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『NieR:Automata』発売5周年 アクションRPGの枠組みを超えた挑戦

2022年02月23日 12:11  リアルサウンド

リアルサウンド

『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』(C)2017 SQUARE ENIX CO.

 2022年2月23日は、『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』の発売から5周年の日だ。本作は発売直後の注目度が高かったことはもちろん、その後もじわじわと売上を伸ばし続け、2021年には全世界累計の出荷数・ダウンロード本数が600万本を突破したそうだ。


 本作の魅力は、到底一言では言い表せない。ヨコオタロウが描く暗澹たるシナリオ、プラチナゲームズが手掛けた爽快なアクション、岡部啓一による物悲しくもドラマチックなBGM、魅力的なキャラクター造形。それらの要素が複雑に折り重なることで、独自の世界観を確立し、多くのファンを生み出した。今回は、そんな『NieR:Automata』の魅力について振り返る。ネタバレを多分に含むので、未プレイの方はご注意のうえご覧いただきたい。


【画像】絶望が多分に盛り込まれた『NieR:Automata』の世界


・『ドラッグオンドラグーン』から連綿と続くヨコオタロウ節が炸裂


 『NieR:Automata』は、2017年にSQUARE ENIXからリリースされたアクションRPGだ。2010年に同社からリリースされた『NieR Replicant / Gestalt(ニーア レプリカント / ゲシュタルト)』の後継作品であり、世界観を共有している。また、『ドラッグオンドラグーン』シリーズの世界観も一部引き継いでいるため、シリーズ作品を遊んでいることでよりストーリーを楽しめる。


 シリーズに共通する特徴は、やはりヨコオタロウの描く絶望的なストーリーだろう。「マルチバッドエンディング(マルチエンディングでありながらすべて悲劇的な結末を迎えてしまう)」と揶揄された『ドラッグオンドラグーン』から続くヨコオタロウ節は、『オートマタ』においても健在だった。


 本作の登場人物のほとんどは機械生命体やアンドロイドだ。しかし、人工的な生命であるはずの彼らは、時に人間よりも人間らしい振る舞いをする。普段は感情を見せないものの仲間の身をいつも案じている2B、人懐こく好奇心旺盛な9S、平和主義者の機械生命体パスカル……。そんな彼らに降りかかる悲劇を描き、歪んでいくさまが如実に表現されるのだ。その中には、トラウマになってしまいそうな演出も一部見受けられる。特に、パスカルにまつわるイベントは、しばらく夢にまで出そうな後味の悪さだ。


 また、そもそもの世界設定から陰鬱だ。『NieR:Automata』のストーリーには多くの秘密が隠されているが、そのどれもが過酷だ。真実を知れば知るほど、キャラクター達は打ちひしがれ、プレイヤーもまた失意に沈む。ヨコオタロウが描く世界は絶望が前提なのである。


 しかし、そんな絶望的なシナリオだからこそ光るメッセージがある。命を持たないはずのアンドロイドや機械生命体たちの姿を通じて、「生きること」に対する鮮烈なメッセージが浮かび上がっていく。そんな一縷の希望に魅せられ(あるいは怖いもの見たさが勝り)、最後までプレイしてしまう不思議な引力を持つのが『NieR:Automata』という作品だ。


・ハイスピードかつ初心者でも遊びやすいアクション


 『NieR:Automata』のジャンルはアクションRPGに分類される。4種の武器(小型剣・大型剣・槍・格闘)があり、その中から2本をキャラクターに装備させることができる。装備した武器種の組み合わせによってモーションが変化し、好みの戦闘スタイルを探すのも楽しい。また、キャラクターのモーションは非常にスピーディーかつスムーズで、操作性も良好だった。


 「ポッド」と呼ばれる支援ロボットを使うことで、ガトリング弾やレーザーによる遠距離攻撃を行うこともできた。キャラクターのモーションの素早さ、敵の攻撃の多彩さ、ポッドによる遠距離攻撃が重なり、戦闘中の画面は非常に賑やかだ。


 また、本作はアクション初心者にもやさしい設計になっている。戦闘の難易度はいつでも自由に変えられるため、ゲームを進行していて「詰む」というケースはなかった。難易度をEASYにすれば一部アクションが自動化されるため、アクション初心者でもある程度とっつきやすい。さらにレベル上げや武器の強化、スキル(チップ)の見直しなど、自キャラをカスタマイズすれば、アクションが苦手なプレイヤーも無理なく遊べる。


 ハイスピードなアクションバトルを初心者でも楽しめるのは、本作の魅力といえるだろう。


・アクションRPGの枠組みを飛び越えた意欲的な挑戦


 本作のジャンルはアクションRPGである。しかし、『ニーア』は単なるアクションに留まらない意欲的な演出やゲームシステムを積極的に採り入れているシリーズであり、『オートマタ』もその例から外れない。


 たとえば、通常の戦闘パートにおいては、シューティングゲームでいうところの「弾幕」のような攻撃を繰り出す敵が頻繁に出現する。これは前作『レプリカント / ゲシュタルト』から引き継がれたもので、アクションRPGでありながらシューティングゲームを遊んでいるかのような錯覚を覚えるだろう。


 さらに、『オートマタ』では実際にシューティングパートが存在する。「飛行ユニット」と呼ばれる戦闘機に搭乗して行う空中戦では、縦・横のスクロール型から全方位型まで展開。さらに、プレイキャラクターが「9S」の時には、戦闘中の敵に対してハッキングを行うことができる。これも全方位型のシューティングになっており、成功させれば敵に大ダメージを与えられるというわけだ。


 そのほかにも、文字と音だけで進行するサウンドノベルのようなパートが差し込まれたり、プレイヤーの選択肢によってプレイデータが消去される演出があったりと、他のアクションRPGシリーズには見られない仕掛けが随所に盛り込まれている。なお、本作には5種類のエンディングがあるが、Eエンドの演出はきわめて斬新で、これまでに味わったことのない不思議な感動があった。まだ体感していない人は、ぜひとも最後までプレイしてみてほしい。


 率直に言えば、あらゆる要素を詰め込み過ぎていて、ゲームそのもののテンポが悪くなっている側面もあった。ゲームとして一貫性がないと感じる方も少なくないだろう。あまりに頻繁に出現するハッキングパートは、ゲームを進めるほどに煩わしいと感じるかもしれない。にもかかわらず、『NieR:Automata』が多くのプレイヤーに支持されたのは、やはりシナリオやキャラクター、音楽、戦闘システムなどが高水準でまとめられたタイトルだったからではないだろうか。


 また、これほどの人気タイトルが、実験的な演出を盛り込んで新たなゲーム体験を産もうとしているその姿勢には称賛を送りたい。もしも『ニーア』の続編が出るとすれば、次はどんな手で驚かせてくれるのだろう、と期待しているファンも多いはずだ。


 『NieR:Automata』5周年を機に、もう一度2Bや9S、A2の軌跡を辿ってみてはいかがだろうか。(坂田憲亮)