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【レースフォーカス】ミルとリンス、不本意な決勝結果となるも進化したトップスピードを証明/MotoGP第1戦カタールGP

2022年03月08日 21:01  AUTOSPORT web

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チーム・スズキ・エクスターのジョアン・ミル(#36)とアレックス・リンス(#42)
チーム・スズキ・エクスターのジョアン・ミルとアレックス・リンスにとって、MotoGP開幕戦カタールGPは振るわない結果に終わった。ただ一方で、確かにトップスピードが向上したことを証明してみせた。

 カタールGPでスズキとしてニュースの一つだったのは、チームマネージャーの発表だろう。リビオ・スッポ氏がチームマネージャーとして決定したのである。2020年シーズンを終えた後、当時のチームマネージャーだったダビデ・ブリビオ氏がチームを離れ、このために2021年シーズンは主にその任をプロジェクトリーダーである佐原伸一氏が担っていた。新たにチームマネージャーに就任したスッポ氏は過去にドゥカティのプロジェクトリーダーやレプソル・ホンダ・チームの代表を務めている。

 そうして始まった開幕戦のレースウイークで、スズキは注目のマニュファクチャラーであり、決勝レースではふたりのライダーは優勝や表彰台争いに絡んでくるだろうと思われていた。予選ではミルが3列目8番グリッド、リンスが4列目10番グリッドだったが、スズキはこうしたポジションから後半に追い上げるレースを度々見せており、それはスズキの強みでもあった。3番手フロントロウを獲得したマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)なども、予選後の会見で最速ライダーについて問われ「今週全体で言うと、スズキのライダー」と答えていた。

 しかし、決勝レースは予想外の展開となった。レースのほとんどをミルは6番手、リンスは7番手で走行し、そしてそのままフィニッシュした。その理由は、それぞれ違うものだった。

 レース後、ミルは「がっかりだよ、もっといい結果を期待していたのに。スタートはよくて、1周目もよかったんだけど、そのあとリヤグリップに問題が出始めたんだ」と説明した。そのトラブルは、エンジンパワーが上がったからなのか、電子制御が完全ではなかったからなのかと問われると「それが原因ではないと思う」と答えている。

「ただ、昨年よりもレースペースがかなり速かった。僕たちのバイクはよくなったけれど、ライバルたちも同じように進化しているってことだ。難しいな。そのアドバンテージを手に入れる前にはいつも、タイヤなど全部をケアしていたんだ。そしてレース終盤で強くなれた。でも今回は、グリップが全くなかったんだ」

 片やリンスは「(前を走る)ジョアンをとらえようとギャップを詰めようとしたけれど、フロントが限界に来てしまった」と、フリー走行では起こらなかったというフロントタイヤの問題について語っている。

「僕たちが持っていた問題は、フロントに自信を持って走れなかったということなんだ。データを見ると、ブレーキング・ポイントが通常よりも5メートルも前だった。これはすごく大きな問題だ」

「もう一つの大きな問題は、予選だね。10番手からスタートすることになってしまった。昨年よりも少しは改善したけれど、次戦に向けてさらによくしていかないといけない。後方からのスタートは楽じゃない」

「幸い、いいエンジンがあるから、ストレートでオーバーテイクできる。バイクは少し、よくなっているよ。でも、僕としてもジョアンとしても、がっかりな結果だ。僕たちはいいオフシーズン、プレシーズンを過ごしてきた。もう少しいい形でスタートできると期待していたんだ」

 そうふたりそろって肩を落した。しかし、スズキのカタールGPはそればかりではなかった、と言っていいはずだ。リンスが語るように、スズキが今季、エンジンパワーを向上させてきたことをレースウイークで証明したのは確かだった。

 数字で確認しよう。トップスピードについては、2021年のカタールGP、ドーハGP(カタールGP同様にロサイル・インターナショナル・サーキットで開催)と比較すると、平均して約8km/h上がっている。また、今週末のセッションでのトップスピードの順位で見ると、おおよそ上位から6番手付近をキープしていた。決勝レースでは、優勝したドゥカティ デスモセディチGP21を走らせるバスティアニーニを抑えて、ミルが記録した357.6km/hが最高速のトップである。

 もちろん、レースはトップスピードが全てではない。スズキのGSX-RRは全体的なバランスに優れたバイクであり、だからこそそれを大きく崩すことがないよう2021年の開幕前公式テストから時間をかけ、レギュラーライダーも含めて2022年に向けたエンジン開発に取り組んできたのではないだろうか。スズキが向上させたトップスピードが、今後、どのようにアドバンテージとなるのか。今季、スズキは異なるレース展開を見せるのかもしれない。