2022年03月18日 17:01 弁護士ドットコム
2019年に離婚した木下優樹菜さん、お笑いコンビ『FUJIWARA』の藤本敏史さん。3月13日放送の『もんくもん』(読売テレビ)に出演した藤本さんが、子どもの学費を支払っていることを明かし、話題となっている。
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3月17日、自身の写真集の発売を記念して記者会見を開いた木下さん。その後、学費をめぐる報道についてインスタグラムでストーリー(24時間表示される投稿機能)を更新した。
この中で「離婚する際に私は慰謝料をもらう立場でしたが、そういったものは私はもらわないと決め」たこと、「2人の父親として"学費"だけは払う という事になった」「生活費などは一切もらっておりません」。「元旦那さんとも話した結果書かせていただきます」とした。
これを受け、ネットでは様々な声が飛び交っている。中には「慰謝料と養育費の区別がつかないのでは」などと指摘する声もあった。
確かに、離婚に際しては慰謝料、財産分与、養育費など様々なお金の問題が発生するため混同しやすい。離婚に際して発生するお金について、冨本和男弁護士の解説を元に整理してみたい。
——木下さんは「生活費などは一切もらっていません」としています。婚姻費用や養育費とは違うのでしょうか。「生活費」とはどのような性質なのでしょうか
学費以外の子どもの「養育費は一切もらっていません」という意味かもしれませんし、「婚姻費用は一切もらっていません」という意味かも知れません。
仮に、「婚姻費用は一切もらっていません」という意味であれば、「婚姻費用」は、夫婦生活を維持するために支払を求めることができる費用ですので、離婚すれば、藤本さんが木下さんの生活費を負担する理由はなく、支払ってもらえなくて当然です。
これに対し、「養育費」は、未成熟な子どもが社会人として成長自立するまでの費用、子どもの生活に要する費用ですので、離婚後でも支払を求めることができます。
別居した場合でも離婚するまで、夫婦の一方は他方に対し、その間の生活費(=婚姻費用)を配偶者に請求することができます。夫婦には結婚生活を送るうえで必要な費用(婚姻費用)を分担する義務があり、別居中もその義務は続くからです。婚姻費用には、衣食住にかかるお金のほか、子どもの養育費、医療費、交際費なども含まれます。
婚姻費用は配偶者が別居に反対している場合でも請求できます。夫婦間で合意できない、そもそも配偶者が話合いに応じないような場合は、家庭裁判所に対して「婚姻費用の分担請求調停」を申し立てて、婚姻費用について話し合うことができます。
——木下さんは「慰謝料をもらう立場」だとしています。詳細は不明ですが、そもそも慰謝料とはどのような立場の人がもらうものですか
慰謝料とは、民法上の不法行為により精神的ダメージを受けた場合に請求できる賠償金のことです。典型的なのは不倫ですね。配偶者の不貞行為によって精神的ダメージを受けたような場合、その配偶者に対して慰謝料を請求できます。
浮気や不貞行為を理由に離婚する場合、離婚を伴う場合には、離婚しない場合に比べて高額になるようです。不貞の慰謝料は、配偶者だけではなく、不貞行為の相手方にも請求できます。
木下さんの場合、詳細は分かりませんが、夫婦関係破綻の理由に繋がる藤本さんが原因の精神的ダメージがあったということかもしれません。ただ一般の人には慰謝料と財産分与と混同する人もおり、定かではありません。
——財産分与とはどんなものでしょうか
結婚している間に貯めたお金や不動産、車などは、夫婦の共有財産となります。そのため、離婚する際は、一定の割合(原則半々)で分けるよう、配偶者に要求することができ、これを「財産分与」といいます。
婚姻中の財産には「共有財産」と「特有財産」の2種類があります。
共有財産とは、夫婦が協力して築いた財産のことで、財産分与の対象となります。「特有財産」とは、親からの贈与や相続などのことで、財産分与の対象とはなりません。
また独身時代に貯めたお金で購入したものも、財産分与の対象外となります。なお夫婦どちらか一方の名義になっている財産であっても、結婚後に手に入れた財産は、夫婦共同の財産だと考えられています。
【取材協力弁護士】
冨本 和男(とみもと・かずお)弁護士
債務整理・離婚等の一般民事事件の他刑事事件(示談交渉、保釈請求、公判弁護)も多く扱っている。
事務所名:法律事務所あすか
事務所URL:http://www.aska-law.jp