないとして、店舗で使えなかったという。



当時は、牛丼の「テイクアウト10%オフキャンペーン」が実施中だった。男性は牛丼を10%引きで、味噌汁を定額で買った。



男性によると、クーポンには「他の割引との併用はできない」という旨の説明は書かれてなかったという。また、キャンペーンのほうにも併用に関する説明はない。



購入時にクーポンは回収されたため、現物はないが、男性は「記載がないのに、割引の併用ができなかったのはおかしい」として、吉野家に問い合わせて記載内容の改善をもとめた。



●消費者センターへの相談をすすめられる

すると、同社のお客様相談室からは「値引き商品とのご利用ができない旨の記載がある、ないにかかわらず、クーポンは利用できない」という回答を受け取った。回答を不十分と考えた男性は「消費者センターに不当表示を申し立てる」などと応じた。



これ以降のやりとりには、室長が対応し、



〈見解は既にご回答はおりますので、あらためてお電話をすることはいたしませんし、お電話をいただいても同じでございます。疑念があれば、◯◯様お申し出の通り、消費者センターにご相談されてるのがよろしいかと存じます〉(ママ・個人名は伏せた)



などのメールのやりとりがあったという。



●「不快な思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした」

弁護士ドットコムニュースは、男性とのやりとりを吉野家に問い合わせたところ、以下のような回答があった。



まず、紙のレシートクーポン「汁物メニュー限定50円引」には「他の値引きサービスとの併用不可」という記載があることを確認したという。そうであれば、男性の主張が誤りであることになるが、「異なるクーポンを店舗で提示され、ご意見を頂戴した可能性も否定できない」としている。



「テイクアウト10%引きキャンペーン」のポスターやウェブサイトには「他の値引きサービスとの併用不可」という記載はしていなかったという。



「当該時期に株主優待券など一部キャンペーン併用可能な金券も存在することから、そのような記載をすることでお客様に誤認を与えることを避けるため、キャンペーンとは併用できないクーポン現物にその旨注釈を記載し、対応しました。



店頭ポスターやWEBサイトでの説明が不十分であり、現場における混乱およびお客様への不快な思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした。今後、わかりやすいクーポンの改善に努めてまいります」



●動画音声での暴露までされてしまった

お客様相談室、特に室長の対応をめぐっては、ネーム入り丼の件だけでなく、「高圧的」という指摘がネット上で見受けられる。



室長のものとされる対応事例を紹介する「まとめサイト」まで乱立している状態だ。なかには、室長から「2度と吉野家に来ないでください」と電話で言われたという動画までアップされている。



編集部では、動画が事実か、室長の態度への批判についての受け止めも問い合わせた。



「動画の存在は当社でも確認しております。個別のお客様とのやり取りについてはお相手様のお考えやご事情もあることですので回答は控えさせていただきます。



お客様相談室の対応に関してお客様にご心配をおかけしたことをお詫び申し上げます」(吉野家)



●室長は実在しない?「偽名」「架空の人物説」が…

さて、その手法の是非はさておき、企業の対応を問題視した利用者が、ネット上で問題を「告発」する手法は珍しいものではなくなった。一個人のツイートが、企業の信頼を大きく損なわせることもよくある。



ただ、その矢面に立つ「お客様相談室」で働く人たちの名前が、実名とともにネットでさらされてしまうこともある。無理筋なクレームをつける「カスタマーハラスメント(カスハラ)」も社会問題となった。そこで、接客業などでは誹謗中傷を避けるため、名札をつけない動きもあがっている。



ネット上では、実名での批判を避けるため、吉野家の室長は「架空の人物」なのではないかとする説や、偽名説まで浮上した。



そこで、この室長が吉野家で実在の人物であるか尋ねた。



吉野家は「これまで社内の社員情報や人事情報を開示することはしておりませんが、一部SNS上で言及されていることもあり、本質問についてのみは例外的に回答いたしました」としたうえで、「お客様相談室の室長を務めております」と答えた。



吉野家ではこれ以上の炎上を懸念している。当事者でない者が、ネット上で執拗に個人攻撃を加える場合、不法行為になりうる場合もあるので注意だ。