2022年03月14日 10:21 弁護士ドットコム
「義母の嫌がらせと夫のマザコンぶりにもう耐えられません」という相談が弁護士ドットコムに寄せられています。
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相談者は夫と子ども、義母と同居していますが、トラブルが相次いでいます。義母は「家にある私物を壊し、家事を一切手伝わない」そうで、相談者は「不妊治療を強制された」ことにも納得がいかないようです。
何より我慢できないのは「マザコンな夫は義母を庇い、私のことを家政婦扱い」すること。しかし、夫に離婚を切り出しても拒否されてしまいます。
相談者は離婚し、夫と義母から慰謝料を請求したいと考えています。浅野格之紳弁護士に聞きました。
ーー義母との不仲を理由に夫と離婚することは認められるのでしょうか
義理の親とのトラブルがきっかけとなった離婚の相談は一定数ありますね。配偶者が理解してくれて、味方になってくれれば良いですが、配偶者にとっては自分の親なので現実的には味方になってくれるケースは少ないように思います。
結論から申し上げると、「ご相談にあるような義母との不仲だけでは離婚することは難しく、義母との不仲に対する夫の対応と相応の別居期間が継続することで離婚が認められる場合がある」という回答になります。
ーーどのような場合、離婚は認められるのでしょうか
民法に定められている離婚原因の一つに「婚姻を継続し難い重大な事由」があります。離婚は夫婦間のことですので、義理の親との不仲が生じていても、婚姻関係に影響が出ていないような場合には「婚姻を継続し難い重大な事由」は認められません。
しかし、義理の親との不仲が原因となって婚姻関係に影響が生じているような場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由」が認められる可能性があります。
ーー相談者の場合はどう考えられますか
ご相談者は、義理の母から私物を壊されたり、不妊治療を強制されたり、家政婦扱いされたりなど酷い扱いを受けています。それにもかかわらず、夫は自身の母を庇うだけでなく、母と一緒になってご相談者を「家政婦扱い」しており、夫の対応は本当に酷いものだと思います。
しかし、裁判所は夫婦が同居している場合、なかなか婚姻関係の破綻を認めてくれません。
そのため、現実的には、夫と別居し、義理の親との不仲及びそれに対する夫の不適切な対応があったことに加えて、相応の別居期間が継続していることを主張することで「婚姻関係を継続し難い重大な事由」を裁判所に認めてもらうことになるでしょう。
ーーもし認められる場合、夫は有責配偶者となるのでしょうか。今回の事例では、慰謝料を請求できる根拠はあるのでしょうか
有責配偶者とは、もっぱら又は主として責任のある配偶者をいいます。今回のケースでは、夫の言動だけでなく、相応の別居を継続することによって婚姻関係の破綻が認められることになると思いますので、夫が有責配偶者と認められる可能性は小さいと思います。
また、夫の言動をどこまで立証できるかという問題はありますが、夫の言動を立証できるのであれば慰謝料を請求できる可能性はあります。もっとも、慰謝料が認められる場合でも、金額は不貞や暴力と比べると低額になるでしょう。
ーー相談者は夫だけではなく、義母に対しても慰謝料を請求できますか。
義母の言動だけが原因となって離婚に至るわけではありませんので、義母に対して離婚の慰謝料を請求することは難しいです。
義母に対して慰謝料を請求するためには、義母の行為自体が不法行為に当たるような事情が必要となるでしょう。ご相談者は義母から私物を壊されたり、不妊治療を強制されたりしたということですので、義母の言動の悪質性、ご相談者が被った損害・精神的苦痛の程度によっては慰謝料の請求ができる場合はあると思います。
【取材協力弁護士】
浅野 格之紳(あさの・かくのしん)弁護士
弁護士登録以降、離婚を主とした家事事件に注力。弁護士法人とびら法律事務所は、累計4000件以上の相談実績を誇る。早期解決を目指し、裁判所を使わない協議案件に力を入れている。
事務所名:弁護士法人とびら法律事務所
事務所URL:https://www.tobira-rikon.com