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菅田将暉が語る『ミステリと言う勿れ』の反響で感じたこと 「テレビの強さはまだある」

2022年03月28日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

菅田将暉(撮影:伊藤惇)

 フジテレビ月9ドラマ『ミステリと言う勿れ』の最終話が、3月28日に放送される。田村由美による同名コミックを原作とした本作はこれまで11話に渡って放送され、毎週登場するゲストと主人公・整(菅田将暉)により、事件の謎も人の心も解きほぐしていく、令和版・新感覚ミステリーとして話題を集めてきた。


【写真】菅田将暉撮り下ろしカット一覧


 最終話直前、主演の菅田将暉へのインタビューが実現。本作が自身の俳優人生にとってどんな作品になったのか、そして今後のテレビドラマに掛ける思いの丈を語ってもらった。


■「原作の力です」


――これまで11話が放送され、多くの反響が届いていると思います。ご自身の元に届いた声からどんなことを思いますか?


菅田将暉(以下、菅田):本当に多くの反響をいただいているんですが、この作品から視聴者の方が受けてとってくれているエンターテインメントとしての「感動」が1つじゃないというのが今までと大きく違うなと感じるところです。「感動した」「泣けた」「笑った」に留まらず、このドラマをきっかけに、ネット上をはじめ、いろんな場所でいろんな人が考えて議論しているのを肌で感じています。


――この作品が反響を呼んだ理由をどう考えていますか?


菅田:もうそれは原作の力です。最近、家族や親戚、友人と話す機会があった時に、ドラマの話を持ち出して「僕もこんなことがあって……」と自分事として身の上話をしてくれて。その姿を見るとよかったなとすごく思います。反響があるのは、原作漫画がこれだけ広がっている理由と同じなのかなと。良いも悪いも反響があるというのは、僕らなりにちゃんと届けられた証拠なのかなとも思います。


――初の月9主演となった本作も最終話間近ですが、菅田さんにとってどんな作品になりましたか?


菅田:やって良かったと思いますし、現代でドラマを作る上で、ものすごく大事な作品になりました。地上波のドラマって今は厳しい時代だと思うんです。僕より年の若い人とか、家にテレビがない人も多いと聞くので、どうしたものかなと思っていたんですけど、反響を聞いていると、スマホやパソコンで観てくれている人の多さを知って。観る媒体がテレビじゃなくなっても、いろんな形で観てくれていることを知れたのが僕にとって大きかったです。


――完成披露試写会での「整くんがあまり饒舌に、世論を振りかざす人間にならないように匙加減を大事にした」という言葉が印象に残っています。菅田さんが意識していた部分が視聴者の方に伝わっている感覚はありましたか?


菅田:そうですね。観る方も分かってくれたという安心感もありましたが、ある意味、そこまで考えなくてもよかったんだなということも多かったです。このドラマは観ていて疲れる人も多いんと思うんです。特に真面目で深い視聴者ほど。そうあるべきドラマだからそれが正しいんですが、整くんのその匙加減はこだわってよかったなと思います。それと何より、こんなに先輩や業界内の方が観てくれている作品というのも有り難いです。みんな当たり前のように観てくれているみたいで、本当によかったです。


――社会問題に対する整くんの意見が毎回反響を集めていますが、菅田さんが刺さった言葉はありますか?


菅田:僕が原作で1番好きなセリフが、子供の成長のことで、「子供って、乾く前のセメントみたいなんですって」の部分なんですが、すごく腑に落ちました。ドラマではそのセリフは言ってませんが、乾く前のセメントの中で、幼少期に経験したことが大人になってもそのまま形として残っているという話がすごく分かるなと。実際に言ったセリフだと、第2話の「人間がすることは全て自然の範疇です」のセリフが好きでした。原作だともっと書いてあるんですけど、自然とは何かみたいなところが演じ手としては響きました。


■「僕はちょっと安心できた」 原作者・田村由美先生のひと言


――撮影前に、役の性格にかなり入っていたという話を聞きました。


菅田:もともとちょっと近いところがあるのかなとは思います。この現場では、普段なかなか伝わらないであろう不毛とされる議論をたくさんできて楽しかったですし、この役でいる時間は整くんがしゃべっているような錯覚で問答ができるから、喋りやすかったかもしれないです(笑)。


――カメラが回っていないところでも同じような口調になってしまうことはありましたか?


菅田:今回、アドリブがほとんどないんです。ちょっと後ろでしゃべっていて、というのが撮影でよくあるんですけど、いつもだったらいくらでも口から適当に言葉が出てくるのに、なかなか言葉が出てこないことがありました。整くんの発言はやっぱりアドリブでできるものではないです。


――原作者の田村さんが現場にいらっしゃったそうですが、人気原作を実写化する上でとても支えになったのではないかと思います。


菅田:今もそちらにいらっしゃいます(笑)。クランクイン前も現場でも、たくさんお話させてもらって本当にありがたかったです。ものづくりをする上で、現場ではどうしようもないことが必ず出てくるんですよ。現場じゃ解決できないんだけど、現場でどうにかして撮らなきゃいけないみたいな状況も多くて。でも、田村先生が現場に何度も足を運んでくださっているから、いろんな相談がその都度できました。ドラマ仕様にする上で、話の順番を変えたり、ちょっとオリジナル要素を盛り込んだりというのがたくさんあるので、監督や制作陣が常に先生と会話ができていたので、僕らは1番に安心感をいただいている感じでした。


――田村先生と話されて特に印象に残っているシーンはありますか?


菅田:第5話の小日向(文世)さんと病室でずっとしゃべる日に先生が来てくださって僕が演じている整くんを間近でじっくり見られた感じがして、すごく緊張しました。お芝居しながらも、先生から見られているというのは頭から消えませんでしたが、「カット、オッケー」となったときに、先生がぽろっと「整くんってこうやってしゃべるんだ」とおっしゃってくれて。そのひと言で僕はちょっと安心できたんです。ちゃんと今の悩み方でやっていけばどうにかなるかなと思えた瞬間でした。


――1年前に撮影していた時と今改めて見直して、印象の変化はありますか?


菅田:これだけ距離を置いて自分のドラマを観ることもあまりないので、素直に楽しいですね。毎週月曜日にラジオをやっているんですが、その前に観ると収録に集中できないから、終わってから家で朝の4時頃から見始めるんです。それが毎週の楽しみで。ただ、家のHDDの設定なのか、4時半になったらクリーニングのために止まるんですよ。そして止まると必ず『暴れん坊将軍』(テレビ朝日系)が始まるんです。なぜだかわからない(笑)。毎回、僕の中では、整くんがここから何かしゃべるんだという時に、松平健さんが馬で、パカラッパカラッっていうのが印象強くて(笑)。素直に楽しめている自分がいるということに安心しています。


――再び我路(永山瑛太)くんが登場しますが、整くんと我路くんの関係をどう捉えていますか?


菅田:我路くんとライカ(門脇麦)は、整くんにとってちょっと特別なので、僕自身が惹かれる(永山)瑛太さんにやっていただいて本当に感謝しています。我路くんの目が離せないという“なにか”を作るのが役者の仕事なので、後輩ながらさすがだなと思いながら見ていました。現場での佇まいとしても、整くんが我路くんとの会話を求める感じが僕も素直にあって。同じ思想で唯一同じ考え、同じ戦いをしている人が、やっぱり瑛太さんだったからだと思います。原作漫画の中での整くんと我路くんが結びついたものと内容は違うけど、僕も同じように、瑛太さんにだけは分かってもらえるなということがたくさんあるから、よかったです。


■「やっぱりテレビって偉大」


――本作を経て、役者として、今後の民放ドラマへの意気込みを教えてください。


菅田:戦わなきゃなと思うし、限られたものの中で面白いものを作れたらなと勝手な責任感があります。でも、いかんせん、人手が足りていない。僕ら世代が、ちょうどテレビドラマで育った最後の世代というか、より憧れがある世代なんだと思います。連続ドラマのリアルタイムのスピード感は、よくも悪くも、その人の状況がすごく出やすい媒体だと思うんです。作り込み過ぎない状況だったりもしますが、単純にオンエアが間に合わないというのが本当にありますからね。最終回、今日の朝撮って夜に放送、みたいなあのヒリヒリ感が僕は好きで。「そういう“ものづくり”も良くないですか?」と僕は思うし、全てにおいて時間をかけて、丁寧に作ればいいというものでもないと思うから。テレビドラマならではのタイムリミットギリギリで、爆弾の赤い線か、青い線を切る、本当にそういう日々なので、スタッフ陣も役者陣も、ごまかせない何かが、唯一映る場所だと思うんですよ。もう顔がどれだけむくんでいようと、歯が黄色かろうと、なんか挟まっていようと、オンエアするしかない(笑)。そういう場所として、逆に残っていけばいいのかなとも思いつつ、より良くあるものもあるよなと、勝手にそんなことを思っています。


――『まつもtoなかい ~マッチングな夜~』(フジテレビ系)でお仕事をセーブしているとをおっしゃっていましたが、テレビドラマの見方だったり、何か変化はありましたか?


菅田:今はあまり観ていないんです。だから、この立ち止まりが終わってから、何か思うのかなと。でも結局、おばあちゃんとか地元の友人が一番観るのがドラマなのかなと思いますね。テレビというものの強さは、まだあると信じています。


――特に月9とか大河ドラマだと、観ている人も多いので喜ばれそうですよね。


菅田:そうなんです。結局、家族との時間が日々多めになるので、僕は今、外で何を言われようと、どう思われようと、どうでもいいモードにちょっと入って来ていて。これは表に出る人としては良くない気がしますけど(笑)。でも、そんなことも初めてだったからこそ、家族の意見をよく聞くようになって、やっぱりテレビって偉大だなと思います。


(取材・文=大和田茉椰)