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【レースフォーカス】3位表彰台獲得のポル・エスパルガロ、2022年型RC213Vに好感触/MotoGP第1戦カタールGP

2022年03月08日 16:20  AUTOSPORT web

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レプソル・ホンダ・チームのポル・エスパルガロ(#44)とマルク・マルケス(#93)
3月6日、2022年シーズンの開幕戦カタールGPで、レプソル・ホンダ・チームのポル・エスパルガロが3位表彰台を獲得した。チームメイトのマルク・マルケスはフロントロウの3番グリッドからスタートし、5位でフィニッシュしている。これはホンダにとって、復活ののろしとなるのだろうか?

 エスパルガロは2列目6番グリッドからスタートを切り、1コーナーまでの短いストレートでポールポジションのホルヘ・マルティン(プラマック・レーシング)、2番グリッドのエネア・バスティアニーニ(グレシーニ・レーシングMotoGP)といったふたりのドゥカティライダーを抜き去って2番手で1コーナーに入った。1コーナーの立ち上がりでホールショットを奪ったマルケスのイン側につけると、2コーナーまでに先行し、トップを奪ったのである。

 その後しばらく、エスパルガロはレースをリードし続けた。中盤には1分54秒中盤のタイムで周回し、それを見たブラッド・ビンダー(レッドブルKTMファクトリー・レーシング)は「これはついていくのが難しいな」と思ったという。エスパルガロは少しずつ後方を引き離し、レース中盤には1秒以上のアドバンテージを築いていた。

 ただ、エスパルガロにとってはこの展開は想定外だった。レース前には集団で走り、タイヤや燃費をセーブできるだろうと考えていた。ところがレースリーダーとなったことで、「タイヤの限界まで攻め、エンジンの限界まで攻めることになった」と言う。フロント、リヤにソフトタイヤを選択したエスパルガロは、終盤にリヤタイヤが苦しくなるとわかっていた。対して、残り5周でエスパルガロをかわしたエネア・バスティアニーニ(グレシーニ・レーシングMotoGP)は、リヤにミディアムタイヤを選択しており、序盤にタイヤを温存したことが奏功したのだと語っている。

 エスパルガロはバスティアニーニにかわされたメインストレートの先の1コーナーでブレーキングに失敗し、オーバーランを喫したことでビンダーにもかわされ3番手に後退。けれど、そのポジションを守り切って3位でチェッカーを受けたのだった。

「バイクにポテンシャルを感じている。すべてのレースで今日のようなレースができると感じるんだ。カタールではフィーリングもポジションもよかった。ここで16ポイントを獲得して、(次戦)マンダリカに行ける。朝起きて、いつも夢に見ていたチャンピオン獲得を、やっと達成できると思う。ホンダとともに戦っていくよ」

 決勝レース後の会見で、エスパルガロはそう笑顔を浮かべた。

 2020年、2021年シーズンと2年間にわたって苦しい戦いを続けてきたホンダは今季、バイクに大きな変更を施した。扱いやすさとともに、かねてより改善が求められていたリヤタイヤのグリップ向上にも注力した。

 エスパルガロは「このバイクは僕が求めていたものだ。よりきれいに走れるバイクで、結果を出すために力を入れすぎなくてもいい」と、バイクについて好感触を得ていることを明かした。

 エスパルガロの躍進の要因の一つとして、彼のライディングスタイルが挙げられるだろう。エスパルガロはリヤブレーキを多用するライダーで、だからこそリヤのグリップに欠けた昨年までのバイクで苦戦を強いられていた。上述のように、今季、リヤのグリップが向上したことで、エスパルガロは自身のライディングスタイルを存分に使って走ることができるようになった。

「マルケスのライディングスタイルではもう少しスムーズにバイクに乗ることが必要なのかもしれないけれど、僕は違う。もっとアグレッシブに乗ることができる。というのも、僕たちは(昨年よりも)リヤグリップ、リヤのトラクションを得ているからだ。そのためバイクの剛性が上がったので、僕はさらにフロント、リヤをプッシュできるんだ」

「確かに、以前よりもフロントは少し軽くなったというか、グリップが軽減されたというか。ただ、(自分のライディングスタイルのように)リヤで走ると、バイクはさらに安定するようになったんだ。バイクの揺れはソフトなものではなく、さらにアグレッシブに振られる。僕はそれが好きなんだ。僕はこういう風にいつも走ってきた。僕はホンダがプレシーズンで持ち込んだバイクがとても好きだし、今のホンダ(のバイク)もとても気に入っている。このバイクにはまだ開発、改善が必要だけど、とても満足している」

 チームメイトのマルケスはどうだろうか。

「限界はまだわからない。この週末でまだ僕はクラッシュしていないからね(※その後、日曜日のウオームアップ・セッションで転倒を喫した)。いつもは1回は転倒するのに! ただ、このバイクの乗り方は違っているんだ。頑張って攻めようとすると、遅くなることがある。だから、予選では限界がどこにあるのかわかりづらいことがあるんだ」

「たとえば、僕のファステストラップでは、スムーズに走っていて速かった。セクター3で『よし、もっと攻めよう』と思って行ったら、遅くなっていた。僕のミスだ。なので、まだコーナーに入っていくところを理解するのがややこしい。でも、コーナーの中間と立ち上がりは、昨年よりもよくなっているよ」

 と語っていたのは、3番手を獲得した予選後の会見でのこと。マルケスは、2022年型バイクでコーナーエントリーでの限界点について探っているところがあるようだった。ふたりのコメントの違いはおそらく、一つには上述のライディングスタイルの違いからくるものだろう。

 マルケスの体調面についても触れておこう。予選後の会見の中では「昨年は痛みがあり、右肩の状態にいらだっていたので悪夢だったよ。今日はいい状態で起きられたし、明日も痛みがないことを願う。週末を通して思うように走り、フィジカルコンディションに影響されることがない、というのはまた違った生活だね」と、体の状態に問題がないことを説明していた。マルケスがフィジカルの懸念を完全に払しょくし、新たなバイクに完全に適合すれば、マルク・マルケスの完全復活となるのだろう。