2022年02月28日 17:31 弁護士ドットコム
同性カップル(女性)が、一方の凍結精子を用いて生まれた子らの認知などを求めていた裁判で、東京家裁は2月28日、カップルの訴えを退けた。
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判決などによると、男性として生まれたが性同一性障害を有していたため、性別適合手術を受け、戸籍上の性別を女性に変更。凍結保存していた精子をパートナーの女性に提供し、2人の子をもうけたが、自治体が認知届を受理しなかったため、2021年6月に提訴していた。
判決後に開かれた会見で、性別変更したAさん(40代)は、「裁判の場で認めてもらえず悲しく思う。(カップルで)子を産み育てていて、生物学的に親子関係があるのに、このような判断が出ることに矛盾を感じた」と話した。
この日の判決は、Aさんのパートナー・Bさん(30代)が2人の子どもを代理した原告として、Aさんを被告とする「認知の訴え」に関するもので、利害が完全に一致しているカップルが原告と被告になる異例の裁判だった。
現状、子どもらの身に何かあっても、Aさんは保護者として扱われない中、Aさんと子どもらとの生物学上(血縁上)の親子関係があることから、認知を求めていた。
東京家裁は、「親子関係は認めない」との結論を下した。主な理由として、女性が父親として子を認知することはできないことと、母子関係は懐胎・分娩によって生じるので、懐胎・分娩していない者には親子関係が生じていないことを挙げた。
その上で、「法律上の親子関係は民法における身分法秩序の中核をなすもの」と指摘。「多数の関係者の利害にかかわる社会一般の関心事でもあるという意味で、公益的な性質を有しており、当事者間の自由な処分が認められるものではない」として、「血縁上の父が子の父となることを争っていないからといって、このことからただちに法律上の親子関係を成立させて良いことにもならない」と判断した。
判決後の会見で、原告ら代理人の仲岡しゅん弁護士は、「不当だ」と判決を批判した。
「女性である父や男性である母を認められないという判断を下したことになるが、日本の法律のどこにもそんな規定はありません。
むしろ、(性別変更の要件などを定める)性同一性障害特例法では、性別変更する際に、子が成人している場合だと、女性に変わっても戸籍上は父のままですし、男性に変わっても戸籍上は母のままです。戸籍の記載上、女性である父や男性である母はすでに存在しています。
今回は子どもが未成年のケースですが、あえて(女性である父や男性である母を)認めない合理的理由はあるのでしょうか。私はないと考えています」(仲岡弁護士)
また、母子関係が懐胎・分娩によって生じるとの判断は「昔の判決を引っ張ってきた」と話し、性同一性障害が認識され、生殖医療も発達している現在とは「時代が違う」と指摘した。
「発達した生殖医療によって、懐胎・分娩によらずに子が生じることもあります。家族関係が多様化している中、そういった実態を認めずに、硬直的な思考で懐胎・分娩によって生じると判断したわけですが、間違っていると思います」(仲岡弁護士)
子どもを抱えながら会見にのぞんだAさんは、「凍結精子だと認めないというのは時代錯誤なのでは」と疑問の声をあげた。
「親子関係がないと言われ続けるのは辛いです。ここで諦めるつもりはありません。最終的には(親子関係を)認めてもらいたいと思っています。なかなか当事者でないと理解が難しいかもしれませんが、こういう存在もいるのだということを社会にも認知してもらいたいです」(Aさん)
仲岡弁護士は、「認められないなら最高裁まで争う」と話し、上訴する意向を示した。