2022年02月26日 09:31 弁護士ドットコム
PCR検査で陰性結果が出るまで「欠勤扱い」——。会社の新型コロナウイルス対応に疑問を感じたAさんが、弁護士ドットコムに相談を寄せました。
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Aさんの会社でコロナ陽性者が出ましたが、社内ルールにより、濃厚接触者に当たらない他のスタッフまでPCR検査するよう要請されました。
結果が出るまで出社禁止となりましたが、その間は有給などを使い、有給がなければ欠勤扱いになってしまったそうです。
非正規で働くAさんは「欠勤扱いになると、契約労働日数にカウントされてかつ出社した日数にはカウントされないので、一年間の出社率が下がり、有給の付与日数が減ってしまうかもしれません」と心配しています。
今回のように勤務に支障がない人まで「欠勤扱い」にする会社の対応は、法的に問題ないのでしょうか。島田直行弁護士に聞きました。
「欠勤」と「休業」は、「仕事を休む」という事実は同じですが意味するところは異なります。そこでまずは両者の言葉の違いから確認してみましょう。
欠勤は、法律で明確に定義が定められているわけではありません。一般的には、社員の事情によって勤務するべき日に仕事を休むこととされます。欠勤は、労務を提供していないため労働契約違反ということになります。ノーワークノーペイの原則に基づいて、賃金は支払われません。
休業は、労働する義務のある時間について労働をなしえなくなることを意味します。会社の都合(業績不良など)もあれば、社員の都合(介護など)もあります。会社の都合で休業する場合には、平均賃金の100分の60以上の手当を支払う必要があります。
このように欠勤と会社都合の休業では、休業手当の有無において大きな相違があります。これを前提にして今回のケースを整理してみましょう。
会社は、安全な職場を作る義務を負っていますから社員に対してPCR検査を指示することはできます。ですから本件においてもPCR検査を求めたことについて問題はありません。問題となるのは、検査結果がでるまでの自宅待機期間の取扱いです。
まずAさんは、年次有給休暇を利用したようです。年次有給休暇は、社員の権利であり会社が一方的に指定できるものではありません。ですから会社がAさんの意向に関係なく独自に年次有給休暇として処理していたのであれば違法です。
次に欠勤について。今回のケースでは、会社の都合でAさんに自宅待機を求めたことになります。ですから欠勤ではなく会社都合による休業ということになります。欠勤扱いにして賃金を支払わないとなると問題です。会社は、会社都合による休業として休業手当を支払うべきでした。
労働分野では似たような言葉が多くて混乱しがちです。そういうときこそまずは「この言葉の意味はなんだろう」と基本に立ち返ることが大事です。労使双方が言葉の定義を確認していくことが、より良い職場環境の構築につながっていくのではないでしょうか。
【取材協力弁護士】
島田 直行(しまだ・なおゆき)弁護士
山口県下関市生まれ、京都大学法学部卒、山口県弁護士会所属。著書に『社長、辞めた社員から内容証明が届いています』、『社長、クレーマーから「誠意を見せろ」と電話がきています』『社長、その事業承継のプランでは、会社がつぶれます』(いずれもプレジデント社)、『院長、クレーマー&問題職員で悩んでいませんか?』(日本法令)
事務所名:島田法律事務所
事務所URL:https://www.shimada-law.com/