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ラーメンに500本の爪楊枝、迷惑客の法的責任はどうなる? ラーメン好き弁護士に聞く

2022年03月30日 10:41  弁護士ドットコム

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茨城県水戸市内にある中華そば「いっけんめ」が、トッピングの追加注文を断られた客がラーメンに爪楊枝などをぶちまけたとする写真をツイッターに投稿し、話題となっている。


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投稿によると、店のルールとしてトッピングの追加注文は断っているという。この客が注文した際、事前に「トッピングはございませんか?」等の確認をしていたにもかかわらず、追加注文があったため断ったところ、今回のトラブルとなったようだ。



店は「今回の人はわざと後から50円のトッピングを2分おきくらいに数回注文するんです」ともツイートしており、この客は過去の来店時もトッピングの追加注文を繰り返してた要注意人物だったようだ。他の客への対応に支障が出ないようにするため、トッピング追加注文不可のルールを作ったとしている。



報道などによると、この客はテーブルにあった爪楊枝500本のほか、コショウなどの調味料もラーメンにぶちまけたうえ、店内のイスを倒すなど大きな音をたてて店を出て行ったという。店側はこの客を外で呼び止め、2度と店に来ないよう伝えたとツイートしている。



店のテーブルに置いてある爪楊枝や調味料などは、食事をする客に無償で提供されているものだ。客はお好みで利用することが許されているとはいえ、ラーメンに大量にぶちまけるような利用方法が許容されているとは到底考えられない。



今回のような行為におよんだ場合、どのような法的責任が発生するのだろうか。「昼食の大半はラーメン」という西山良紀弁護士に聞いた。



●軽犯罪法違反や器物損壊罪に該当し得る

——店のテーブルに置いてある爪楊枝や調味料などを注文したラーメンにぶちまけた場合、どのような法的責任を負う可能性がありますか。



まず、民事的な責任について説明します。



店は、客に対して、味にアクセントを加えたり、食後の歯の手入れなど通常想定される用途・用法に従って使用してもらうために爪楊枝や調味料を提供しているのであり、本来の用法・用途と異なる使用は許容していないものと思います。



爪楊枝や調味料を嫌がらせ目的でラーメンにぶちまける行為は、明らかに本来の用法・用途から外れるものであり、違法な行為に該当し、損害賠償責任が発生することになります。



——刑事的な責任についてはどうでしょうか。



爪楊枝や調味料などを注文したラーメンにぶちまける行為に及んだ客は、軽犯罪法1条31号で定める「他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者」に該当し、拘留(1日以上30日未満の期間、刑事施設に拘置される刑罰)または科料(1000円以上1万円未満の金額を国庫に納付させる刑罰)に処せられる可能性があります。



また、ラーメンにぶちまけられた大量の爪楊枝は、もはや本来の用法に従った使用は困難だと思われますので、器物損壊罪(3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料)に該当する可能性があります。



形式的にはこれら犯罪に該当する可能性があると思いますが、何度も同じことを繰り返しているなどの特別な事情がなければ、実際には警察が事件としてなかなか取り扱ってくれないのではないでしょうか。



——店内のイスを倒すなど大きな音をたてて店を出て行く行為についてはどうでしょうか。



店内のイスを倒すなど大きな音をたてて店を出て行った行為が、他のお客さんを困らせたり、不快に感じさせたりする程度のものであれば、軽犯罪法1条5号で定める「著しく粗野・乱暴な言動で迷惑をかけた者」に該当し、拘留または科料に処せられる可能性があります。



●爪楊枝や調味料をぶちまける行為は「ラーメンに対する冒涜」

——ラーメン店で「トッピング追加注文不可」などのルールを設けることは問題ないでしょうか。また、ラーメン店として他にとりうる対策などはあるのでしょうか。



どのような内容の契約を締結するのかは当事者の自由であり、店側が客に対して契約条件として「トッピング追加注文不可のルール」を提示することに問題はありません。また、店側の条件が納得できないのであれば、客にも契約を締結しない自由があります。



また、店舗に誰を立ち入らせるのかは、店の判断に委ねられています。店の意思に反して店舗に侵入しようとする行為は建造物侵入罪になりうるので、店側が問題のある客に対して「2度と店に来ないように」と伝えることも、警告として効果があると思います。



——飲食店が客に対して「2度と店に来ないように」と伝えるのはとても勇気のいることだと思います。



手間と時間をかけて作ったラーメンに大量の爪楊枝や調味料などをぶちまける行為は、ラーメンに対する冒涜であり許せません。



毅然とした態度をとったラーメン店主の方の行為はとても素晴らしいと思います。このような毅然とした態度をとれる店主のいるラーメン屋であれば、他の客もこれから安心してラーメンを食べられるのではないでしょうか。




【取材協力弁護士】
西山 良紀(にしやま・よしのり)弁護士
兵庫県弁護士会所属。
離婚・男女問題、遺産相続、労働問題、債権回収などを多く扱う。
昼食の大半はラーメン。鶏がら・豚骨から出汁をとってラーメンを自作することもある。独立する際に、前所属事務所からもらった餞別は寸胴鍋とオリジナルラーメン鉢。
事務所名:リライト神戸法律事務所
事務所URL:http://relight-kobe.jp/