トップへ

「Kindleアンリミテッド」のスクショ→PDF化は違法? 読み放題めぐりネットで物議

2022年02月26日 09:51  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

CDをレンタルして、カセットテープやMDに録音したことがある人は多いだろう。では、同じようなことを「サブスクリプション(サブスク)」サービスでやっても良いのだろうか——。


【関連記事:親友の夫とキスしたら、全てを親友に目撃され修羅場  】



ネットではこのほど、はてなブックマークを中心に、アマゾンの電子書籍サブスク「Kindle Unlimited」で、電子書籍のスクリーンショット(スクショ)を撮影し、PDFデータにまとめることの是非をめぐって議論がおきた。



●読み放題サービスで複製ができて大丈夫?

「Kindle Unlimited」をレンタルCDのようなものと考えれば、他人に送信などしない限り、著作権法上で認められた「私的使用のための複製」のようにも思える。



だが、中には出版社などとの契約によって、閲覧可能な期間が決まっているコンテンツもある。読み放題サービスで無制限に複製ができてしまって良いのかという素朴な疑問もあるだろう。



電子書籍は「所有権」ではなく「利用権」を買っていると言われるが、もしAmazonにアカウントを止められてしまえば、これまで購入した電子書籍が読めなくなってしまうかもしれない。



はたして、著作権やサービスの規約上問題はないのだろうか。著作権にくわしい雪丸真吾弁護士に聞いた。



●「私的複製」の範囲ではあるが…

まずは著作権の問題から。雪丸弁護士によると、スクショとPDF化自体は問題がないという。



「Kindle Unlimitedに登録している人が自分で利用するためにスクショを行うことは著作権法30条1項の『私的使用のための複製』(略して「私的複製」と言います)として適法です」



ただし、同項2号では、「技術的保護手段の回避」に当たる場合は私的複製に当らないとされている。



「具体的にはコピーコントロールが付されて本来複製ができなくなっているはずの著作物からコピーコントロールを外して複製する場合です。



技術的な分析は私の能力を超えますが、現在、Unlimitedで閲覧できる著作物のスクショは特に問題なくできることからすれば、恐らくコピーコントロールはなされていないと思われます。そうするとこの2号には当たらないと判断されます」



では、閲覧期間が終わり、Unlimitedでは読めなくなってしまった本のPDFデータを持っていても大丈夫なのだろうか。



「PDFという電子データを持つこと自体は特に著作権法では規制されませんので、複製が私的複製として適法ならば持っていても良いという結論になりますね。



なお、そのPDFを第三者にあげたり貸したりした場合は著作権法第49条(複製物の目的外使用等)により複製権侵害となります」



●「生殺与奪の権」を握るのはAmazon?

雪丸弁護士は、リスクがあるとしたら利用規約のほうだと指摘する。



Kindle Unlimited 利用規約で引用されているAMAZON KINDLEストア利用規約の「1. Kindleコンテンツ」には、次のような規定がある




<Kindleアプリケーションまたはその他本サービスの一部として許可される形で、Kindleストアより指定された台数の対象デバイス上でのみ、お客様個人の非営利の使用のみのために、該当のKindleコンテンツを回数の制限なく閲覧、使用、および表示する非独占的な使用権が付与されます>




スクショのPDF化は、この規約に反する恐れがあるという。



「スクショを撮影しPDFデータにまとめたものを閲覧、使用、表示するのはKindleアプリケーション外でなされますので、規約には違反する行為と評価されると思います。



そうすると、規約違反としてAmazonから契約解除されるというリスクを負うことになりますね」



はてな匿名ダイアリーでは、2021年8月に「Kindleの4000冊の蔵書が吹っ飛んだ」とするエントリーも話題になった。転売のAmazonギフト券を使ったことで、アカウントが永久凍結となり、過去に購入した電子書籍にアクセスできなくなったという内容だ。



こうしたリスクも念頭に置いておく必要がありそうだ。




【取材協力弁護士】
雪丸 真吾(ゆきまる・しんご)弁護士
著作権法学会員。日本ユニ著作権センター著作権相談員。慶応義塾大学芸術著作権演習I講師。2021年12月、実務でぶつかる著作権の問題に関する書籍『Q&A 引用・転載の実務と著作権法』第5版(中央経済社)を、2018年8月、『コンテンツ別 ウェブサイトの著作権Q&A』(中央経済社)を出版した。
事務所名:虎ノ門総合法律事務所