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街に増えてきたEV・テスラ「モデル3」の現在地は? 試乗で確認

2022年03月01日 13:42  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
2021年春の大幅値下げで、値ごろ感が大幅に増したテスラの「モデル3」。ここ最近は、白のボディカラーを身にまとった「モデル3」を本当によく見かける。テスラのクルマは知らない間にアップデートを重ねていたりするが、現状はどうなのだろう。最も廉価なグレードに試乗してモデル3の今を確認してきた。


○各種調整は画面で!



2019年に最上級グレードの「パフォーマンス」(4輪駆動=AWD)に試乗したが、それからだいぶ時間が経っていたので、試乗前にスタッフから改めて操作を教わった。座席の位置調整は、座席に取り付けられたスイッチで行う。それ以外、例えばドアミラーなどは、ダッシュボード中央の画面をタッチして調整する。



テスラの大画面を利用した各種機能の調整方法は、当初の「モデルS」導入のころから「直感的に操作できる」と評価が高かったが、モデル3になって一層わかりやすくなったと思う。私事ながら、スマートフォンの操作でさえ不十分な高齢の筆者にとって、タッチ操作はなお苦手な部類だ。それでも、モデル3の画面タッチによるさまざまな設定は、わずか数分の説明でほぼ呑み込めた。運転をしながら何かを変更したいとき、例えば空調の温度設定なども迷うことなく調節できた。


スイッチの数を極力減らしたモデル3だが、人が何を頼りに操作しようとするのか、そうした心理を理解した上で直観タッチを設計していることに感心する。初めての人でも、すぐに慣れるはずだ。



大型画面に映し出される表示は、画面の使い方(何をどこに、どんな大きさで表示するか)の優先順位が明確だ。それはまさに運転者が望む情報提供の優先順位と適合し、まったく不安がない。この点は、クルマの性能では世界的に定評のあるドイツ車もまだ追いつけていない。


運転支援機能は、前進・後退を決めるシフトレバー(ステアリング奥の右側に付いている)を流用し、同じレバーによる簡単操作ですぐに使える。スイッチによる信号の指示で、アクセルはもとより変速やブレーキの作動も行う今日のクルマは、車載コンピューターがクルマの状況を認識(止まっているのか走っているのかなど)すれば、同じスイッチやレバーを別の機能の作動に流用して差し支えない。運転者が混同したり混乱したりしないで使えればいいのである。試乗会という限られた時間での運転でも、モデル3はあらゆる機能をたちどころに試することができた。テスラの「ヒューマン・マシン・インターフェイス」(HMI)の優秀さには、毎度のことながら感心させられる。


○廉価グレードでも瞬発力は十分

さて、RWDの走行性能だが、前輪も駆動するAWDと比べても動力に不足を覚えることはなかった。逆に、高速道路での走りも含め、通常の運転であればRWDで全く問題ない。後輪の駆動には、高効率な永久磁石式同期モーターを使っている。アクセル操作に対して素早く、的確に出力をもたらしてくれるので、自在に走れる。後輪駆動という嬉しさも味わえる。



高速道路の合流ではアクセル全開も試したが、その瞬発力は十分すぎるほど。日常的にフルスロットルを使う場面はほとんどないだろう。


回生の効き具合も、大型画面で調節できる。私は最も強く効かせるモードが好みだ。右足だけで速度が調整できて、ペダルを離せば停車まで持っていける。こうした回生の活用により無用なペダル踏み替えがなくなるので、実に快適だ。走れば走るほど、モデル3の魅力にのめり込んでいく自分を発見する。



航続距離についてだが、RWDはフル充電だと565km(WLTCモード)を走行可能。今日では、一充電走行距離が400kmもあれば通常は十分との認識が高まっている。RWDの性能はそれ以上であり、実走行でも400kmは走れるだろう。


こうした一充電走行性能を備えるためか、拙宅近隣のモデル3所有者は自宅に普通充電設備を取り付けていない。テスラの急速充電器である「スーパーチャージャー」の高性能ぶりは定評があり、エンジン車で給油に行く感覚でスーパーチャージャーを利用すれば、必ずしも自宅で充電できなくても、それほど不便を感じないのだろう。事実、自宅で充電しないテスラ社員もいるそうだ。



日本国内には現時点で44地点にスーパーチャージャーが設置されている。1カ所に複数の充電器(4~8基)が用意されているのが普通で、一部を除けば24時間いつでも利用可能だ。ほかに、「CHAdeMO」(日本で一般的な急速充電の規格)でもコネクターを利用すれば充電できる。


テスラによれば、あるモデル3の所有者は購入後半年で8,000kmを走行したが、その間に支払った電気料金はたったの1,000円でしかなかったという。それは特別な例かもしれないが、「どれほど電気代金を掛けずに充電し、モデル3を満喫するか」という楽しみ方もあるようだ。



知られる通り、テスラ車はプログラムをダウンロードすることにより、購入後でも最新仕様にアップデートすることができる。また、日本で販売されるモデル3は最新の生産工場で作られているので品質も高い。どの国や地域で製造されようが、最新の設備を備えた新しい工場で製造されるクルマが最も高品質であることは、テスラに限らずあらゆる自動車メーカーに通じることである。



中国でモデル3の工場が稼働したことにより大幅な値下げが実現し、EVが身近な存在となった日本の消費者は幸せだ。モデル3は最も廉価なグレードでも魅力十分なクルマに仕上がっている。



御堀直嗣 みほりなおつぐ 1955年東京都出身。玉川大学工学部機械工学科を卒業後、「FL500」「FJ1600」などのレース参戦を経て、モータージャーナリストに。自動車の技術面から社会との関わりまで、幅広く執筆している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。電気自動車の普及を考える市民団体「日本EVクラブ」副代表を務める。著書に「スバル デザイン」「マツダスカイアクティブエンジンの開発」など。 この著者の記事一覧はこちら(御堀直嗣)