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帰国事業「北朝鮮政府」の違法性を一部認定 賠償は認めず 70代脱北者が涙「命足りない」

2022年03月23日 18:51  弁護士ドットコム

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「地上の楽園」などと紹介された帰国事業によって北朝鮮に渡り、のちに脱北した60代~80代の5人が、帰国事業を計画・主導した北朝鮮政府に対して、計5億円(1人につき1億円)の損害賠償を求めた裁判で、東京地裁は3月23日、違法性の一部を認定しながらも、請求を退ける判決を言い渡した。


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原告代理人によると、北朝鮮政府を相手取った裁判は初めてで、北朝鮮政府の違法性が認定された判決も初めてだという。



原告側は控訴する意向だ。17歳から43年間、北朝鮮で過ごした原告の脱北者・川崎英子さん(70代)は判決後の会見で「早くしないと命が足りない」と涙した。



●人権侵害認めつつ、北朝鮮の責任を追求しない東京地裁「逃げたな」

1959年から1984年ごろまで実施された帰国事業によって、在日コリアンやその家族の日本人ら9万3000人以上が北朝鮮に渡ったとされている。



「地上の楽園」などと、虚偽の宣伝(勧誘行為)によって騙されて北朝鮮に渡航させられ、出国を許されずに留め置かれた行為(留め置き行為)の違法性が争われていた。



原告代理人の福田健治弁護士によれば、判決はまず、日本の裁判管轄が認められるか検討した。



日本でおこなわれた勧誘行為については、日本の裁判管轄を認めた。一方、留め置き行為は北朝鮮国内で発生しているとして、日本の裁判管轄を否定したうえで請求を却下した。



続いて、勧誘行為については、北朝鮮政府の責任を認め、日本の裁判所において訴えられると判断。ただし、勧誘行為については除斥期間の適用を認め、請求を棄却した。



「この判決は北朝鮮による人権侵害行為を、日本の裁判所が裁くことができる。損害賠償をもとめられると裁判所が示したものです。



北朝鮮政府の意を受けた勧誘によって、地上の楽園という虚偽宣伝行為によって、原告が北朝鮮に渡ったという事実が認定された。



他方、そのような人権侵害を正面から認定したにもかかわらず、賠償を命じることはなかった。また、帰国事業で虚偽宣伝して、留めおくまでが北朝鮮の計画であり意図であるとして丁寧な立証をおこなったが、ほとんど無視されています。



不当であるし、裁判所は逃げた。判決には納得いかない。原告全員が控訴することを予定しています」(福田弁護士)



●原告の脱北者「はやくして。命が足りない」

原告の脱北者らは、北朝鮮政府の責任を認めながら、その責任を追及しない判決に複雑な思いがもれた。





原告の川崎英子さんは「日本の裁判所にも感謝してます。北朝鮮を被告として、裁く相手として認めたことは、本当に大きなことです。勧誘行為について、客観的事実関係が認められるとしています」と感謝の弁を述べた。



しかし、留め置き行為の責任が認められなかったことには、「あまりにも北朝鮮の事実を知らないと思います」と批判する。



2020年の秋から、北朝鮮にいる家族との連絡は取れない状況だ。早くしなければ、生きて会えないと、机に突っ伏して涙した。



「すぐに控訴して次の段階に移りますが、命が足りません。原告のうち2人は会見に参加できませんでした。健康がダメになっているからです。私も7月には満80歳になります。控訴しても、最速でやらないと生きて結果を見られず、私の子ども、孫たちに会えずに死んでしまうということです」