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Kis-My-Ft2メンバー分析 第4回:横尾渉、味わい深い魅力とポテンシャルの高さ 独自路線を邁進する新しいアイドル像

2022年03月25日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

Kis-My-Ft2

 昨年CDデビュー10周年を迎え、現在はドキュメンタリー番組『RIDE ON TIME』(フジテレビ系)にてフォーカスされているKis-My-Ft2。それぞれが得意な分野で活躍しながらも、ここぞというときにはチームワークを見せる、自由なようで強固なグループだ。その個性豊かな活動を軸とし、魅力をまとめてみたい。第4回は横尾渉。


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 横尾渉は、くせになるアイドルだ。「アイドル」とカテゴライズするには、あまりに現実主義で人間的ではあるがーー177cmの長身と抜群のスタイルは広いドームのステージに映え、メガネ姿がスタンダードだからこそ生まれる裸眼のレアさは都度、ファンをときめかせる。アイドルと形容するには充分の、持って生まれた引力がある。


 Kis-My-Ft2の代名詞と言えるローラースケートでのパフォーマンスも、横尾の強み。横尾はあまり自身を肯定する発言をしないタイプなのだが、ローラースケートについては珍しく、きちんと自らを誇る。スピンや片足滑走など、随所で技を見せているものの、「どうだ」という姿勢ではないのが横尾らしくもある。任された「やるべきこと」として淡々と成功させるか、あるいは遊び心か。機会があれば目で追ってみてほしい。きっと、楽しませてくれるはずだ。


 そして、興味の範囲は広く深い。ペット介護士やマグロ解体師1級など、さまざまな資格を保有し、仕事にも繋げてきた。『オレンジページ』や『いぬのきもち』など、あまりジャニーズとは縁のなかった媒体や番組にも進出し、独自路線を開拓している。資格は「流れの速い芸能界で、新星のアイドルたちに勝つための、名刺代わり」(※1)との言葉通り、かゆいところに手が届く存在として、マルチな活躍を見せる横尾。現在、ジャニーズの後輩たちがさまざまな資格取得に励み、多方面で活躍しているのは、少なからず横尾の影響もあったのではないだろうか。


 Kis-My-Ft2メンバーが活躍する『プレバト!!』(TBS系)では、俳句の「名人」として立ち位置が定着した。タイトル戦では二度の優勝に輝き、司会の浜田雅功からゲストの句について見解を問われる機会も増えた。そのコメントは堂々たる「名人」のもの。日々の研鑽に裏打ちされた知識と、横尾ならではの感性で述べる言葉には、ひかえめながらも芯があり、説得力がある。同番組での躍進は、お茶の間における横尾の知名度を確かなものにし、女優・吉行和子も彼のファンを公言している。彼が持つ優しい視点や、斬新なものの見方を知る機会にもなった。


 「かゆいところに手が届く」という意味では、グループにおける立ち位置も同様。俯瞰的な視点を持って全体のバランスを見ながら、出るときは出て、引くときは引く。横尾自身は、グループ活動やライブに対し何もしていないような発言をすることもあるが、いざ蓋を開けてみれば演出や曲のディレクションに携わっていたりと、他のメンバーの発言からようやく、その頼れる仕事ぶりを知ることも少なくない。


 横尾の現実主義な視点、ビジネス的観点からの発言は、グループにおける効果的なブレーキでありアクセルだ。地に足のついた「冷静なハングリーさ」は、Kis-My-Ft2というグループの特殊性。そこには、横尾の存在が反映されているように思う。


 そして横尾は近年、開花している。『キスマイ超BUSAIKU!?』(フジテレビ系)では、抜き打ち課題のダンスや、パッションと勢いで貫き通す英会話など、ユーモアあふれる一面をイキイキとのぞかせる。『UTAGE!』(TBS系)の定番コーナーとなった「DJ師匠」を見ても分かるように、おちゃめで、人を笑わせることが好きな人だ。


 『10万円でできるかな』(テレビ朝日系)、『キスマイどきどきーん』(dTV)では、ひとたび話し出すと止まらなかったり、スタッフとやり合ったり(もちろん、良好な関係性あってのことだ)、急にゴネ始めることも。グループでは“兄組”ながら、実生活では末っ子三男坊というギャップや時折垣間見えるその素顔も、横尾の魅力だろう。


 なかなかメディアでそこまでは言えないということも、横尾は言う。けれどそれは、誰かを傷付けるようなものではなく、言うなれば身を切るもの。以前の横尾は、苦手なことはもちろん、自分自身をあまり見せたがらないところがあったように思うが、今は振り切っている。これは推察でしかないが、自分に傷が付くかもしれないリスクよりも、「それで誰かが笑うなら」というエンターテインメント精神が育ったように感じる。そんな自分を彼自身が面白がっているようにも見え、いまや何が飛び出すか、一番分からない人だ。


 ただし、誤解されやすいところはある。言葉が少ない、または多いゆえ、ハラハラすることも少なくない。けれどそれが、横尾渉。前回(※2)、宮田俊哉について「好き」を貫ける強さがあると書いたが、横尾は「嫌い」と言える、それはダメだと口にできる強さがある人だ。彼の言葉は、ときにファンや視聴者の思いを代弁してくれているようで、それもまた、アイドルの新しい在り方なのかもしれないと思う。


 なかには食わず嫌いをしている人もいるかもしれない。けれどハマればとことんハマる。やはり、くせになる存在だ。


※1:https://www.iza.ne.jp/article/20220320-GVZPTLQBUVIHTFVVWOAWO7PEZE/
※2:https://realsound.jp/2022/03/post-989993.html


(新 亜希子)