2022年03月10日 09:51 弁護士ドットコム
コロナウイルスの感染、発症は、身体的な後遺症のみならず、仕事や人間関係など様々な方面に影響をもたらしています。中でも同じ空間で長い時間を過ごすためか、夫婦関係にも暗い影を落とすことがあるようです。
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弁護士ドットコムに「コロナに感染して以降、夫に無視されるようになった」という女性からの相談が寄せられています。約1年間、夫は妻の作った料理は食べず、洗濯物も別にしているそうで「現在は家庭内別居中」とのことです。
夫は相談者のことを「菌を扱うように接し、顔を合わせれば『鬱陶しい』『離婚してくれ』と精神的に追い詰めるような態度を取ってきます」といいます。夫の態度もストレスな上、相談者はコロナの後遺症と思われる症状にも苦しめられています。
しかし「子どものために離婚はしたくない」と考えています。夫が離婚を望んだ場合には、離婚は認められてしまうのでしょうか。伊藤真樹子弁護士に聞きました。
ーー夫婦の一方が離婚に応じたくない場合でも、離婚請求が認められる可能性はあるのでしょうか
離婚について夫婦が合意していない状況で、一方からの離婚請求が認められるためには、法律で決められた離婚理由が存在していることが必要です。これを法定離婚事由と言い、民法770条で具体的に定められており、本件では、「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」にあたるかどうかが問題となります。
この点、コロナに感染したことは、相談者の方の責任ではありませんし、コロナに感染したからといって婚姻を継続するのが難しくなるということは通常はあり得ないことです。
従って、コロナに感染したという事実をもって夫からの離婚請求が認められることは考えられません。
ーー家庭内別居であることは、どのように評価されるのでしょうか
また、現在は家庭内別居の状態とのことですが、相談者の方は料理を作っているのに夫が食べないなど夫が一方的に共同生活を拒否している状態のようですので、この状態をもって離婚請求が認められる可能性も低いと思われます。
ただ、現在の状況が何年も継続した場合は、そのことが離婚事由と評価される可能性は出てきます。どのくらいの年数かという点については、家庭内別居の具体的態様や、お子さんの年齢、相談者の方の経済状況など諸般の事情が総合考慮されることになります。
【取材協力弁護士】
伊藤 真樹子(いとう・まきこ)弁護士
2008年に弁護士登録後、離婚や相続などの家事事件、債権回収などの民事事件を500件以上取り扱う。「何かあったらすぐに相談に行ける、身近な法律事務所」をモットーに法律事務所を運営。
事務所名:仙川総合法律事務所
事務所URL:http://sengawa-law.jp/