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墓地でスケボーしたら犯罪? 雑司ケ谷霊園が立て看板で注意、「礼拝所不敬罪」とは

2022年02月27日 09:11  弁護士ドットコム

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都内の大学に通うケンタさんは休日の昼、池袋にある雑司ケ谷霊園を散歩していました。この霊園には夏目漱石やジョン万次郎など、著名な人物の墓が多くあり、ケンタさんはいくつかのお墓を地図を見ながら回っていました。


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休日だったこともあり、霊園やその周りにはツアー客や、霊園の中を通る道をジョギングする中年男性がいたようです。



そんな中、ケンタさんは霊園の中程で、親子がキャッチボールをしているのを見かけました。ケンタさんはその時は「この辺には遊べる公園が少ないのかな」と感じたそうですが、その後気になる立て看板が目に飛び込んできました。



そこには次のように書かれてました。



「園内でのスケートボードなどの行為は、刑法の礼拝所不敬罪に問われることがあります。すぐにおやめください」



看板ではスケートボードのみが具体例として書かれていましたが、キャッチボールもこの「礼拝所不敬罪」にあたるのかとケンタさんは気になっているそうです。



●礼拝所不敬罪とは? 過去の裁判例では

礼拝所不敬罪は、どのような犯罪なのでしょうか。



刑法では「神祠、仏堂、墓所その他の礼拝所に対し、公然と不敬な行為をした」場合に成立すると定められています(刑法188条1項)。罰則は、6月以下の懲役・禁錮または10万円以下の罰金です。



雑司ケ谷霊園は「墓所」に当たりますので、キャッチボールが「公然と不敬な行為」に当たるかどうかが成否を左右しそうです。



では「公然と不敬な行為」とは、どんな状態なのでしょうか。これは、不特定または多数の者が認識することができる状態で、国民の宗教的崇敬や死者に対する尊敬の感情を害する行為(東京高裁昭和27年8月5日判決)とされています。



過去の裁判例では、墓碑を複数倒す行為(東京地裁昭和63年7月11日判決)や、「小便でもひっかけてやれ」などと言い放ちながら放尿する格好をする行為(東京高裁昭和27年8月5日判決)などで、礼拝所不敬罪の成立を認めました。



また、2012年7月、世界遺産で国名勝である和歌山県那智勝浦町の「那智の滝」で、御神体の滝でロッククライミングをしたとして、若手登山家3人が礼拝所不敬罪の容疑などで書類送検された例もあります。



●霊園「特に被害があったわけではない」

わざわざ看板を設置したからには、雑司ケ谷霊園で過去にスケートボードなどでトラブルがあったのでしょうか。



雑司ケ谷霊園管理事務所の担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「具体的な被害もなければ、警察沙汰もない」と話します。



看板を設置した経緯については、「周辺住民の方から、スケートボードをしている人がいるとの指摘をいただいたことがきっかけ」と説明。



騒音被害などの苦情があったわけでもないといい、注意を促す意味で念のため設置したもののようです。キャッチボールについては「『スケートボードなどの行為』の『など』に含まれうる」としています。



スケートボード、キャッチボールは、ボールを捕り損ねるなどして墓石等に傷をつけるおそれもあります。死者に対する尊敬の感情を害する行為に当たると判断され、霊園内などでおこなえば礼拝所不敬罪に問われる可能性はありそうです。



ボール遊びやスケートボードを禁止する公園は多く、愛好者にとっては悩ましいところですが、くれぐれも法律違反とならないように場所を選んでいく必要があります。