2022年02月23日 08:31 弁護士ドットコム
夫の風俗通いを注意したら、妻と子どもを置いて出て行ってしまった——。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられています。
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相談者の夫は、当初は風俗通いについて謝罪していました。しかし、徐々に開き直って話し合いにならない日々が続いたため、相談者が夫の母親に相談したところ「私にどうしてほしいの?この話は聞かなかったことにする」と言われたそうです。
その数日後、夫は妻子を置いて実家に帰ってしまい、相談者は過度のストレスで緊急搬送されました。
相談者も働いていますが、生活費や養育費はもらっておらず、あまりに無責任な夫の対応に頭を抱えています。どのように対応したらよいのか、小田紗織弁護士に聞きました。
——相談者夫妻の今後は不明ですが、このような状況で、婚姻費用の分担を求めることはできるのでしょうか
婚姻費用は、別居期間の継続を条件とせず、別居した時から分担を求めることはできます。ただ、婚姻費用を求める権利はあるとしても、支払いを拒む夫が多いのが実情です。夫が婚姻費用の支払いに応じないときには、早めに婚姻費用の分担調停を家庭裁判所に申し立てましょう。
それでも、調停や審判を経てやっと支払われるようになるまでに半年~1年かかる事例もあります。早急に婚姻費用を確保するために婚姻費用の分担の保全処分(仮払いの仮処分)もあわせて申し立てるという手続きもあります。
——妻は離婚を考えています。夫の風俗通いを理由に離婚できますか?
民法が定める離婚の理由のうち風俗通いに関係しそうなものは「配偶者に不貞な行為があったとき」か「その他婚姻関係を継続し難い重大な事由があるとき」(民法770条1項)です。
夫が風俗に通い性交渉を持っていた証拠があるのであれば、「不貞」が認められ、離婚理由になるでしょう。また、夫の風俗通いを妻が嫌がっても夫は止めず、頻度が多い場合などは、「婚姻関係を継続し難い重大な事由」として離婚理由になるでしょう。
ただ単に「風俗通い」というだけでは、離婚理由とするには難しいかと思います。
——相談者は味方になってくれなかった義母に対しても怒りを感じています。「義母にも追い討ちをかけられた」と慰謝料を請求できますか。
今回のご相談の内容では難しいです。慰謝料がみとめられるには、義母の対応により精神的に苦痛を受けた、不快だったというだけでは足りず、その義母の対応が不法行為を構成するだけの違法性を備えている必要があります。
味方になってもらえるものと期待した義母が味方になってくれず、期待は裏切られたかもしれませんが、義母の対応が相談者様の「法的保護に値する利益を違法に侵害した」とまではいえないでしょう。
婚姻費用をもらいながら別居を継続しつつ、これまでの夫の言動、別居後の夫の言動、また、それに対するご自身の言動、義母をはじめとする周囲との関係、お子様のことなどを見つめ直し、これからどうするのか考えていかれてはどうでしょうか。
【取材協力弁護士】
小田 紗織(おだ・さおり)弁護士
法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士を目指し活躍中。
事務所名:神戸マリン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.kobemarin.com/