2022年03月29日 19:01 弁護士ドットコム
過酷な働き方で知られる学校の先生。たとえば法律上、公立学校では残業代が支給されず、長時間労働の温床になっていることが指摘されている。
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実は私立でも、本来適用できないはずなのに、こうした「公立ルール」を採用している学校が珍しくないという。
関東のある私立高校は今年、教員に36協定を超えた違法な残業をさせたとして、労働基準監督署から是正勧告を受けた。
申告していたのは有期雇用のフルタイム教員Aさん(20代男性)。加入する私学教員ユニオンとともに3月29日に記者会見を開いて公表した。未払いの残業代もあるという。
Aさんらによると、残業代は基本給の4%分しか支払われていなかったそうだ。なぜ4%かというと、公立学校に合わせたからだとみられる。
「給特法」という法律は、公立学校の教員について残業代を「支給しない」としている。その代わり、基本給の4%に相当する「教職調整額」が支給される。
4%という数字は1960年代に国がおこなった調査で、残業時間が月平均8時間だったことから来ているとされる。しかし、現在はその10倍働いている教員も珍しくはない。
Aさんらによると、この学校では36協定で月の残業上限を42時間としていた。しかし、実際には長期にわたって守られておらず、是正勧告を受けた。
労基署は細かい時間までは認定していないが、勤怠簿上では、Aさんには最長で月82時間ほどの残業があった。部活指導などの影響があったという。Aさん自身は持ち帰り残業なども含めて、100時間超を主張している。
長時間労働などもあり、Aさんは精神疾患を発症。学校からは今年3月いっぱいでの雇止めを通告されている。
Aさんは現在、学校側に2年分の未払い残業代およそ570万円などを求めて団体交渉をおこなっている。
ユニオンの佐藤学代表は「今回が特別悪質ということではない。公立なら違法ではないことが、私立では違法になる。にもかかわらず、公立と同じやり方をしている私立が多い」と話す。
裏返すと、公立学校であれば、100万円単位で教員の給与を合法的に削れるのが現状であり、そうした公立学校のあり方が、私立で働く人たちの労働環境の悪化につながっているともいえそうだ。
Aさんは労基署に申告したことについて、「非正規教員は立場が弱く、声をあげられない。雇い止めになった自分が声をあげようと思った」と話す。復職は目指しておらず、今後は別の業種で働くという。