「なんでこんなん作ったの?」「(本を)どうやって取るの?」
これは3月25日にオープンした「こども本の森 神戸」にある本棚を見た、子どもたちの感想だ。この子どもたちの素直な言葉をNHKニュースが報じると、ネットでは大きな反響が起こった。(取材・文:昼間たかし)
子どもたちが話題にしていたのは、この施設の目玉、高さ約9メートルにも及ぶ壁一面の「本棚」について。「こども本の森 神戸」の公式サイトによると、本棚の5段目より上は展示本で免震対策がされているという。ようは単なる装飾だということなのだが、それだと子どもたちが「なんのために作ったの」と疑問に思うのは当然だろう。
SNSでは見栄え重視の図書館に批判的な声が根強い。今回も安藤忠雄の施設設計に、辛辣な指摘が相次いで出ていた。
「結局芸術的建築家って、独りよがり」
「子どもに指摘される「図書館」とは一体何なのか」
「安藤忠雄に発注する方がおかしいんだよね」
ただ、今回の建物は、安藤忠雄氏の寄付。つまり建物は安藤忠雄が勝手に作って、それを市が無償でゲットしたという形だ。
これに対し、元日本図書館協会図書館の自由委員会委員長の西河内靖泰さんは、そもそも寄贈をはねつけるべきだったという意見だ。建築費はゼロでも、今後の施設運営コストは行政の負担となる。「今回の建物は寄付ですが、市は後々のメンテナンス費用も考えずに受け取るべきではありませんでした」と、西河内さんは語る。
高層の本棚は、それほど悪なのだろうか? 西河内さんは次のように語っていた。
「(高層本棚は)たとえディスプレイとして利用するにしても、天井が高くなるので建物全体で本を置くスペースは減ってしまいます。こうした本棚を設置すること自体が、利用者のことを考えた設計になっていないことを示しています。だから批判の対象になるのです」
「もちろん、見栄えのよい図書館のほうが利用者に興味を持って貰えるという価値観の人もいるでしょうが、図書館は建築屋に賞を取らせるために作ってるんじゃないんですよ。ほかの一般の図書館も真似をし出すから、こういう建物はやめたほうがいいんです」
実際、こうした高層本棚は自治体の図書館でも採用されている。たとえば昨年オープンした東京都中野区立の中野東図書館にも、建物3階分にも及ぶ高層本棚が設置され、批判を呼んでいた。
吹き抜けの高層本棚は一見カッコいいし、ファンタジー映画やイラストなどで登場すると「おおっ」と思うこともある。しかし「単なるディスプレイで、本棚としては使えない」と言われれば、見た人は逆にガッカリしてしまうのではないだろうか。そんな見掛け倒しの装飾が、子どもたちに本の面白さを伝えられるとは到底思えないのだ。