2022年03月18日 10:41 弁護士ドットコム
「何かあるとキレて怒鳴り散らす人ともう一緒に居たくない」。このように話す女性から弁護士ドットコムに相談が寄せられています。相談者と夫はともに現在60代です。
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「夫は過去2回借金をして、自己破産までしたことがあります。自己破産した時は相談者の両親からの援助や子どものことを考えて離婚には至りませんでした」
しかし、それからも自己中心的でお金のことになると横暴になる性格は変わらず、相談者はこれから先もずっと一緒にいることが苦痛だと考えるようになりました。現在、相談者は両親の介護のため週の半分は実家で過ごしています。自宅は賃貸です。そのため夫は、相談者の両親が亡くなったら相談者の実家に移住することを望んでいるそうです。
「介護に一生懸命になっている私に『いつ引っ越しできるんや』と言ってきたりするので、それも腹が立ち、絶対実家に足を入れさせたくありません」といいます。
離婚には既に成人した子どもも同意していますが、夫は同意しなさそうです。相談者は裁判や調停で離婚は認められるのでしょうか。近藤美香弁護士に聞きました。
——妻の親を邪険にするような態度や、これまでの不誠実な態度は離婚理由として認められるのでしょうか
ご相談者は、夫の金銭感覚や、心ない言動や横暴な態度にご不満を感じている状況かと思います。しかし、離婚訴訟で裁判所に離婚を認めてもらうには、それなりの事情が必要です。 本件の状況で、離婚が認められるかどうかは、一概には言えませんが、夫の金銭問題や暴言等のレベルによっては、認められる可能性もあると思います。
つまり、夫の心ない言動や金銭問題が長期間続いており「婚姻を継続し難い重大な事由」があると、裁判所が認めてくれた場合は、離婚が認められる可能性があります。(民法770条1項5号)。
したがって、夫の借金が、身勝手な浪費やギャンブル等によるもので、ご相談者の努力ではカバーできないぐらいに金額が大きい場合や、暴言等が婚姻関係を破綻させる程度にひどいもので、長期間に及んでいて証拠もあるような場合は、離婚が認められる可能性があると考えられます。
一方で、夫の言動が、いわゆる性格の不一致とみなされる程度だと、裁判では離婚が認められない可能性があります。
その場合でも無理に夫と一緒にご実家に住む必要はありません。夫と一緒にご実家に住みたくないのであれば、夫と別居して、ご自身のみがご実家に住むという方法を検討してもいいのではないかと思います。
——夫は経済的に豊かではありません。離婚するにあたって財産分与の際、妻側が財産が多い場合には、離婚理由にかかわらず、多い方が分与することになるのでしょうか 原則は、そのとおりです。財産分与は、婚姻期間中に形成した共有資産を清算するものですので、原則として、離婚の責任とは別の問題です。
ただし、共有資産の形成に、夫がほとんど寄与しなかったと認められる場合は、夫の取り分が減らされる可能性もあります。
——今後、相談者の親の財産を相続した場合には、その分は分与対象になるのでしょうか
相続や生前贈与された資産は、夫婦で協力して形成した財産とは言えませんので、財産分与の対象にはなりません。ただし、分与対象外と認めてもらうためには、夫が同意するか、ご相談者がそのことを証明する必要があります。
【取材協力弁護士】
近藤 美香(こんどう・みか)弁護士
弁護士登録直後から大手弁護士法人にて500件以上の離婚・不倫慰謝料問題の解決に関与。夫婦カウンセラー資格保有。これまでのキャリアを生かし、独立後も引き続きこれらの問題に注力しています。
事務所名:エトワール法律事務所
事務所URL:https://etoile-lawoffice.jp/