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自傷行為くり返す小学生、薬やめられない妊婦…コロナ禍に深刻化する「女性の依存症」支援につなげ

2022年03月18日 18:11  弁護士ドットコム

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厚生労働省は3月16日、女性と依存症について考えるシンポジウムをオンラインで開催した。弁護士や産婦人科医などが、依存症の背景にある「生きづらさ」や困難、治療や支援につなぐために何ができるかについて意見を交わした。


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●「依存の入口」にいる小学生も

「依存症」とまではいかなくても、その手前にある「依存の入口」に立つ子どもたちもいるという。



これまで、全国の小・中・高校の保健室を取材し続けてきたジャーナリストの秋山千佳さんは「コロナ禍になってから、子どもたちの自傷行為などの話を聞くことがある」と話す。



「小学校の養護教諭から、リストカットをする女の子の話を聞いたことがあります。この女の子は、最初、手首の傷を担任の先生に見せたそうですが、コロナ対応や日々の業務に追われていた先生は『気をつけなさいよ』と受け流してしまったようです。幸い、女の子がその後、保健室を訪れたことで、養護教諭が気づきました」(秋山さん)



養護教諭が「どうしたの?」と尋ねると、女の子は、コロナ禍の「ステイホーム」といわれる状況下で家庭の不和が生じ、両親のイライラが自分に向けられたこと、心身ともにつらくなったことを語り始めたという。リストカットはSNSで知り、苦しい気持ちを紛らわせるためにしていたようだ。



「養護教諭は、女の子に十分納得してもらったうえで、母親にこのことを伝えました。母親は女の子が苦しんでいることに気づいていなかったようで、これを機に、子どもと話し、向き合うことができたそうです。女の子もリストカットが止まり、話をしに、保健室をよく訪れるようになったと聞いています」(秋山さん)



女の子の傷を見たほかの生徒の間でも動揺が広がっていたが、養護教諭が校長に報告したことで、子どもたちへのカウンセリングなどの対応もおこなわれたという。





●「一般市民の感情との乖離こそが、問題をより難しくしている」

依存症の問題に悩む女性たちが、産婦人科医や弁護士のもとを訪れることもあるようだ。



産婦人科医の丸田佳奈医師も、さまざまな「生きづらさ」を抱えた女性たちと出会ってきた。



「男性の家を転々とした結果、妊娠して来院する若い女性や、両親も覚醒剤を使っている薬物依存症の妊婦、抗不安薬や睡眠薬のOD(オーバードーズ:薬を過剰摂取すること)で搬送される妊婦などもいました」(丸田医師)



丸田医師が難しさを感じているのは、産婦人科医として、どのように介入するかだ。



「最もこわいのは、信頼関係を失ってしまい、患者さんが来院しなくなってしまうことです。そのため、気軽に深い話ができないという事情もあります。コロナ禍での家族との連携も難しく、家族に病識を持っていただけない場合もあります。そのような中で、どのように依存症の支援や治療などにつなげればよいのかに悩むことがあります」(丸田医師)





三輪記子弁護士も、民事・刑事事件ともに、多岐にわたる依存症の問題を抱えている人たちと接することがあると語る。



「たとえば、債務整理・破産事件の場合、ギャンブル依存症とみられる人たちが一定数います。しかし、弁護士は『事件』として処理するため、破産後もギャンブル依存症の問題が残ってしまうんです。



少年事件であれば、少年を保護する趣旨でおこなっているため、依存症の問題に介入できる可能性はあります。少年の中には、親に依存症の問題がみられる場合もありますが、親の依存症への介入は困難なこともあります」(三輪弁護士)



三輪弁護士は、業務を通じて、「どの人も依存症になってしまう背景がかならずある。安易に『自己責任』として断罪してしまうことは違う」と強く感じているという。



「一般市民の感情との乖離こそが、問題をより難しくしていると感じています。だからこそ、相談できる人は周りにいるにもかかわらず、なかなか話せないという問題があります。



弁護士は守秘義務があるので、相談を受けて通報することはありません。また、治療の専門家は、犯罪者であろうとなかろうと、治療することが目的です。ぜひ、安心して治療につながってほしいと強く思っています」(三輪弁護士)



●家族への支援「何より大切」



女性を対象とした依存症回復支援施設「ダルク女性ハウス」の代表をつとめる上岡陽江さんは、施設を訪れる人たちの多くは「『よく生きてる、えらい!』と思うような、尊敬できる素晴らしい人たち」だと語る。



そして、何より大切なことは「家族への支援」だと強調する。



「講演会などでは『もし、あなたの配偶者、子どもなどが依存症だったら、すごく支援してもらって』と話しています。家族が支援されることが大切。それがないと、当事者も治療や支援につながりづらいんですよね」(上岡さん)



上岡さんは2021年6月、薬物依存症の当事者や精神保健福祉士などで任意団体「ハームリダクション東京」を立ち上げ、SNS相談を始めた。市販薬や処方薬をやめられずに悩んでいる女性からの相談が少なくなく、「死にたいほどつらい」「誰にも(「死にたい」ということを)話せないから話したい」などの声が届いているとのことだ。



上岡さんは「(薬物を)使ってても相談してね」と会場から呼びかけた。