2022年03月01日 11:11 弁護士ドットコム
2022年4月1日から、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられます。18歳でも親の同意なしに自らの意思で契約を結べるようになったり、結婚可能な最低年齢が男女ともに18歳以上となったりするなど、様々な変化が起こります。
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気になるのが、成人式を行う年齢についてです。「はたちのつどい」のような形で、20歳での実施のままにしている自治体が多いようですが、「成人する儀礼」として、引き下げに合わせて18歳で行う自治体も少数ながら存在します。
三重県伊賀市では、2023年以降は成人式を18歳で開催することになっていますが、伊賀市の女子高校生が、成人式変更に反対する約7500名分の署名を伊賀市に提出したことが報じられて、話題になりました。
これに対し伊賀市長は、「自覚を促していかなければいけないなと。20歳で成人式をしてほしいというと、じゃあその18歳から20歳までの2年間はなんなの?って。どうしても20歳でやりたいのであれば、『20歳の集い』をその人たちが実行委員会を作ってやればいいじゃないですか」と20歳での開催希望に疑問を投げかけています。
成人式は何歳で行うべきなのでしょうか。以前に開かれた国の会議での議論を紹介します。
法務省の「成年年齢引下げを見据えた環境整備に関する関係府省庁連絡会議」の下に「成人式の時期や在り方等に関する分科会」が置かれ、2018年10月から、2020年3月にかけて、議論が行われてきました。
「成人の日」は祝日法に基づくものである一方で、成人式は法令に基づくものではないため、行政裁量で判断されることが確認されています。
分科会ではヒアリングも行われました。専門家や関係者(肩書きは当時)からは、どのような意見が出ていたのでしょうか。
奥山功・日本きもの連盟会長理事は18歳成人式になり、振り袖や晴れ着を着なくなった場合、「日本人であるアイデンティティが非常に乏しくなるんではないか」と指摘。堀恵介・日本写真館協会理事長・日本写真文化協会会長も「今定着しております20の晴れ着を着る、振り袖を着る、そういうよい日本文化の和装文化が非常に危機に陥るのではないか」と警鐘を鳴らしています。
また、米倉美寿々・中央区新成人のつどい実行委員会OBOG会長は、18歳で開催することのメリットとして、18歳だと親元を離れている人が少ないため、交通費の負担が少ないこと、学校の制服で参加できること、現在起きている成人式後の飲酒問題が激減するだろうことを挙げる一方、デメリットとして、1月開催であれば、受験生の出席が困難であることや、制服での参加が定着した場合、関連業界へのダメージが大きくなることなどを挙げています。
20歳で開催することについては、それぞれの交友関係に応じて、出身地や現在地など、参加する場所を選べることや、Uターン就職のモチベーションにつながる一方で、帰省や衣装などで家庭の経済的負担が大きいことや、未成年飲酒の問題が生じることをデメリットとしています。
上田廣久・京都市子ども若者はぐくみ局子ども若者未来部長は、18歳での開催となると、受験や就職で多忙であるとしたうえで、「参加者が落ち着いて式典に参加することができ、家族や旧友、地域社会とのつながりをしっかりと確認することができる20での成人式開催を国の基本方針とするよう、議論および検討を行っていただきたい」と述べました。
これらの意見も踏まえ、分科会の座長は、成人式の対象年齢と実施時期が検討課題であるとし、一方で成人式の意義的側面についても考える必要があるとしました。
成人年齢引き下げに伴って成人式の開催をどうするかということについては、複数の世論調査が行われています。分科会の報告書に挙げられている調査をいくつか紹介します。
内閣府による調査(2018年)は、16歳から22歳と、40歳から59歳の2つの年齢層に対して実施されました。成人年齢引下げ後の成人式について、20歳を対象とするべきだと回答した人の割合は、16歳から22歳までの年齢層(回答数=1802)では71.9%、40歳から59歳までの年齢層(回答数=958)では55.0%と、いずれの年齢層においても最も多い結果となりました。18歳を対象にすることについては、16歳から22歳までの年齢層で18.9%、40歳から59歳までの年齢層で34.4%にとどまっています。
日本財団は2018年12月、全国の17~19歳の男女800人を対象に意識調査を行いました。何歳で成人式を行うのがふさわしいかという問いに対しては、74.0%が「20歳」と回答し、「18歳」と回答した人は23.9%でした。
20歳と回答した理由について、62.8%が18歳だと受験と重なること、38.2%が18歳だと成人式に合わせてお酒を飲んだりタバコを吸ったりできないことを挙げました。
他方、18歳がふさわしいと回答した人は、62.8%が「引き下げられた成人年齢である18歳がふさわしい」ことを理由とし、「18歳で成人になるのに、成人式が違う年齢だと混乱するから」が 39.8%、「18歳でも成人になったと自覚できるようになると思う」が30.9%でした。
最終的にまとめられた分科会の報告書は、国としてあるべき姿を提示したものではなく、論点を整理したうえで、あとは自治体の判断に委ねています。
20歳のままにするにせよ、18歳での開催に切り替えるにせよ、その意義について、改めて考え直すタイミングにきているといえるでしょう。