2022年03月07日 19:41 弁護士ドットコム
ロシア軍によるウクライナ侵攻をめぐって、国際的な非難が高まる中、SNS上では、ロシア人に対する誹謗中傷・嫌がらせも広がっている。
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日本国内も例外ではない。NHKによると、千葉市で料理店を営むロシア人のSNSには「母国に帰れ」という書き込みがあったという。また、日本に住むロシア人YouTuberのコメント欄にも嫌がらせがあったようだ。
実際にツイッターを検索してみると、「ロシア人は日本から出ていけ」「ロシア人を日本から追い出せ」といった言葉が少なからず投稿されていることがわかる。ここには書きたくないようなひどい投稿も見つかる。
日本では、2016年から「ヘイトスピーチ解消法」が施行されているが、在日ロシア人に対して「出ていけ」などというような投稿は問題ないのだろうか。神原元弁護士に聞いた。
――そもそも、ヘイトスピーチ解消法の対象に「ロシア人」は入る?
ヘイトスピーチ解消法は本来、在日コリアンを念頭においた法律ですが、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動は許されない」と書かれています。
したがって、ロシア人のほか、ロシア人と日本人との間の子ども、帰化した人も「本邦外出身者」に含まれるので、彼・彼女たちに対する不当な差別的言動も「許されない」ということになります。
――具体的にはどのようなものが「不当な差別的言動」にあたる?
たとえば、著しく侮辱するようなものです。「ロシア人は●●だ」「日本から出ていけ!」「日本から帰れ!」というものも対象範囲に入ります。もちろん「ロシア人を殺せ!」というのはもってのほかでしょう。
――戦争反対やロシア政府批判とはどう区別する?
政府批判と人種差別はまったく違うものです。「ロシア政府は戦争をやめろ」「ウクライナから軍を引き上げろ」と「日本から出ていけ」というのとは、明確に区別されるでしょう。
――この法律には罰則はありませんが、国はどのような対応をとるべきか?
法務省は聞き取り調査・インターネット調査をおこなうべきです。そのうえで、実際に差別的言動を確認できた場合、政府はヘイトスピーチ解消法7条、さらに言えば人種差別撤廃条約2条にもとづいて、記者会見を開き、国として差別的言動を許さないという声明を出して、差別的言動を終了させる義務を負っていると考えられます。
国際的な義務として、緊急にやらないといけないことだと思います。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=428AC0100000068
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinshu/conv_j.html