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「報道ありがたい」モルドバ大使館に聞いた、ウクライナ難民の現状

2022年03月07日 14:00  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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ウクライナから難民が押し寄せているのは、ポーランドだけではない。ウクライナと国境を接するモルドバも同じだ。UNHCR(国連高等難民弁務官事務所)によると、モルドバには3月5日時点で8万4067人のウクライナ難民が到着しているという。

外務省のサイトによると、国の面積は九州よりやや小さい程度。人口は約264万人で、民族はモルドバ人が75.1%で、ウクライナ人も6.6%いる。首都は「キシニョフ(キシナウ)」である。2020年の1人あたりGDPは4,523ドル(日本は同40,089ドル)だった。

日本とモルドバとの貿易額は輸出6.6億円・輸入78.6億円と小規模だが、ルーマニアへの日系企業進出とともに、注目を集めている国でもある。

モルドバは1991年にソ連から脱退したが、モルドバとウクライナの国境にありロシア人移住者が多かった「トランスニストリア地域」は分離独立を宣言。1992年にモルドバ側と、トランスニストリアやそれを軍事支援するロシア側とで武力衝突が発生した。その後、停戦合意に至ったもののロシア軍が撤退せずに駐屯し、事実上モルドバの支配が及ばないエリアになっているという特殊事情がある。(※このあたりの事情を詳しく知りたい方は在モルドバ日本国大使館の発信している「モルドバ概観」が参考になる。)

この事態にモルドバはどう対処しているのか? 駐日モルドバ大使館に取材を申し込んだところ、日本語でのメール取材に対応してくれた。(取材・文:昼間たかし)

モルドバ大使館「(ウクライナ難民に)無料のSIMカードを提供」

――モルドバに来たウクライナ難民の数は、現在どうなっていますか?

モルドバ大使館:ウクライナでの戦争が始まった2022年2月24日から3月4日17時までに、17万8918人のウクライナ市民が国境を越えてモルドバに入り、その内7万3499人が我が国に滞在することを決めました。内2万7563人は未成年者でした。

――今回、モルドバの政府ではどのような対策を実施しましたか?

モルドバ大使館:私たちがこの状況に直面した直後の数時間から、モルドバ当局は、市民社会組織およびモルドバ市民とともに、国境を越える難民の円滑な流れを促進し、彼らの宿泊施設の用意、衛生的な製品と食糧の提供、ウクライナに残された親戚と連絡をとる機会、医療等、これらの困難な状況を乗り越えるために必要な最小限のことするためにあらゆる措置を講じました。

また、国境検問所はスタッフの追加により強化され、さまざまな予防接種証明書やPCR検査の証明書提出は省略しました。また、親が同伴であれば、子供はパスポートなしでも入国可能としました。

――ほかにはどのような特別措置を実施していますか?

モルドバ大使館:彼らの滞在と雇用を規制するいくつかの規定は除外または自由化されました。また、モルドバの携帯電話会社が、国境で無料のSIMカードを提供しています。医療を始め、ボランティアによる活動も実施され公共施設の提供も行われています。また特別情報サイト「dopomoga.gov.md」も作成され、難民はモルドバでの滞在に関連するさまざまな情報を知ることができます。

社会全体が多大に取り組み、それは我が国の市民たちが並外れた人間としての高い資質を持っていることを示したことに、大きな誇りを感じています。

――難民支援のため、モルドバ政府が必要としているものは何ですか?

モルドバ大使館:現在必要とされているものは次のとおりです。

1.医薬品、医療用品、特定の医療機器。
2.緊急事、災害事、戦争事の時に使用する機器と消耗品:テント、移動式キッチン、発電機、ベッド、マットレス、枕、暖かい服、靴、食べ物など。
3.治療、食事などの経済的支援。

すでにいくつかの国による支援も到着しはじめています。

――今回の事態が、モルドバ経済に与えた影響を教えて下さい。

モルドバ大使館:戦争以前から、モルドバの経済は新型コロナウイルスの流行、エネルギー危機の影響を大きく受けています。2021年末のガスと燃料の価格高騰により、公共料金、光熱費、食料価格が大幅に上昇しました。これに対する予算も割いている中で、難民の流入は国家予算に深刻な負担をかけるでしょう。そのため、既に友好国に支援を求めています。

また、モルドバ政府では難民支援のために海外からも、送金可能な特別口座を開設しました。日本では、日本のボランティアの方々の支援により、モルドバのウクライナ難民への寄付のためのサイトも開設されました。

――日本では、モルドバ関連の報道が少ない印象です。

モルドバ大使館:3月3日に、NHKがモルドバのこの状況に関するレポートを放送してくれました。モルドバの難民危機についてより多くの情報を伝えて欲しいと思っているので、このインタビューにもとても感謝しています。

大使館では毎日、日本の皆様に向け、ソーシャルネットワークやウェブサイトを通じて状況の進展、モルドバ共和国当局者の公式声明、およびモルドバにいるウクライナ難民のために自発的に寄付を行っていただく為の方法について発信しているのでご覧になってください。

モルドバ大使館Facebookページ:https://www.facebook.com/MoldovainJapan

ドゥミトル・ソコラン在日モルドバ大使Twitter:https://twitter.com/Dumitru_Socolan

ーー最後に。モルドバ特有の問題としてトランスニストリアの問題があると思いますが、
今回の戦争は、この問題にどのような影響を与えると考えていますか?

モルドバ大使館:トランスニストリア地域の問題は既に30年以上進展がありません。これまで、モルドバを含め、トランスニストリア地域、OSCE、ロシア連邦、ウクライナ、EU、アメリカによる話し合いが持たれてきましたが、ロシアとウクライナの戦争により今後の予測は不可能です。 確かなことは、モルドバ政府が国際的に認められたモルドバ共和国の主権、領土保全、国境を尊重しつつ、トランスニストリア問題の交渉プロセスにおいて政治的解決を支持し、主張し続けるということです。