2022年03月25日 21:11 弁護士ドットコム
アダルトビデオ(AV)の出演契約について、成人年齢引き下げ後も18歳、19歳が未成年者取消権を使えるよう求めるネット署名を呼びかけていたグループが3月25日、東京・永田町の衆院第1議員会館で、この日までにあつめた分を関係省庁に提出した。
【関連記事:「もう消せないの?」 身に覚えのない「無修正」が流出…引退後の元女優をおそった苦難】
署名を提出したのは「AV強要問題対策委員会」。元AV出演者や性風俗出身者、支援職の人たちで構成されているという。
同グループは、署名サイト「change.org」などで呼びかけて、3月12日から25日までにあつめた計3万9204筆を法務省、内閣府、厚労省、文科省、消費者庁、警察庁の担当者に手渡した。
これに合わせて、「性搾取被害が深刻化することを防止するため」として、(1)18歳、19歳を対象にした未成年者取消権の存続、(2)性的映像記録を配信するプラットフォームの規制、(3)インターネット上のスカウトの規制――などをもとめた。
若い女性などが意に反してAVに出演させられる「AV出演強要問題」が報じられたあと、第三者的な立場から健全化を促す「AV人権倫理機構」が発足するなどして、業界は自主的に制作・販売などの適正化をすすめている。
同機構によると、多くのメーカーでは現在、18歳、19歳の出演は控えているという。また、ここ数年の業界アンケートでも18歳、19歳の女優数はゼロとされている。
しかし、NPO法人ぱっぷすによると、いまだに未成年を含む「AV出演」に関する被害相談があるという。業界団体に属さないメーカーのほか、個人・サークルが制作する「同人AV」や「個人配信」というジャンルも広がっている。
こうした状況から、成人年齢引き下げで「未成年取消権」がなくなる18歳、19歳に注目があつまり、AVを含めたアダルトコンテンツに「女子高生」が出てしまうおそれが広がるとして、人権団体や政治家が懸念の声をあげている。
AV強要問題対策委員会によると、スカウトの勧誘手口は巧妙で、明確な手口がなくても、あれよあれよと不当契約を結ばされているという。また、AV出演に憧れる若者が増え、業務内容を知らないまま過酷な演出に同意させられるような被害も広がっているという。
署名の発起人の1人、松本ゆかりさんはこの日、ウェブ会議システムで、関係省庁や報道陣に向けて次のように話した。
「若い日の自分の言動でまったく後悔のない人はいないと思う。AVは、『出なきゃよかった』と自分の被害の大きさに気づいて、絶望して、涙が出てくるころには、もう自分の性的姿態がネットの海に出て、回収できないという後悔です。若い子たちがワナにはまってしまうことを判断力のなさや自己責任に帰結させないでほしい」