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中村倫也に聞く、刺激をもらった出会いとこれから 「+αをもたらせるような人に」

2022年03月16日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

中村倫也(撮影:伊藤惇)

 人生の門出を祝う“結婚式”。家族、友人、同僚、先輩、元カレ、謎の男……。そして、新郎新婦が集う晴れのイベントの裏では、この日を取り仕切るウェディングプランナーの奮闘と、各々が内に沸々と抱える思いがあったーー。そんな、バカリズムによるオリジナル脚本で大九朋子が監督を務めたコメディ映画『ウェディング・ハイ』が公開中だ。


 今回、リアルサウンド映画部では、本作で流されやすい新郎・石川彰人役を演じた中村倫也にインタビュー。『美人が婚活してみたら』『私をくいとめて』に続く大九監督との関係性や、これまで刺激を受けてきた先輩たちとの出会いを受けて、これからの“なりたい自分”について話を聞いた。


【写真】中村倫也撮り下ろしカット


■中村倫也が結婚式に行ったら?


ーー劇中で結婚式を挙げたことで、結婚式のイメージに変化はありましたか?


中村倫也(以下、中村):あまり結婚式に行ったことがないんですけど、大変だなと思いました。選択しなくてはいけないけど、「これはこういうものです」という決め事が多いことを知りました。


ーー結婚式に行かれると、どんなふうになるタイプですか? 感動して泣いたりとか……?


中村:しませんね(笑)。「おいしいね」って飯食って、「よっ!」って言って。


ーー(笑)。会場では笑いが起きてましたが、撮影中も賑やかでしたか?


中村:スピーチや余興を登場人物同様、役者の皆さんも練習してきていて、それを撮影で見たときは自然と歓声が上がりました。あまり撮影中に素笑いするタイプじゃないんですけど、現場では(皆川)猿時さんのリアクションが細かく、大きく、面白くて。それを見てずっとニヤニヤしていました。


ーー大九監督作品への出演は、『美人が婚活してみたら』『私をくいとめて』などに続き本作が4度目となります。


中村:いろんな現場で「ここちょっと20秒くらいフリートークしといて」みたいなのがよくあるんですが、いつも何しようかなって困りますね(笑)。劇中の前半で式場のことを2人で相談しているときに、モノローグが多かったので、そのバックでしばらくしゃべってた時は、大体話が前進しないトークをやっていたような気がします。多分あまり使われてないと思うけど(笑)。


ーー大九監督の現場はそういうのが多い?


中村:「なにそれ?」みたいなちょっと不思議な動きを求められたり、なかなかカットをかけずに何か出ることを期待しているときがあったり。そうなるとなんかしなきゃって。ほっとけば何かやると多分思われているんでしょうね(笑)。それが大九さんと僕との関係性なんだと思います。


ー-大九監督はどんな方だと思いますか?


中村:なんだかんだすごく乙女なところがあるのかなと思います。大九さんはサバサバしていて、ガハハと笑う人なんですけど、撮影や演出の仕方とか、出来上がった作品を観ても、とても乙女だなと。


ーー脚本はバカリズムさんによるオリジナルです。


中村:読みながら爆笑しました。改めて結婚式というイベントにはこれだけたくさんの方々が参加しているのだと。そしてそれら一人一人にカタルシスと笑いを作れるのはすごいなと尊敬します。


ーー劇中で新郎新婦の上司によるスピーチ対決が繰り広げられますが、中村さんも舞台挨拶などで話をされる場面が多いと思います。その時は、劇中の上司たちのように笑いを起こせたら、内心「よし!」と思ったりしている?


中村:思わないです(笑)。作品の世界観を壊さないことを前提に、基本的には「これ言わなきゃな」ということだけ考えて、観に来てくれたお客さんの前でしゃべるなら楽しんでもらえたらいいなというくらいの気持ちで、現場のノリでやっていますね。


ー-人前で話すのは、どちらかというと得意なほうですか?


中村:「しゃべらせろ」という感じではないけど、やるとなったらそれもエンターテインメントだから、ちゃんとやらなきゃいけないなと思います。やる以上は、人前も慣れているし、なんとなくこういうことを話して、こういう脱線の仕方をしてもありだなみたいに、一応は考えながら。元々は苦手でしたが、台詞がなくても喋れる役者でいたいなと思うし、失敗を重ねた上で、気楽にやれるようにはなってきましたかね。


■中村倫也に刺激をもたらした出会い


ーー今回、主演の篠原涼子さん演じる中越は素敵なウェディングプランナーと出会ってから、同じ仕事に就いています。中村さんにとっても、この人との出会いに刺激をもらったというような存在はいらっしゃいますか?


中村:いっぱいいますね。堤(真一)さん、古田(新太)さん、阿部 (サダヲ)さん、ムロツヨシ。なんでムロさんだけ呼び捨て(笑)。若い頃、『天魔さんがゆく』(TBS系)の現場で、猿時さんに「コメディやりたいんですけど、どうしたら面白いことできるんですか?」っていうアホみたいな質問をした時があったんですけど、猿時さんは優しいから話を聞いてくれて。そんな猿時さんと、何年も経って、今回こういう喜劇を一緒にやれていることを現場で思い出したりして、嬉しかったですね。


ーー当時は皆川猿時さんからどんなアドバイスがあったんですか?


中村:(猿時さんの真似をしながら)「中村くんはかっこいいけどバカっぽい役みたいなのにハマるかもしれないよね」と言ってもらった覚えがあります。でも、“カッコいいけどバカ”という役はなかなか来なくて。カッコいい俳優はいっぱいいるからしょうがないけど(笑)。そういう言葉も心の片隅に残しながら、自分なりに模索してやってきて、いま名前を挙げた他の方々もそうですし、何気なく話したものが、大きな価値観の1つとして残ってたりするのですごくありがたいです。


ーー劇中、笑いどころがたくさんありましたが、演じる側として笑わせるのと感動させるのはどちらが難しいですか?


中村:どっちも難しいですけど、段階が多いのは笑わせるほうじゃないかな。笑いも感動だと思うので、何らかの心が動かせたらいいなと思います。


ーー観る側としてはどんな作品が好みかを教えてください。


中村:観るんだったら暗いよりかは楽しい映画のほうが好きです。と言いながらも、暗い作品もやっていくんでしょうけど(笑)。スリリングとか、ワクワクするとか、笑えるとか、寄り添えるとか、そういうものは好きですね。。


+αをもたらせるような人になりたい


ーー2021年は『珈琲いかがでしょう』(テレビ東京系)や『コントが始まる』(日本テレビ系)などのドラマから『ファーストラヴ』や『騙し絵の牙』など映画にもたくさん出演されていました。去年の出演作を通して、俳優として改めて考えたことや、変化はありますか?


中村:良いのか悪いのかは別として、年々、無駄な力が抜けてきているのは感じます。ダンスとかアクションをたまにやる時に、必要な場所にだけ必要な力みを持ってコントロールすることの大切さに気付いて。“達人”って無駄な力がないんだなとすごく思いました。表現者や人前に立つ身として、余計な力が抜けていくというのは良いことだなと思います。主役から脇役、今回のような強烈キャラの真ん中といういろんな場所をやってきたから、適度な力の込め方というのは身体が分かってきたのかなという感覚はありますね。


ーー2022年にどう繋げていきたいというのはありますか?


中村:2022年は頑張らないといけないことが多いですね。嫌だな(笑)。


ーーそれは、新しいこと?


中村:今年は自分の経験にないことが多いので、ちょっと頑張らないといけないですね。キャリアアップとかは考えていなくて、結果を出すとか、称賛されるということではなく、ものづくりの質として頑張らないといけないことがいっぱい……疲れる、頑張るって(笑)。


ーーバランスを立てて出演作とかを決められているんですか?


中村:そんなに意識して考えていないですけど、たまには頑張らないとねというのがありますね。まぁ、頑張るわ(笑)。


ーー俳優としてではなく、人としてこういうふうになっていきたいというビジョンはありますか?


中村:伝え方がうまくなりたいです。年齢的にも年下の共演者やスタッフが増えて、僕自身が周りを見ていて気付くこともたくさん増えてきて。もうちょっとこういうふうにしてあげた方がとか、こういう気付きを与えてあげた方がとか、自分がしてきてもらった故に思うことがあるんです。でも、その伝え方ってすごく難しい。作品は輪で作るものですが、育てないといけない部下がいるわけでもないし、何か思うことがあるときに伝える必要がなかったりもするけど、どうせなら一期一会だなとも思いますし。自分がしてきてもらったように、何か伝えられたらいいなと思います。「影響力」とか「説得力」という言葉にもなるかもしれませんが、関わった人に少しでも+αをもたらせるような人になりたいです。


(取材・構成=大和田茉椰/文=二瓶花)