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「個人事業主でシングルマザーなんて無理だよ」否定された衝撃…頼れる弁護士に出会うまで

2022年03月02日 10:21  弁護士ドットコム

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離婚に至る経緯は人それぞれですが、きちんと話し合って円満に成立、とはなかなかいかないもの。配偶者の浮気や不倫が原因なら慰謝料が発生し、子どもがいるなら親権の問題、また養育費についての取り決めなども避けられません。


【関連記事:【前回はこちら】「女性に呼び出された」日曜朝8時、堂々と自宅を出た夫…私が離婚を決意した瞬間】



話し合いで離婚できなければ、家庭裁判所での調停や裁判まで進むことも。実際に離婚訴訟を起こすことになった私の体験をお伝えします。(ライター/内田聡子)




 【前回まで】夫がLINEで生命保険の外交員の女性との親密なやりとりをしているのを発見。子ども(6歳)とともに別居し、離婚することを決意しますが、さまざまな壁に直面します。




●無料法律相談でわかったこと→弁護士も様々!

保険外交員の女性との不貞疑惑から離婚を決意した時、子どもはまだ6歳でした。



インターネットには離婚にまつわる記事が多くあります。しかし、それを読んでも離婚できるかどうか、また財産分与や親権、養育費についてなど、「私のケースはどうなのだろうか」と疑問がたくさん湧いてきました。



そこで、弁護士に相談してみることにしました。私が住む市では、市が運営する男女共同参画センターでは、弁護士や司法書士による無料の法律相談を行っており、予約は先着順です。



時間は一回につき30分、別室で弁護士と一対一で話ができます。プライバシーが確保されていることにホッとしました。弁護士の指定などはできず、誰と話すかは当日までわかりません。



最初に会ったのは50代くらいの男性の弁護士で、私が財産分与について質問しようとすると「個人事業主でシングルマザーなんて無理だよ」といきなり否定され、衝撃を受けました。それ以降も「子どものことを考えたら」など終始離婚そのものに反対され、私はろくに意見も口にできないまま、時間が来てしまいました。



そこで、モヤモヤを感じた私はもう一度、市の無料相談を予約してみたのです。



次の回に会ったのは私と同じ40代くらいの女性弁護士で、このときは「確実に不貞行為があったとわかる証拠がない限り、慰謝料は難しい」「仕事の有無や収入ではなく、主に子の世話をしていた人が親権を得る」など、具体的な意見をもらえて心強かったです。



その次に会ったのはまた同世代と思われる男性の弁護士で、「財産分与ではこんな一覧表を作ればいい」と教えてくださり、参考になりました。また、「裁判になればそれぞれが抱える負債についてはそれぞれの負担になる」など貴重な情報も教えてくださって、相談してよかったと思いました。



弁護士に実際に相談してみてわかったのは、弁護士と一括りにはできず、同じ事実に対しても様々な見方があること、より現実に近い話が聞けること、具体的な行動を考えられることです。インターネットの記事でははっきりしない点について理解できたのは、本当によかったと思います。



●法テラスの相談会にも参加し、運命の再会

男女共同参画センターでの無料法律相談が終わった後、法テラスが主催する相談会にも申し込みました。いろいろな弁護士がいるとわかったので、今後もし依頼する必要が出てきたときの参考にしようと思ったのです。



実際に話さない限りどんな人かはわからないため、無料相談は積極的に利用しました。法テラスでの相談も、1回につき30分、3回まで利用できて、別室で話をします。



そこで再会したのが男女共同参画センターでもお会いした40代の男性弁護士でした。前回の相談でもらったアドバイスを元に財産分与の一覧表を作っていた私はその場で見てもらい、また婚姻費用や養育費の決め方について、調停では最終的に裁判所が作成した算定表(両親の収入、子どもの年齢や人数によって目安となる基準)で決まることなども教えてもらいました。



実際の状態に即した話をしてくださるところが信頼できて、これ以降も調停でつまずくと事務所で相談料を払って話を聞いてもらうようになります。離婚訴訟を起こすと決めたときに、正式に代理人を依頼しました。



●離婚調停と婚姻費用分担請求調停を申し立てる

別居の準備を進めるのと同時に離婚調停を考えていた私は、引っ越しの1カ月前、家庭裁判所に足を向けました。ちなみに日本では、相手が離婚に同意しない場合には、まずは調停を申し立て、そこでも合意できなければ訴訟となります。



離婚調停(夫婦関係調整調停)は、夫(相手方)が住む地域の家庭裁判所で申し立てを行いました。



この時、有益だったのが前述した弁護士の「離婚調停は離婚の成立まで時間がかかるから、婚姻費用分担請求調停も同時に申し立てて先にこちらを決めてもらうのがいい」という助言でした。



婚姻関係にある以上、別居しても互いに扶助義務があるため、収入の多いほうが義務者となり配偶者に支払うのが婚姻費用です。



「婚姻費用も養育費も、最初から低い額を記入すると後で上げるのは難しいので、算定表より下の金額は書かないほうがいい」とも言われていたので、金額は算定表より少し高めの数字にしました。



申し立てにはそれぞれ1200円分の収入印紙が必要で、書類を郵送する切手もこちらが用意します。収入印紙や切手は裁判所内の売店で買えるため、外に出ていくことなく完結できます。



ほかにも、ふたりの戸籍謄本と申立人の収入がわかる書類が必要で、私は個人事業主のため確定申告書のコピーを提出しました。



●陳述書を用意する

離婚調停も婚姻費用分担請求調停も、記入する書類は4枚ほどありました。夫婦それぞれの住所や未成年の子どもの有無、申し立てに至った事情を説明する項目、調停を進める際に参考にする話し合いの状況(相手は話を聞いてくれそうか、感情的になっているかなど)があります。



これらの書類は相手方にも郵送されるため、感情的にならないほうがいいなと感じました。別居中の場合は現在の住所を隠しておくことも可能など窓口で丁寧に説明があり、一つずつ確認しながら進めることができました。



私が提出義務のある資料とは別に、任意で用意したのは私自身の陳述書です。私と夫の氏名や年収などを簡単にまとめたものと、どうして調停を申し立てるに至ったかをA4の用紙6枚ほどに書き、提出しました。家庭裁判所で記入する書類だけでは私たちの状態の詳細はわからず、最初に知っておいてほしいと思ったからです。



夫の浮気が発覚したときのこと、離婚を切り出してからの夫や親族の態度のこと、息子の様子など、書いていると怒りや悲しみが湧いてきますが、なるべく客観的に、事実だけを述べるように意識しました。



親権は私が持ちたいこととそれまでの育児の状況なども書き、面会交流についてはふたりで話し合って決めたいことなども忘れずに記します。陳述書は必須ではないと思いますが、調停をスムーズに進めるために用意してもいいと思います。



こうして、離婚調停と婚姻費用分担請求調停の申し立ては無事に終わりました。



(次号へ続きます)



【筆者プロフィール】内田 聡子(うちだ さとこ):フリーランスのライター。ひとり息子と猫をこよなく愛する1977年生まれ。離婚の大変さはみんな同じ。どう進めるのが正解で、何を一番に考えるのが良いのか、を常に考えています。