2021年シーズンの全日本スーパーフォーミュラ選手権では7戦中3勝と圧倒的な強さを見せつけ、開幕戦から一度もポイントリーダーの座を明け渡すことなく、最終戦を待たずシリーズタイトルを手にした野尻智紀。一方、スーパーGTでは福住仁嶺とともARTA NSX-GTのステアリングを握り、第6戦と第7戦で連勝を遂げる速さを見せるも、4ポイント届かずシリーズランキング2位に終わった。
迎えた2022年、スーパーフォーミュラではディフェンディングチャンピオンとして。そしてスーパーGTでは引き続き“挑戦者”としてチャンピオンに挑む立場となる野尻に、タイプSボディとなったホンダNSX-GTの手応え、そして2022年シーズンに向けた新たな目標を聞いた。
カラーリングによっても見え方が変わるのでと前置きした上で「戦闘力に溢れているフェイスだと思いますね」とタイプSのフォルムを評した野尻。
前後のバンパーやボンネットの形状が変わっただけではなく、全長が45mm伸びたタイプSの乗り味について尋ねると「すごく変わりました。はたから見たらそんなに大きな変更ではないように見えるかもしれませんが『意外と変化があるんだ』という印象です」と2021年モデルからの変化を語った。
「全長が伸びたおかげなのかもしれませんし、もっと違う“小さな変化”の影響も出ているとは思います。そして、一見タイプSへの変更点って“フロント周りだけ”にしか見えないかもしれませんが、リヤにも変化があります。その影響もあってか、非常に乗りやすいクルマだなという印象ですね」
「最初の開発段階からタイプSの素性の良さというものはすごく感じていました。その素性の良さを引き出し、いかに速くできるかというところを考えて、テストするというのが今やるべきだと考えています。そして、タイプSのここだ! という“ゾーン”みたいなところもわかってきたのかな」と手応えを語った野尻。
これは「あくまで現時点(編集注:取材は3月4日、鈴鹿メーカーテスト終了後に実施)での印象ですが」と前置きをした上での話だったが、実際に3月3~4日に鈴鹿サーキットで行われたホンダ主催のGT500メーカーテストにおいて、初日午後のセッションでトップタイムをマーク。さらに初日午前は2番手、2日目午前は4番手、2日目午後は2番手と、全セッションで上位をキープできたことでも野尻はポジティブな思いを抱いたという。
「ここ数年、開幕前のテストの段階で、そこまで内容に充実度をもって過ごせていた訳ではなかったです。そういった意味では、今のところすごく順調に進められていると思います。ただ、それも本戦の気候・コンディションによって大きく変わることも予想されるので、ぜんぜん気は抜けません」
「ただ、現時点ではタイプSの速い走らせ方とか、そういった部分が少しづつ、ドライバーとしても、チームとしても見えてきているのではないかな、という状況ですね」と、タイプSの手応えを語った野尻。
そんな野尻には2022年シーズンに向けてスーパーフォーミュラ連覇、そしてスーパーGT GT500クラスとのダブルタイトル獲得を期待する声も多い。そんな期待の声に対して野尻は迷いのない言葉で答える。
「スーパーフォーミュラはもちろん2連覇を目指すというところは明確です。さらに、スーパーGTは昨年ランキング2位で、かなり悔しい思いをしました。2022年はなんとしてでもタイトルを獲らないといけないシーズンです」
「よく言われるスーパーGTとスーパーフォーミュラのダブルタイトルというものに対して、今までは『ダブルタイトルを狙います』と明言したことはないのですが、2022年シーズンについては、『ダブルタイトルを狙わなければいけない』と僕自身思います」
「スーパーGTとスーパーフォーミュラ、それぞれでARTAとTEAM MUGENで別のチームですが、2チームがお互いにそれぞれのレースシリーズでタイトルに向けて本気で戦ってくれているので、僕もダブルタイトルというものをしっかりと言葉にしながら、そこに向かって戦い続けたいですね」
スーパーフォーミュラを制し、50年続く国内トップフォーミュラの歴史にチャンピオンのひとりとしてその名を刻んだ野尻智紀。次なるステージに向けた戦いからは、引き続き目が離せない。