写真 時速330マイル(約530km/h)、約3.7秒未満で雌雄が決するドラッグレース界の最高峰NHRA(National Hot Rod Association/全米ホットロッド協会)の2022年シーズン開幕戦が、2月17~20日にアメリカ・カリフォルニア州のポモナ・オートクラブレースウェイで幕を開けた。その開幕戦、第62回ルーカスオイルNHRAウインターナショナルズでは、新星ジャスティン・アシュリーがトップフューエル部門を制し、ロバート・ハイト(ファニーカー)とエリカ・エンダース(プロストック)も、それぞれオープニングでの勝利を飾っている。
1万1000馬力を超えるトップフューエル・ドラッグスターを頂点に、ファニーカー、プロストックなど12のクラスで争われるNHRAは、今季も2020年よりフラッグシップスポンサーに就任したキャンピングワールドの名を冠し『NHRAキャンピングワールド・ドラッグ・レーシング・シリーズ』として争われる。
その2022年シーズンは、NASCARで3度のドライバーズチャンピオンを獲得し、現在もスチュワート・ハース・レーシングを率いるトニー・スチュワートが、自らの名を冠するトニー・スチュワート・レーシング(TSR)名義で参戦。婚約者でトップフューエル通算9勝を誇るリア・プルーエットを起用することや、北米トヨタによりファニーカー部門に投入予定の新型『トヨタGRスープラ・ファニーカー』の登場でも話題を集める。
そんななか始まったセッションは、金曜最初の予選からトップタイムを記録した各プロクラスの覇者に対し、2回目の予選ではシリーズの顔でもある通算17冠ジョン・フォースの次女で、2017年に史上初の女性シリーズチャンピオンに輝いたブリタニー・フォースが意地を見せ、時速333.91マイル(約537.38km/h)、3.661秒のフィニッシュタイムを記録してキャリア通算33度目の予選首位に躍り出る。
しかし、日曜決勝の主役を演じたのはふたりの“ルーキー・オブ・ザ・イヤー”経験者で、2020年新人王のジャスティン・アシュリーはジム・マロニー、アントロン・ブラウン、そして4度のディフェンディング・ワールドチャンピオンであるスティーブ・トレンスをノックオフしてファイナルへと進出する。
■「トヨタ、ルーカスオイル、チーム・フィリップスの全員に感謝の言葉を捧げたい」と勝者アシュリー
一方、2019年に新人王を獲得し、今季からフルタイム復帰を果たしたオースティン・プロックは、クレイ・ミリキャンやこちらも復帰組である伝説の男トニー・シューマッハ、そのチームメイトのブリタニーを撃破して最終ラウンドに到達した。
そのスリリングな勝負で時速333.00マイル(約536.00km/h)、3.713秒を叩き出したプロックに対し、アシュリーは時速314.53(約506.19km/h)マイルながら、3.694秒のフィニッシュタイムとして直近の新人王対決を制し、トップフューエルでのキャリア通算3勝目とポモナでの初優勝を手にした。
「トップフューエルのカテゴリーでは、厳しい1日になることはわかっていた。すべての勝負がわずかなマージンで決着したのを見ただろう? だから“レイアップ”することなんてまったくなく、すべて全力で走ったさ」と勝者アシュリー。
「歴戦の男たちを打ち負かすことができるように、このオフにはエンジンパワーの向上に取り組み、ここへ来て目的が果たせるよう懸命に努力してきた。今日はその成果を目の前で披露することができたと感じているよ。トヨタ、ルーカスオイル、チーム・フィリップスの全員に感謝の言葉を捧げたい」
一方、ベテラン対決となったファニーカー・クラスでは、ジェイソン・ルパート、トニー・ジュラド、さらにTSRのマット・ヘイガンとのラウンドを制し、予選首位ロン・キャップスとのファイナルへ進んだファニーカー3度の世界王者でもあるロバート・ハイトが、南カリフォルニア・オートクラブが支援する『シボレー・カマロSS』で準決勝、決勝ともに3.861秒をマーク。ランク8位の失望に終わった2021年を脱し、このウインターナショナルズ通算5勝、キャリア54勝目を手にした。
「僕らは今日たまたま勝利を収めたが、同じように素晴らしいファニーカーたちがたくさんいる。今季も厳しい戦いになるだろうね」と語ったハイト。「昨夜の予選なんて、僕とロンのギャップは0.004秒差だった。それが決勝では0.002秒差だ。これぞファニーカーだね」
そして4度のタイトル獲得者であるエリカ・エンダースも、史上900戦目となったプロストック・クラスで通算34勝目を獲得。「記念すべき900戦目の節目で手にした勝利は、私にとっても大きな意味がある」と、ポモナでの記念すべき自身初優勝を手にしている。