高橋文哉、早くも演技派路線？ 『ドクターホワイト』『牛首村』で“最も勢いのある俳優”に
2022年03月01日 08:01 リアルサウンド
“もっとも勢いのある俳優”というのは常に誰かしら存在するものだが、いまは多くの方が高橋文哉を思い浮かべるのではないだろうか。『最愛』（TBS系）での好演が記憶に新しい彼は、現在、ドラマ『ドクターホワイト』（カンテレ・フジテレビ系）にレギュラー出演中であり、参加した映画『牛首村』が公開中なのである。
ときにスリリングに、またときにはほのぼのとした医療ドラマが展開する『ドクターホワイト』。一般常識や共感性というものが欠けているものの、異常なまでの医療知識を持つ謎めいた女性・雪村白夜（浜辺美波）と彼女の周囲の者たちの関係を描いた本作で高橋が演じているのは、研修医である佐久間新平だ。浜辺美波演じる白夜らを中心とした「総合診断協議チーム（CDT）」を支えるホープである。このCDTの各ポジションには、柄本佑、瀧本美織、片桐仁、高橋努、勝地涼ら経験豊富な俳優陣が配され、主演の浜辺をサポートしている印象があるのだが、こちらサイドに最若手の高橋がまわっているのが面白い。“研修医”という、演じるキャラクターとしてもある種の失敗が許されるポジションだが、高橋自身は見事にこの作品を支え、ドラマの盛り上がりに貢献しているように思う。先に記しているように、ときにスリリングに、またときにはほのぼのとしたトーンで、である。
本作での高橋は“支える側”なので、「個」としての主張よりも、「全体」において協調することが求められる。「CDT」の面々の並びを見ていただければ一目瞭然だが、全体的に非常にアクが強い。個性的なキャラクターが並んでいる。しかしさすがは優れたプレイヤーたちだ。掛け合いのシーンでは互いに演技の“足し引き”をし合い、全体のバランスを絶妙に保っている。そんな彼らの中に高橋は柔軟に溶け込み、ときに受け手に回り、ときには身をかわし、そしてまたときには攻めに出て、先輩俳優陣とともにグルーブ感を生み出していると思う。「CDT」という少々派手なパズルのピースとして、彼は正確に収まっているのである。
これと対照的なのが、『最愛』での高橋の演技・ポジションだったのではないだろうか。彼の演じた朝宮優というキャラクターは、物語の行方を左右するキーパーソンだったのだ。主演の吉高由里子をはじめ、松下洸平や井浦新といった存在に導かれるかたちで、ドラマ内における「個」の主張をし続けた。『ドクターホワイト』と大きく異るのは、演じる役が感情的になる瞬間が多かったことであり、悲哀や恐怖、またこれらと対極にある若者らしい無邪気さをも覗かせ、その感情表現の豊かさに心を掴まれた方も多いはずである。
映画『牛首村』で高橋が演じているのもまた、キーパーソンだ。同作はホラー映画であるため、ネタバレを回避すべく物語の細部や役の細かな設定についての言及は控えておくが、彼が登場することによって物語は大きく動き出す。本作でも高橋は、物語の進行に影響を与えるポジションを担っているのだ。そしてやはりホラー映画とあり、メインの登場人物たちは喜怒哀楽といった感情の起伏が激しい（とはいえ、「怒」「哀」「楽」がほとんどだが）。高橋が扮する倉木将太という人物も例外ではない。物語の根幹、恐怖の根源に触れる存在であるため、彼の感情は目まぐるしく変化する。『ドクターホワイト』での演技とは真逆にあるといえるし、『最愛』での演技ともまた違うのだ。物語や役の内面を咀嚼した上で、より“アウトプット”を必要とされるこの役どころは、まだ始まったばかりの彼の俳優人生において大きな意味を持つのではないかと思う。
そんな高橋といえば、『仮面ライダーゼロワン』（2019～2020年／テレビ朝日系）にて主演を務め、その劇場版である『劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』（2020年）にて映画単独主演もすでに果たしている注目株だが、こんなにも早く演技派の路線に乗ってくるとは驚きだった。しかしながら、まだまだ高校生役も演じられる年齢であるし、さまざまなタイプの作品に必要とされることだろう。高橋文哉を目にする機会は、今後ますます増えていくに違いない。
（折田侑駿）
