FIA国際自動車連盟は、ロシア人ドライバーによる国際選手権への出場資格を認めるが、その条件としてレースを「中立的な立場」で戦い、ロシア国旗等の使用を禁じることを決定した。
3月2日に開催されたWMSC世界モータースポーツ評議会の緊急会合で承認されたこの決定により、WEC世界耐久選手権などのスポーツカーレースで活躍するロマン・ルシノフや元F1ドライバーのダニール・クビアト、GTワールドチャレンジ・ヨーロッパなどに参戦しているティムール・ボクスラフスキーら、ロシア人ドライバーが“FIAフラッグ”の下でレースに参加することが可能となった。
ロシアによるウクライナに対する侵攻を継続する中で制定された同方針は、ベラルーシ人ドライバーにも適用される。
FIAは「ロシア/ベラルーシの国家的シンボル、色、旗を(ユニフォーム、装備、クルマなどに)表示すること、ならびに国際大会やゾーン大会で国歌を演奏してはならない」と声明で述べている。
FIAの裁定はロシアとベラルーシ出身のアスリートが特定のスポーツに参加することを禁止したIOC国際オリンピック協会の勧告とは完全には一致していない。
FIAのモハメド・ビン・スライエム会長は次のように述べた。
「スポーツと平和のためにこれらの措置を決定するにあたって迅速に行動してくれた理事会メンバーに感謝したい。我々はウクライナ自動車連盟(FAU)のレオニード・コスチェンコ会長と、同国内のより幅の広いFIAファミリーと連携している」
「今日決定した措置は、ウクライナにおけるFAUの権威を認めるものであり、IOCによって最近行われた勧告に沿うものだ」
FIAの決定に基づき、ロシアとベラルーシのドライバーは2022年の後半にマルセイユでレースが予定されているFIAモータースポーツゲームなどの国際大会に“ナショナルチーム”として参加することは禁止される。
また、同二カ国で開催されるすべての国際レースは、追って通知があるまで中断されている。ソチでのF1ロシアGPと世界ツーリングカー・カップのWTCRレース・オブ・ロシアの開催キャンセルが決まるなか、スポーツカーレースは現在のところ影響を受けていない。
■Gドライブ・レーシングを率いるルシノフは沈黙を守る
一方、火曜日に下された裁定が今年のWECとELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズ、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権でのプログラムを予定しているGドライブ・レーシングの取り組みに影響を与えるかどうかは定かではない。
同チームはクルマにロシアを連想させる色を使用しているわけではないが、『Gドライブ』ブランドを展開するガスプロムネフチ、およびその親会社である国営企業のガスプロムはアメリカなどから制裁措置を受けている。
Gドライブ・レーシングのプログラムを管理しているルシノフから、現在のところメッセージに対する返答はなく、同チームが置かれている状況は不透明なままだ。
FIAの決定は2月28日に予定されていたル・マン24時間レースのエントリーリスト発表を延期させた理由であると考えられており、当初は複数のドライバーとチームが問題視されていた。
「ご存知のようにFIAは悲しみとショックを持ってウクライナの展開を見守っており、現在の状況に対する迅速かつ平和的な解決を望んでいる」とベン・スレイエム会長は付け加えた。
「私たちはロシアのウクライナ侵攻を非難し、同時にウクライナでの出来事によって苦しんでいるすべての人々に想いを寄せている」