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住まいと防災2022 第2回 コロナ時代にどんな住まいを目指すべきか

2022年02月28日 14:11  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
コロナ禍について、専門家がいろいろな意見を述べています。2020年の2月ごろは、春になって暖かくなれば、下火になるという専門家もいれば、過去のSARSなどの事例から2年間くらいかかるといった意見もありました。蓋を開けてみると、3年目に突入となりました。私は伝染病の専門家ではありませんので、コロナに対して正確な知識があるわけではありません。しかしあくまで災害(リスク)からまずは自分で自分を守るという立場から、コロナ時代の対処について考えたいと思います。今回は住まいのあり方について考えてみましよう。


○どうすればよかったのか考える



下記の表の事例はあくまで私見ですが、各人が自分の問題としてそれぞれに考えることがなりよりも重要です。政策を批判する声はいろいろ聞きますが、それ以前に個々人のやるべきことが万全であったかどうかを振り返って検証し、次のリスクに備えることが求められます。


○非日常を生み出す、コロナ時代の住まいのあり方



人里離れた一軒家住まいであれば、買い物や病気の診察などで人と交わることはあるでしょうが、感染のリスクは極めて少ないと言えます。山の中の一軒家と言わず、農村部では感染リスクとかけ離れた生活をしている方は少なくありません。



注目すべきなのは、そうした方々はどうやってリフレッシュしているかです。感染リスクは単に人口密度だけの問題ではなく、都会人と非日常の楽しみ方が違う点にあるように思います。なぜ都会人は既存のサービスやイベントが制限されるとフラストレーションがたまるのかを考えて、今後の生活スタイルや住まいのあり方を模索する参考にしてみたいと思います。



そうした中、「家呑み」という言葉が特別な意味を持ち始めていました。出前の文化もまた違ったステージになったと言えるでしょう。住まいで非日常を楽しむ工夫がこれからの時代は大切で、住まいが果たす役割は今以上に大きくなりそうです。

○断捨離で在宅ワークスペースと非日常を演出できる空間を確保



既存のサービスや施設に依存しすぎる危険を考えれば、自分で非日常を生み出し、自分自身を楽しませる工夫が必要となります。当然住まいもそうした非日常を演出できる快適な空間である必要があります。最低限整理整頓がなされていないと実現は難しく、何よりもくつろげないでしょう。次に述べる居場所も造りにくくなります。



現在も多くの方が在宅ワークに取り組まれているでしょう。住宅ロメーカーに勤務していた時は、クライアントは必ず「納戸」を希望したものです。その理由の多くは極めて消極的なもので、今ある不用品をとりあえず保管しておくといったものです。しかし納戸であっても建築費はかかり、それなりのスペースも要します。不用品の置き場にそれだけのコストをかけるのは不経済です。

まして在宅スペースが必要となった昨今、潔く不用品を整理して、書斎にしたり趣味の部屋にしたりして有効に活用しましょう。納戸でなくても、押し入れ程度のスペースでもワークスペースや面白い空間を作り出せます。

○居場所の3点セットをたくさん作る



非日常を作り出すためには、いろいろな「場」「居場所」を用意することがポイントの一つです。椅子・テーブル・照明が居場所を作る3点セットです。座る場所があればよいのでリビング階段の1段目でも大丈夫です。上段をテーブルにもできます。豪華なソファーセットよりも、ちょっとした一人でくつろげる場がいろいろあることが重要です。畳に寝そべるでもよいのです。



また、コロナ如何にかかわらず住まいの中で主寝室のあり方は重要で、夫婦が語らう場として、何かしらの椅子とテーブルが欲しいところです。ベッドだけの空間よりも、確実に楽しみ方が増えます。凶悪犯罪を引き起こして子どもの住まいを研究した本によると、主寝室が貧弱だという共通点があるそうです。

○食事を楽しむ場所を工夫する



住まいの中で食事のシーンは重要です。ダイニングテーブル以外にも、テラスやバルコニーでお茶や軽食を楽しめる工夫を考えてみましょう。



ダイニングテーブルのセッティングを工夫するだけでも変化になります。テーブルクロスを変えてみたり、一人用のお盆に料理をセッティングしたり、鍋や大皿料理を工夫したりと無限に考えられそうです。

○季節の行事を楽しむ



日本の伝統的な行事は祭り等を除いて、そう大騒ぎするものは少ないように思います。簡素なモノでも行事に合わせて花を飾ったり、料理を作ったりと、楽しみ方はさまざまです。お月見などはほとんどお金もかかりません。すすきを買わなくても、近くの雑草をとってきて活けて、お団子を備えれば100円でも可能です。住まいは自己表現の場でもあるのです。



私はもともと在宅ワークですので、玄関脇の文字通り納戸というサイズの小部屋と廊下の壁を取り払い事務室にしています。玄関を開けると仕事用の書架が目に入る構造です。私的空間を通らずに来客と打ち合わせができますし、トイレも事務室脇にあります。



さらにこれからの時代に、帰宅したらすぐに手洗いできる洗面所やコート類や買ってきた日常品のストック場所も玄関近くにあれば、菌を居住スペースに持ち込むリスクは少なくなります。



今後の住まいは、そうした新しい設備や設えと同時に、いかに住まいが今以上に自己表現可能な空間となっているかが大切になりそうです。



佐藤章子 さとうあきこ 一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。 この著者の記事一覧はこちら(佐藤章子)