2022年03月18日 10:11 弁護士ドットコム
これまで「未成年者取消権」で守られていた18歳・19歳も、4月からの成人年齢18歳引き下げによって、契約上は「成人」として扱われます。
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芸能界の契約問題にくわしい河西邦剛弁護士は、すでに芸能契約やAV出演契約をかわしてしまった若者に向けて、不安があれば3月中に取り消しの意思を表してほしいと呼びかけています。
「民法改正による成人年齢の引き下げによって、2022年4月1日時点で18歳以上20歳未満の人(2002年4月2日生から2004年4月1日生まで)は、成年として扱われます。
一人暮らしのためアパートを借りるなど、さまざまな契約をかわす機会が出てくる年代です。
新生活のためにアパートを借りる際には、親が名義人になったり、一緒に契約書にサインしたりするのが一般的でしょう。
ただ、未成年者の場合、民法で定められた未成年者取消権にもとづき、親(親権者)の同意のない契約は、基本的に『取り消す』ことができます。
注意しなければいけないのは、今まで契約を取り消せた18歳・19歳が、4月から『成年』になるため、詐欺や強迫がない限り、原則として契約を取り消せなくなることです」
「まず影響が出そうな分野として芸能契約があります。
親が芸能活動に反対している場合、未成年者が親に黙って芸能事務所と芸能契約を結ぶケースが少なくありません。
両親の承諾を必須としている大手の事務所ではまず起こりえないケースですが、たとえばライブアイドル(地下アイドル)グループを個人で運営しているようなケースでは、親の承諾なしに事務所と契約していることもあります。
これも『契約』ですから、未成年者が両親の同意なく芸能事務所と契約した場合には、簡単に契約無効にできるのです」
「しかし、今回の民法改正で、たとえば18歳(未成年)で契約して現在19歳というケースで、4月1日以降もアイドル活動をしていると、成人後に追認したとされて、取り消せなくなるケースも考えられます。
アダルトビデオへの出演契約でも法的には同じになります。既に契約しており撮影が終わっている場合であっても取消は可能です。特にアダルトビデオの場合は少しでも不安があれば、まずは一旦、契約を取り消してから考えることもできます。
取り消しの意思は契約した相手に到達した時点で効力が生じます。ですから、親の同意なく契約をしてしまったケースで取り消したいというのであれば、日にちに余裕のある3月30日までに取り消しの意思を伝えることが重要です。
もし4月以降になったとしても、なるべく早く取り消しの意思を表示することです。
法律的には口頭でも取り消しの意思を表示することは可能です。それでも、口頭では『言った言わない問題』が生じてしまうので、LINEやメールなどの証拠に残るかたちで取り消しの意思を伝えましょう。もちろんLINEとメール両方で取り消しの意思を伝えてもまったく問題ありませんし、証拠は多ければ多いほど有利になります。
また、4月以降に、何らかの契約書を突然、強く求められた場合には、慎重に判断したほうが良いかと思います」
【取材協力弁護士】
河西 邦剛(かさい・くにたか)弁護士
「レイ法律事務所」、芸能・エンターテイメント分野の統括パートナー。多数の芸能トラブル案件を扱うとともに著作権、商標権等の知的財産分野に詳しい。日本エンターテイナーライツ協会(ERA)共同代表理事。「清く楽しく美しい推し活 ~推しから愛される術(東京法令出版)」著者。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:http://rei-law.com/