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初回輸入分が即完売! ジープのピックアップ「グラディエーター」が人気

2022年03月22日 11:31  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
ジープのアイコン的存在「ラングラー」をベースにしたピックアップトラック「グラディエーター」が人気だ。日本では2021年11月に発売となり、最初の輸入分400台はすぐに完売。早くも追加導入が決まったという。グラディエーターは何が魅力で、ラングラーとはどう違うのか。実車をチェックしてきたので報告しよう。


○実は歴史の長いジープのピックアップ



ジープのピックアップトラックが日本に正規輸入されるのは今回が初めて。FCAジャパンは2022年2月の「ジャパンキャンピングカーショー2022」において、以前紹介したフィアットプロフェッショナルの「デュカト」とともにグラディエーターを一般公開した。



生まれ故郷のアメリカには、ジープのピックアップは昔からあった。そもそもジープのルーツにあたる軍用車の「ウィリスMB」は「1/4t 4x4トラック」と呼ばれていたし、終戦後まもない1947年には、キャビンと荷台を分けた本格的なピックアップが「ジープ・トラック」という呼び名で誕生している。



「グラディエーター」という名前も、ジープ・トラックの後継車として、現在の「グランドチェロキー」の祖先といえる「ワゴニア」をベースとして生まれたピックアップも、同じ名を名乗っていたのだ。



ジープのピックアップとしてはほかにも、日本で大ヒットした「チェロキー」XJ型をベースとする「コマンチ」などがある。



とはいえ、これまでのジープのピックアップはすべて、ドアが2枚でシートは前席のみのシングルキャブだった。後席を備えたダブルキャブのピックアップは今回が初めてだ。



新型グラディエーターは写真で見ておわかりのとおり、フロントドアまでは基本的にラングラーと共通だが、ボディサイズがかなり違う。


ホイールベースは、同じ4枚のドアを持つ「ラングラーアンリミテッド」に対して480mmも長く、軽自動車の全長を上回る3,490mmに達する。全長は5,600mmで、実に730mmも長い。同じ車格のSUVより全長やホイールベースがここまで長くなるのは、もちろん大きく重い荷物を積むための荷台を用意したためである。


○ラングラーよりボディが長い理由



グラディエーターとラングラーアンリミテッドを比較すると、ドアパネルはフロントだけでなくリアも共通だ。しかし、リアドアと後輪の位置関係は大きく違う。



ラングラーはリアドアの直後、つまり後席とラゲッジスペースの間に後輪があるのに対して、グラディエーターは5人乗りのキャビンをまず箱で囲い、その後方に独立した荷台(米国ではベッドと呼ぶ)と後輪を備える。

最大積載量250kgの荷台には相応の広さが要求されるだけでなく、重さを支えるためには後輪を荷台の下に置く必要がある。なので、ホイールベースや全長が長くなるのだ。



この関係は、日本車のピックアップで現在唯一販売されているトヨタ自動車「ハイラックス」と、同じクラスのSUV「ランドクルーザープラド」の関係にも当てはまる。ハイラックスのボディサイズが全長5,340mm、全幅1,855mm、全高1,800mm、ホイールベース3,085mmであるのに対し、プラドは同4,825mm、1,885mm、1,850mm、2,790mmで、やはり全長とホイールベースに大差がある。


日本仕様のグラディエーターは、オフロードの走破性を高めた「ルビコン」グレードになる。ラングラーアンリミテッドのルビコンと比べると、前後のフェンダーがブラックではなくボディ同色になることも違いになる。ちなみに本国では、どちらも選べるようになっているようだ。



後ろ姿は、一見するとラングラーと同じに見えるリアコンビランプが実は別物で、バンパーにはフックが内蔵され、上面はステップとしても使える加工が施される。使い方の違いを反映したディテールの差別化が興味深い。



キャビンではリアシートの作りが違う。グラディエーターの座面の下には、収納スペースが用意してあるのだ。荷台がキャビンの外側にあるピックアップは、SUVに比べて車内の荷物置き場に限りがある。よって、この場所を活用したのだろう。ピックアップという乗り物がライフスタイルの一部として根付いていることを教えられる。


ルーフはラングラーと同様、ボディとは別体のハードトップを被せた構造であり、前席頭上は左右別々に脱着可能という「3ピース・モジュラーハードトップ」を採用している。



ボディカラーは8色を用意。ブラックとダークサドルの2色が用意されたインテリアが組み合わせられる。全長が伸びた関係もあって、車両重量はラングラーアンリミテッドのルビコンに比べ250kg増の2,280kgとなる。



エンジンは、ラングラーの2022年モデルは2リッター直列4気筒ターボのみになったが、グラディエーターはこれまでラングラーにも設定されていた3.6リッターV型6気筒自然吸気が積まれる。

○初回ロットはすぐに完売という人気ぶり



グラディエーター日本仕様の価格は当初、770万円だった。当初と書いたのは、最初に輸入された400台に対してつけられたプライスだったからだ。この400台はすぐに完売となり、現在は40万円値上げされて810万円になっている。



ジープとしては高価だと思う人がいるかもしれない。ただしラングラーも、昨年12月の装備充実に伴い値上げされ、グラディエーターと同じ4枚のドアを持つアンリミテッド・ルビコンは743万円となっているので、極端に差があるわけではない。



アウトドアを趣味とする人にとっては、マウンテンバイク(MTB)のような遊び道具をそのまま積みこめることはありがたいし、ラングラー以上に無骨なスタイリングに惹かれる人もいるだろう。サイズやプライスを超えた強烈な個性が、日本での予想以上の人気につながっているのかもしれない。



森口将之 1962年東京都出身。早稲田大学教育学部を卒業後、出版社編集部を経て、1993年にフリーランス・ジャーナリストとして独立。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員を務める。著書に『これから始まる自動運転 社会はどうなる!?』『MaaS入門 まちづくりのためのスマートモビリティ戦略』など。 この著者の記事一覧はこちら(森口将之)